恋愛映画は星の数ほどありますが、主人公の恋心にこれほどまでに肩入れしてしまった作品はそう多くはありません。好きな人の一挙手一投足にときめく乙女心の切なさは、誰でも遠い(?)昔、一度や二度は経験しているはずですから。
中国は華北、小さな村に学校が出来ることになりました。村にやって来たハオ先生を一目見た途端、村の少女ディはたちまち恋に落ちてしまいます。でも、このエリート先生を狙うライバルはかなり多そう。しかも、村の女たちは学校の建築現場に近寄ることを許されていないので、ダイレクトなアプローチなんてとんでもない、物陰で好きな人を見つめることぐらいしか、ディには出来ませんでした。
村では、各家庭で建築現場で働く男たちのお弁当を作ることになっていたので、ディは、毎日心をこめてお弁当作りにはげみます。ねぎ餅やきのこの餃子、粟チャーハンに季節の野菜をたっぷり使った炒め物など、中国の家庭料理がいろいろ登場するのですが、どれもヨダレが出るほど美味しそう! でも、せっかく腕によりをかけたお弁当も、先生の口に入るとは限りませんし、作った人が誰かも分からないようになっているのです。
それでもディは心を込めたお弁当作りを続けます。あとは先生が学校から帰る時間や井戸で水を汲むタイミングを見計らってちょっと傍に近づくだけ。それはもう、涙ぐましいばかりの恋心、いえ、むしろ念力、テレパシーと言ったほうがいいかも知れませんね。片想いの人を遠くからジッと見つめて「ほら、振り返れ!振り返れ!」と念を送った経験ってないでしょうか? そんな初恋の切なさ、うーん、わかりますよね。
いたるところで見かける女の子の存在、しかもその子はただならぬ眼力で自分を見つめているわけで、これじゃ余程の鈍感でない限り気が付かないほうがウソです。ハウ先生も次第にディの存在を意識するようになり、ついには2人の気持ちは通じ合うのでした。ここで教訓。好きな人が出来たらミエミエでもかまわないから、頻繁に出没すべし(ストーカーに間違われないように注意のこと)、ですね。
さて、めでたく思いの通じ合った二人ではありますが、まだまだ試練は続きます。同じ監督作品「あの子を探して」でも主人公の女の子が都会に出て次々と困難にぶつかったように、今回も山あり谷あり...というより、谷・谷・谷の連続です。しかし、この困難の連続でディが見せる底力、忍耐強さが凄いです。細くて小さな身体のどこにこんなパワーが秘められていたのかと、びっくりです。
それにしてもディがこんなにも心底好きになっちゃった先生とは、いったいどこが魅力なのでしょう? その点もこの映画ではちゃんと描かれていて好感が持てました。姿カタチだけでなく、先生の声やしゃべり方、そして知性に対する尊敬とあこがれ。ディにとっては先生の存在そのものが感動なのですね。そんな乙女心のひたむきさ・いじらさが見ている側にもヒシヒシと伝わって来た一編でした。
(2001/6/6 記)