ママのエリンは,ミスコンの受賞者で,地質学を学んでいながら,現在は金回りが良くない.彼女(ジュリア・ロバーツ)は自らの交通事故の訴訟を依頼した弁護士事務所に無理矢理に働き始めている.彼女は華美でもあり,言動にマナーはない.そこことについて事務所の代表でもあるエド(アルバート・フィニー)に咎められることもある.それでもエドは寛容でもあり,事務所の面々も彼女をよく思っているわけではないが,好意的な同僚もいる.
ハーレーダビットソンを愛する男ジョージ(アーロン・エッカート)が彼女に近づいていく.エリンの子を介して,彼女と彼は距離感をうかがいながらも近づいていく.保育や家事などの有料のサービスはあっても,対人的な面で単なるサービスでない人間の臭みがそこに必要となる.カリフォルニア州のヒンクリーンには大企業PG&Eが立地し,20年以上に渡り六価クロムを原因とする環境汚染により,住民に被害を与え続けてきていた.が,被害者である住民すらもその原因に気づかず,企業も隠蔽を図ってきた.エキセントリックなエリンの言動が,その因果を突き止め,彼女の人間の臭みが住民たちが起こそうとする大訴訟を駆動していく.彼女も咳払いをし,子どもたちの体調も万全ではない.彼女は流し台に発生したゴキブリにキレ,黄色く,おそらく砂塵が空気中に浮遊するような荒野を行き来し,被害者たちと接触をしていく.いい車や携帯電話といった道具も彼女は駆使していくが,美貌,露出や激情,時に飛び出る汚い言葉など,同じ人間としての平面から送られる視線によって,この訴訟への合意,ないしは調停への署名をまとめ上げていく.
黒ずくめで威圧する企業側の弁護士や,同州で最も公害訴訟に通じたパートナー弁護士たちは,ビジネスとしての姿勢を崩さず,その素っ気なさがエリンによって痛罵される様は痛快でもあるだろう.この場合のエリンには,間違いなく運動の魂が乗り移っていたのである.