デヴィッド・リンチ監督らしからぬ雰囲気のノンビリした映画であるが、見事な映画であった。
近年、せわしい映画ばかり観ていると、こういうノンビリした作品をゆったり観るのもいいものだ、と思ってしまう。
この映画、実話であり、デヴィッド・リンチが描くロードムービー。
物語は、アルヴィン・ストレイトという老人が、長年会ってもいない兄弟が病気で倒れたので、遠路はるばる「トラクター」で会いに行くというもの。
アイオワ州からミシシッピ川を越えてウィスコンシン州まで行くのだが、なんといっても「トラクターなのでノロイ」のである。
映画を観始めたころは、このノロさにイライラしたりしていたが、観ているうちに「なかなかイイものではないか」と思ってくる。
アルヴィン老人は、途中でヒッチハイクをする若い女性、トラクターが暴走して修理してもらっている間に出会う人達などと出会う。とりわけ、戦争を互いに経験した老人どうしの会話からは、戦争の辛さが伝わって来る。
アルヴィンいわく、「年とって悪いのは、若い頃を思い出すことだ。若い頃は、自分が年を取るなんて思わなかった」というセリフは素晴らしい。
デヴィッド・リンチ監督らしからぬ雰囲気のノンビリした映画であるが、見事な映画であった。