本作は実話で主人公も現存し来日したこともあるそうだ。
冒頭自殺未遂を起こし任意で精神病院に入院する(自傷行為防止のため)主人公がなぜそのような境遇に陥ったのかの説明はない。
入院すると強制入院患者との同居生活になり、驚くことが多い。
病院の患者の扱いが職員のみならず医者までも人間扱いしない状態に違和感を持ちながら彼らの不安や悩みを同じ視線で見ることで改善させる力がある事に気ずいた主人公は医者を目指すことになる。
既に30歳を超えた主人公は医療の座学だけには飽き足らず、また患者を下に見る権威主義的な医者の態度に憤慨し、大学病院の実際の患者たちに接することで臨床を実践していく。
それは自らが道化として患者と同じ目線で接し笑わせることで免疫力を高め、薬に過度に依存しない自然治癒力を高めるアプローチだった。
そして形式主義(書類ありきの)や官僚主義的な大学病院よりももっとフランクで費用の掛からない理想的な無料診療所を運営していくことになる。
ただせっかく付き合うことが出来て一緒に理想を追求するべく協力してくれた恋人が心を病んだ患者のSOSの連絡に従い訪問した際に銃殺され患者自身も自殺するという悲惨な事件に遭遇する。
主人公は自らの理想に殉じてしまった彼女に対する悔悟と絶望から無料診療所の運営から退き自殺や医学をやめることまで考える。
雄大な自然が眼前に広がる崖の上で死を考える主人公に(そこはかつて彼女と一緒に見た光景だった)一羽の蝶が彼の周りを舞い止まる中で死ぬことをやめるのだ。
恐らく蝶は彼女の魂の化身として彼を思いとどませる意味なのだろう。
そして医学の道を再開しようと決意した彼に無資格での医療行為により退学処分を科されることになる。
しかし当初は馬の合わない同室だった学友が主人公の学業の優秀さと患者の心を開くアプローチに感銘して彼の退学処分を撤回する方法を教える。
その地元医師会での評議会での聴聞により、主人公は従来の医者の傲慢で患者を人間として扱わないような接し方を厳しく批判し、自らの患者の目線に沿ったアプローチにより医療を進歩改革したいと訴える。
これが医師である評議員たちにも通じ退学処分が撤回される評決が下される。
彼は無事医学校を卒業し自らの信じるアプローチでの診療をしたことを伝えてエンデイングとなる。
主人公の志が実際的な医療活動の中で生かされて影響を与えるようになれば旧来の権威的な医療から患者の視線にたつ寄り添った医療になれば素晴らしいと思う。
主人公役のRウイリアムズもよかった。
自殺が惜しまれる。