なんとも暗喩に満ちたSFドラマとしても有名。ある個人の一生をTVショーとして演出する番組なんていかにもSFらしい設定だけれどあまりSF感を感じさせないところが逆に良かったのかもしれない。
日常に潜む謎に気づいたトゥルーマン(ジム・キャリー)が真実を求めて旅立つ姿に観客が共感してしまうのも、トゥルーマンに自分を同化させて観るからだろう。トゥルーマンは我々自身のことなのかもしれない・・という気づきを喚起するようなシナリオ。
では番組のプロデューサー、クリストフ(エド・ハリス)はいったい何者なのかと言えば、それはもう神とか権力者という存在となろう。彼によって指図され動いている俳優たちはみな神の使いとか独裁者の下僕にあたろうか。
あるいはテレビという機械(媒体)にがんじがらめにされている人類の滑稽さを皮肉った映画とも取れる。多様な解釈を許すこのユニークな設定がすべての映画だ。その後の「マトリックス」などにも共振する実はハードなSF映画なのかもしれない。