運命を切り開く原動力それは「愛」ただしこの種のネタは今迄にどこかで見たような気が・・・
ジム・キャリー主演の映画なので、ハートフルな味わいのコメディだと思っていたのですが、その予想は見事に裏切られました。結構奥の深い、考えようによってはかなりおっかないスリラーです。何がおっかないかと言うと、今まで自分が当たり前と思っていた価値観とか常識が見事にひっくり返されるからなんですね。
ストーリーについては、全く内容を知らないで見たほうが面白いかも知れません。ただ、私たちはみんな、子どもの頃空を見上げて宇宙の端っこっていったいどうなっているんだろう?って考えたことがあると思います。行けども行けども果てしない宇宙、そんな当然の概念が根っこからひっくり返されたらさぞかし仰天することでしょう。「トゥルーマン・ショー」の主人公ジム・キャリーは、大袈裟だけど今迄人類が味わったことのないそんな困難にぶつかります。まかり間違えば精神に異常をきたしてしまうかも知れない大変な経験です。そんな人類未曾有(?)の困難に突き当たってなおも自分を見失うことなく軽やかに乗り越えてゆく主人公の姿は本当に感動的です。
ただ、彼の姿を見て感動する自分に居心地の悪いものを感じてしまうんですね。つまりその心理はブラウン管の向こう側で彼を見守る映画の中の観客と全く同類なわけで、要するに自分勝手な価値観で「彼はなんてエラいんだ!」と感心しているにすぎないからです。彼の与えられた幸福は、エド・ハリスという神様の代理の一つの概念にすぎません。それは私たちが小鳥を小さな籠に閉じ込めてペットとして可愛がるのと何ら変わりがないのです。
かなり飛躍した解釈かもしれないですが、この映画は宗教とか神という概念にすら疑問符を投げかけているようにも思います。ダメ押しとも言えるラストカットの一言は強烈です。神さまだってもしかしたら天国でそんな風に私たちのことを見ているのかも知れません。
(1998/11/20 記)