シーヘブンという天国がある。トゥルーマン(ジム・キャリー)という男は、白い家だらけのこの天国のような都市に住み、あるいは監禁されている。この天国は一見すると水に囲まれていて、誇張された太陽と月が回っている。天体や天候の進行は規則的に進行しているが、時にこの天国にも乱れが生じ、不測の事態が起こりうる。
フィージーという別の天国にトゥルーマンを脱出させないために、世界は一丸となって彼をこの小さな天国の島に食い止める。山火事、原発事故といった人災や天災だけでなく、彼の家族や親友、妻までもが彼の欲望を外に向かわせないよう、ひたすらにトゥルーマンの世界を成り立たせるためのそれぞれの仕事に徹する。この世界は、視聴者によって支えられており、24時間ノンストップの連続番組の中では、出演者によって劇中にコマーシャルが挿入される。そのタイミングは、トゥルーマンにとっても、出演者にとっても、時に悲劇的でもありうる。世界は、一つのショーケースであり、回転ドアやランドアバウトといった360度の展開だけでなく、ガラス、鏡、そして隠された仕込みカメラによって、視聴者に開示されている。トゥルーマンの笑顔や仕草もテレビ的に演出されたもののようにも見えている。
トゥルーマンの軌道がルーティンから離脱しようとするとき、出演者だけでなくスタッフは対応にてんやわんやする。また、一瞬だけ凍りつき、いつも見る側であるものたちが、トゥルーマンからその舞台裏をのぞかれてしまうとき、世界にはパニックが広がり、事後的にそのパニックは収束されていく。また、トゥルーマンの感動は、視聴者にも共感されるよう、カメラワークやサウンドにも趣向を凝らしていかなければならない。こうした苦境を、ほぼ一人のディレクターであるクリストフ(エド・ハリス)がやりくりをし、神のように采配を司っている。天体のようにトゥルーマンの周りを周回し、彼を見続ける、スタッフや視聴者のその視線たちもまた、何かに拘束されているように感じられる。