アルマゲドンというからには,終末的な悲観と悲劇が連続する.しかしそこには楽観があり,観客は自らの身の安全を保障しているために,安閑として作品を鑑賞することができる.そのときスクリーンは,向こうの世界のスリルとなるが,どこかに楽観がなければ,観客の所在も危うくなってしまう.つまりハリー(ブルース・ウィリス)という男が,人類滅亡を前にしてもやや楽観的でもあるのは,観客の楽観を請け負っているからでもある.しかし,彼に対する期待は,あまりにも大きく重い.その重さは,隕石の重量をも超えて,地球的な重圧であるとも言える.
ハリーには仲間がいる.異質なのはロックハウンド(スティーヴ・ブシェーミ)であろうか.彼は天才であるが,宇宙へ連れていかれる過程においても,またその先の宇宙でもあまり活躍していないように思える.口だけは達者で,いつも悲観的で,否定的で,終末的な言葉を吐き,周囲のアガりがちな気分を減退されていることもある.その悪魔の言葉は,ハリーの楽観と対照的であり,ハリーはその意味では使徒的,あるいは創世記にまで遡れば,モーゼ的である.
ハリーは,海を垂直方向に開き,石油の採掘をしている.石油ラッシュとそのマネーを求めて荒くれ者たちがそこには集まっている.垂直方向に彼が拓いてきた世界は,やがて迫り来る小惑星へと着陸するとその中心に向かって,垂直でも水平でもなく,宇宙的な方向としての無方向へ,地球の未来を導いていく.彼が救い導く世界には,ひと組のカップルが提示されている.彼の娘のグレース(リヴ・タイラー)と彼の部下のA.J.(ベン・アフレック)である.この二人の恋愛の成就がサブストーリーとなって,物語は展開していく.展開のうちには,地球の広い地表のうちでも都市を狙うようにして隕石が落ちてくる.一瞬にして破壊される都市があり,死滅していく大量の市民たちがいそうである.それは悲惨であるが,その悲惨よりも描かれるのは,ハリーやグレースの英雄的で神話的な物語である.地球に突っ込む小惑星と,小惑星に突っ込む核兵器は,乱暴ながらもどこかレイプを思わせる力の行使が透けて見えるようにも感じる.