秘密と嘘

ひみつとうそ|Secrets and Lies|Secrets and Lies

秘密と嘘

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レビューの数

36

平均評点

76.6(150人)

観たひと

235

観たいひと

39

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ヒューマン / ドラマ
製作国 イギリス
製作年 1996
公開年月日 1996/12/21
上映時間 142分
製作会社 シンマン・フィルム作品
配給 フランス映画社
レイティング 一般映画
カラー カラー/ビスタ
アスペクト比 アメリカンビスタ(1:1.85)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 ドルビーSR

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

養子として育てられた女性が実の親を探し、その家族の中に入っていくことから明かされる、家族をめぐる“秘密と嘘”……そこから生まれる新しい家族の姿と和解を描くヒューマン・ドラマ。監督は「ネイキッド」のマイク・リー。いわゆる脚本はなく、シチュエーションとシーンの羅列を記した簡素なメモから、俳優たちとの長期リハーサルでドラマが作られた。製作はリーの製作会社シンマン・フィルムのプロデューサーとして『High Hopes』以来その全作を手掛けるサイモン・チャニング=ウィリアムズ。撮影はリーとは『ライフ・イズ・スイート』(V)以来のパートナーである、「アメリカン・ダンク」などのディック・ポープ。美術のアリソン・シティ、録音のジョージ・リチャーズ、編集のジョン・グレゴリーは「ネイキッド」に引き続いての参加。出演は「リバー・ランズ・スルー・イット」のブレンダ・ブレッシン、『ライフ・イズ・スウィート』(V)に続いて3作目のリー作品への出演となる「シェルタリング・スカイ」のティモシー・スポールほか。96年カンヌ映画祭パルム・ドール、主演女優賞(シンシア・パーリー)、国際批評家連盟賞の三冠を獲得した。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

ホーテンス(マリアンヌ・ジャン=バティスト)の養母が亡くなり、彼女は生まれてすぐ別れたはずの実の母を探し始める。社会福祉事務所で自分の養子縁組関係の書類を見た彼女は、黒人である自分の実母が白人だという記述に驚く。一方写真家のモーリス(ティモシー・スポール)は姉のシンシア(ブレンダ・ブレッシン)とその娘ロクサンヌ(クレア・ラシュブルック)のことが気掛かりで、妻のモニカ(フィリス・ローガン)と話し合ってロクサンヌの誕生日に二人を新築の自宅に招待することに決める。ホーテンスは実の母の住所を探し当て、悩んだ末に電話する。その実の母こそシンシアだった。彼女は最初は戸惑い、二度と電話しないでというが、やがて会うことを承諾する。待ち合わせ場所で黒人のホーテンスに尋ねられて彼女は驚いた。近くのコーヒーショップで話しているうちに、シンシアはホーテンスを身ごもった時の事情を思い出して泣き崩れ、何も言えなくなった。反抗的なロクサンヌに悩まされていたシンシアは、やがてホーテンスと会うことが嬉しくて仕方がなくなる。彼女はホーテンスをロクサンヌの誕生日に招く。「私の友達ということにしておけば大丈夫よ」。そして誕生日、モニカとロサンヌはシンシアの“友達”に少し戸惑いを見せるが、モーリスは親切だ。パーティーにはロクサンヌの恋人ポール(リー・ロス)とモーリスの助手のジェーン(エリザベス・ベリントン)もいる。やがて誕生ケーキが出てきたころ、シンシアは幸せのあまり、ホーテンスについての真実を打ち明けてしまう。一同は驚き、ロクサンヌは怒って外に飛びだしていく。ポールも後を追う。モーリスがバス停で座っていた姪とその恋人を説得して連れ戻す。シンシアはモニカを、たった一人の肉親モーリスを奪っていったとなじる。モニカは反論できない。モーリスは妻が子供を生めない体であることを明かす。なぜ最も愛し合うべき肉親どうしが傷つけあうのか、と彼は問いかける。そしてホーテンスに「苦痛を承知で真実を追究した君を尊敬する。もちろん君は僕の姪だ。家族として受け入れる」という。シンシアはロクサンヌに彼女の父だった男のことを明かした。彼はアメリカ人の医学生で、いい人だったわ、と。「私の父もいい人だった?」というホーテンスの問いに、シンシアは「それだけは答えられない」と言って泣き崩れた。ある日の午後、ホーテンスとロクサンヌの姉妹は、母のシンシアと共にお茶の一時を楽しむ。「人生ていいわね」とシンシアが呟く。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1997年5月上旬号

劇場公開映画批評:秘密と嘘

1997年1月下旬号

外国映画紹介:秘密と嘘

1997年1月上旬新年特別号

特集 秘密と嘘:作品評

特集 秘密と嘘:マイク・リー監督 インタビュー

特集 秘密と嘘:マイク・リー論

COMING SOON【新作紹介】:秘密と嘘

外国映画紹介:秘密と嘘

2023/10/15

2023/10/16

80点

レンタル/千葉県 


血は水よりも濃い?

家族間の秘密が嘘を招き、時にドラマを生むという発想はまるで小津安二郎の作品のよう。
ただ本作のヒロインのキャラと遍歴が、イギリスの身分社会、人種の多様さから現代的なドラマを生んでいる。
ヒロインの弟が経営している写真館での家族を中心とした多様な人々の写真を撮るシーンが、その裏にある喜怒哀楽のドラマを示唆し、本作の秘密と嘘を暗示しているようで面白い。
養子に出された娘は、養親のおかげで大学も出て知性ある女性として独立している。
彼女の存在は、人は育てられた環境に大きく左右されることの証でもある。
父違いの妹がヒロインによって育てられ、ウザイ母親に反抗的な態度やライフスタイルを見ると一目瞭然だ。
ただ彼女の出生が望まれたものではなかった過去がヒロインの口からもれたことで悲しい傷となってしまったが、彼女なら克服できるだろう。
ヒロインにとっては若かりしときの遍歴が孤独で退屈な現在の生活を、多少明るくすることになったのは喜びだろう。
生きてればいいこともあるさ、それも彼女が頼るよくできた弟あっての幸福だということも忘れてはいけない。
その弟夫婦も経済的な成功の裏で、不妊治療を10年もしている苦労と子供を産めるヒロインをうらやましく思う心情も切ない。
本作は個々の登場人物のキャラと秘密を抱えた故の葛藤を丁寧に描き、台本なしの役者との即興的な演出とは驚く見事な出来栄えだった。

2023/06/05

2023/06/05

84点

VOD/U-NEXT 
字幕


写真館をメインに据えた妙

大きく言えば、一つの家族の物語なのだが、そこに生きるそれぞれに人生があって、登場人物それぞれのキャラクターの絡ませ方がうまい。

「秘密」も、観客が丁度「知りたい度」がMAXに達した時点で、ポロっと明かすという。この辺りのシナリオの上手さは素晴らしいし、何と言っても主人公のブレンダ・ブレッシンの演技が最高。
カンヌで女優賞を獲ったのも納得。
どこまでが監督の演出でどこからが彼女の役作りかは分からないけど、とにかく実在感がえぐい。
「気持ちが揺らぐ」をどう表現するかの、お手本の様さ一挙手一投足である。

弟の職場を写真館にしたのも唸るチョイス。
色んな人が来て、色んな写真を撮っていく。

「幸」も「不幸」もあっての人生で、
人生で「失敗」や「間違い」なんてないんだなぁと。

強いて言えば、広げた風呂敷が最後急速に閉じるのだけが、少し予定調和に思えた。

2023/01/23

2023/01/23

75点

テレビ/有料放送/ザ・シネマ 


黒人の娘に白人の母親

ホーテンス(マリアンヌ・ジャン=バティスト)の養母が亡くなり、かねてから気になっていた実の母を探すことに。実の母シンシア(ブレンダ・ブレッシン)は娘ロクサンヌ(クレア・ラシュブルック)に手を焼きながらなんとかコミュニケーションを取っていた。またシンシアの弟のモーリス(ティモシー・スポール)は妻とうまくコミュニケーションか取れなくて悩んでいる。
そんなところへホーテンスがシンシアに電話をかけ、会って話を聞きたいという。シンシアは最初は渋っていたが、会うことにした。会ってみると娘は黒人で、人違いだというが、ハッと気がつくと身に覚えがあった。彼女は16歳の時に産んだ子供だったのだ。それから母と子のデートが始まり、ロクサンヌの誕生日祝いにモーリス宅へ彼女を伴う。
バースデーケーキで盛り上がったところで、シンシアは娘だと紹介する。戸惑うホーテンス、モーリス、ロクサンヌ、しかしそれぞれが持つ秘密を明らかにすることで、絆が深まり、めでたしめでたしとなる。
黒人の娘に白人の母というシチュエーションが珍しい。母は子供を一度も見ないうちに養子に出されてしまったので、娘が黒人だと思ってなかった。よくできた娘とよくできた弟が全体をうまく収めている。
最初は見るのに乗り気では無かったが、見始めたらぐいぐい引き込まれてしまった。
96年カンヌ映画祭パルム・ドール、主演女優賞(シンシア・パーリー)、国際批評家連盟賞の三冠を獲得した映画であることをあとで知った。

2022/10/23

80点

選択しない 


家族だから言えない秘密とは…。

本作の主人公シンシアは娘を一人持つシングルマザー。とにかくよく泣く。暇さえあれば泣く。
女手一つで子供を育てた苦労からなのか、泣くことが習慣になってるようだった。
シンシアには弟がいる、名はモーリス。結婚はしているが子供はいない。妻モニカとは子供がいないことで、関係はギクシャクしている。モニカは子供が欲しい様子なのは序盤でわかる。
更に黒人女性ホーテンスも登場する。養子として幸せに暮らしていたそうだ。しかし養父母が亡くなり、実の親を探すことを始めた。
その実母がなんとシンシア。
肌の色の違う子供とは…、シンシアの言う通りになんかの間違いだと、私も思った。
しかし出生証明書がある。血縁関係なのは間違いない。
成り行きでシンシアとホーテンスは会うことになった。
シンシアの娘マリアンヌと違い、ホーテンスには育ちの良さを感じた。実の娘ロクサンヌら荒れているのに対して、ホーテンスは真逆の性格。これを見ると、ホーテンスは養子に出されて良かったのではないかと考えてしまう。
大人になってからの人格はやはり育ちである。優しい人は、間違いなく親からの愛を十分に与えられている。躾もされている。
逆に躾をされていない人は、他人に対して我を通す。
万人がそうなのだが、一番最初に生活の仕方や、勉強を教えてくれたのは育ててくれた親である。
育ちは大人になってから、行動に出るものである。

本作の見せ場はラストのバーベキューパーティーでの秘密の告白に集約されている。
140分超えの長い上映時間は、このパーティーのための前フリであった。
それ故に中盤はかなり退屈であった。でもラストは高波があるので、チャラにはなりましたが…。
そのラストは痛々しかった。望まれず生まれた子供の悲しみ、望んでも子供が生まれない夫婦の悲しみ。
家族だからこそ、言えない秘密がそこにはあった。
そしてその秘密がばれても、家族だから許すこともできる。本作は「血は水よりも濃し」を言いたかったのだと思います。

2022/09/18

99点

選択しない 


耳に残る、Sweet Heart

始めは最後まで観れるか微妙だったけど、どんどんひきこまれた。
王道のストーリーなのに、
これほどまでに人間臭さが滲み出ているのは、
ホーテンスとシンシア、脇役もの演技力に加え、
写真館を巡って描かれるそれぞれの人間模様。
痛みを抱えて生きていく、人生の素晴らしさ。

ドアをノックしたホーテンス
ドアをゆっくり開けていったシンシア

「人生っていいわね」
最後の台詞に拍手喝采

2022/09/11

2022/09/11

77点

VOD/U-NEXT 
字幕


聖女シンシア

正直に言えば、ストーリー自体は凡庸だと思います。しかし、秘密と嘘の告白を通して家族が再生していく顛末を描いた人間讃歌と解釈すれば世評の高さも頷ける内容です。

本作の主な評価対象はマイク・リーの特異な演出方法と俳優陣の確かな演技力でしょう。イノセンスなシンシアと理知的なホーテンスが頭ひとつ抜けた印象ですが、脇役に至るまで皆さん巧くて全てのキャスティングに意味があったと思います。

個人的にはモーリスの写真館に集うお客さんの人間模様にドラマ性を感じられたのが良かったです。