(秘)色情めす市場

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(秘)色情めす市場

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レビューの数

31

平均評点

79.2(159人)

観たひと

209

観たいひと

21

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル エロス
製作国 日本
製作年 1974
公開年月日 1974/9/11
上映時間 83分
製作会社 日活映画
配給 日活
レイティング R指定
カラー モノクロ/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督田中登 
脚本いど・あきお 
製作結城良煕 
撮影安藤庄平 
美術川崎軍二 
音楽樋口康雄 
録音木村瑛二 
照明新川真 
編集鍋島惇 
助監督高橋芳郎 
スチール浅石靖 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演芹明香 丸西トメ
花柳幻舟 丸西よね
夢村四郎 丸西実夫
岡本章 寺坂肇
宮下順子 平林文江
萩原朔美 斉藤敦
高橋明 浅見
絵沢萠子 百合
小泉郁之助 堀銀二
小林亘 中年男
庄司三郎 薄汚い男
榎木兵衛 変態の客
坂本長利 土建屋風の男
萩原実次郎 よねの客
島村謙次 よねの客
清水国雄 トメの客

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

大阪の旧赤線地帯に春をひさぐ売春婦たちの、哀れにもドロドロとした生きざまを描く。脚本は「狂棲時代」のいど・あきお、監督は「真夜中の妖精」の田中登、撮影は「実録桐かおる -にっぽん一のレスビアン-」の安藤庄平がそれぞれ担当。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

十九歳のトメは、ドヤ街の近くで客をひく売春婦である。トメの弟の実夫は生まれながらの知的障害者で、年中、家でゴロゴロしている。母よねは、四十歳を過ぎた現在でも売春婦をやっているが、あふれることか多い。小料理屋「おそめ」では裏二階で、客に女を抱かせているが、トメに辞められて以来、収入が減ってしまったために、地廻りで“大人のオモチャ屋”をまかされている浅見に頼んで、トメに喝しをかけるが失敗してしまう。ある日、トメは手配写真の中にあった強盗殺人の顔にそっくりの男、寺坂に会って以来、彼に興味をもった。寺坂と同じボロ・アパートの住人、斉藤と文江は共稼ぎだが、正式の夫婦ではない。斉藤は会社の金を使い込んでしまった。思い余った文江は浅見に頼んで「おそめ」で働くことにした。銀二はよねの情夫で時折りトメの家にやって来る。ある日銀二は、よねの留守にやって来て、トメに金を払い二人は寝た。数日後、これがバレて母娘喧嘩になるが、後の祭り。ところが数日後、連れこみ旅館からの連絡で「年増はアカン、もっと若い娘」ということでトメが行ったが、そこにいた年増というのがよねだった。収まらないのはよねで、眼を吊り上げて旅館を飛び出し、焼酎をガブ飲みして大暴れ。数日後、久しぶりに家に帰ったトメは、よねがいるので、一瞬ギクリとするが、よねは弱々しい声で言うのだった。「お前に頼むしかないんや、どないにもならへん。堕ろそうと思ってるうちに、もう五ヵ月になってしまっとんのや」「うちらみたいに生んだらエーヤンか、そんなアホなこと知らんでェ」「お前らも生むんじゃなかった。金がないばっかりに」「生んで貰って迷惑しとんのは、こっちゃでェ!実夫、よう聞いときィ」「なンやてェ! このド阿呆!」「人でなしは生まれたときからや」……。トメはプイと外へ出ると、いつものように客ひきに精を出すのだった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1974年10月下旬号

映画批評:(秘)色情めす市場

日本映画紹介:(秘)色情めす市場

2024/02/17

2024/02/17

81点

映画館/東京都/神保町シアター 


女優魂特集にて4K鑑賞。すごい作品!

1975年の新今宮、天王寺、西成のリアル?とにかくすごい作品。芹明香の浮遊感、存在感に圧倒される。この世の無常感、弟や母親、登場人物がみなあまりに未来がない、今だけ。通天閣の上から見下ろす新世界、でも新世界なんてどこにもない。基本モノクロ、パートカラーでこの謎のタイトルさえなければもっと評価されたのではないか。タイトルでだいぶ損した気がする。なんともとんでもない傑作、必見。

2023/01/02

2023/01/03

80点

映画館/神奈川県/横浜シネマリン 


うち、なんか、逆らいたいんや

独立系娼婦として、世間の荒波、男たちや母(もまた娼婦)からの干渉にあらがいながら生きるヒロイン(芹明香)が鮮烈。大阪ドヤ街をうすっぺらい服を着てうろついている姿を見ていると、いつ犯されてもおかしくない、と見るたびにヒヤヒヤする。劇場では初鑑賞なのだ。
彼女と対象的に、男につくすのに裏切られ続ける悲劇的な副ヒロイン(宮下順子)もまた魅力的。演技力の点では多分彼女は一枚上手だろう。
危険きわまりない現地ロケであり二度と作ることができない、70年代日活ロマン・ポルノ最大の問題作のひとつに違いない。

2022/12/25

2022/12/25

85点

VOD/U-NEXT 


時を超えた究極の人間讃歌

原題『受胎告知』のまま仮にATGから発表されていたらより広い層から評価を得られた作品だと思う。ただ、70年代は邦画に圧倒的なパワーがあった時代なので相対評価では最高傑作とまでは言い切れない。芹明香を筆頭に伝説の繭にくるまれているが故のインパクトが大きいのではないか。とはいえ、過ぎ去りし時代をダイナミックに切り取った名作であることは間違いない。

通天閣がシンボリックに聳え立つ猥雑なあいりん地区の風景をさながらアートの如く切り取った映像美が冴え渡る。俯瞰で捉えられた、泥沼の中でもがく老若男女の根源的な営み。ガス爆発シーンの凄絶な美しさは最早、極北に位置している。

芹明香、宮下順子が対極的なエロスのアイコンを演じる。結果的に芹明香が表舞台から姿を消して、宮下順子がある種の普遍性を獲得した理由も何となく理解出来る。モノクロからカラーに切り替わった瞬間にカタルシスはマックスに達し畏怖の念すら抱いた。鶏は虚しく宙吊りとなった。「新天地は何処にもない。今いる場所を新天地に変える努力をすべきだ」。若き日の先達の言葉が甦る。

2022/11/25

95点

映画館 


『(秘)色情めす市場』映画評

鶏は餌を嘴で啄む。その絶え間ない所作。聞けば、土も食べるそうな。産まれて育った場所の味。それ自体を食べ尽くせれる喜び?無心に「日常」を二足歩行しながら、生まれた場所の感触を確かめること。主人公トメは、身売りでこの街で暮らす。餌をついばむ鶏になれるか?翔べない鳥なのは似てなくはない。咥えた餌の欠片喉に詰まらせる声もあるか?歓びのあれと苦痛のそれ区別はつかない。旅から旅をすることを止めること?そういう鳥だっている。というか、生来出来ないこと。高く翔ぶことを仕事にしない、本能に溶けた知恵?私たちにもあったら、な。翔べない鳥の知恵。その啓示、私たちが欲しがるみえない卵の殻を割る音を囁くのでは?高翔びの双六遊びいつかは飽きる日が来る。みえてたのにみえなかたことが、みえる、みえる。食べ尽くせ、この街の土。・・・ピエロは光を集め、色を放つ。・・・トメの弟実夫。彼は鶏を友に外の世界を往く。大阪城、通天閣。この街は元来高楼揃い。サーカス。飛べない鶏を飛ばして見せることで魅せること。誰の為に?光をくれた姉に弟は色を塗って礼をしたかったのでは?ふたりだけの色着きの世界。翔べない日常を高楼から飛躍させたかったのだが、鶏は空を翔べない摂理を彼は知らない。姉さん、外の世界には往けたけど望みには遠かった。知っている?・・・彼は死んだ。いや、生きた。その最期がどうだったではなく、その際際まで本能を屹立させた。ありがとう。空気人形は消費社会のシンボル?ふわふわでも中身が空気ならぬガスを詰めれば、それはもう爆弾だ。負のスパイラルの果ての身売り。切り裂きたい想い、日常の裂け目を探す。やがて破滅ならぬ破裂。原因はジェラシー。この街に来た転落の男女のこと。死の直前、煙草の火が嫉妬の炎にみえたのでは?何が起きてもわからないほど深く沈殿する負また負。死はまるでじゃがいものようにゴロゴロだ。でも勘違いしてはならない。この街は死に場所ではない。生き場所である。くるくるとスカートを旋回させる、トメ。未だみぬ母の何処の誰ともわからない赤子。弟か?妹か?日常は回る、回る。変わりながら変わらないこと。やがて消えて二度とあえなくなること。こんにちはとさようなら。鶏さんの知恵、みえたか?

2020/05/06

100点

映画館 


やりたい放題

やりたい放題やっているのに、芸術的な映画でした。大阪、新世界のゲリラ的にうつしているのが、素晴らしい。この映画を観た人は、きっとひっくり返るような衝撃を受けるでしょう。

2015/11/06

2020/03/20

80点

映画館/大阪府/シネヌーヴォ 


色々な液体が混ざり合った臭い、肌に纏わりつく蒸した空気が、画面を通してこちらにも伝わってきそう。そんな中で描かれる、売春婦トメとドヤ街に暮らす人たちの物語。その設定からは絶望に塗れた映画に思えるけれど、トメと彼女の母親のやり取りを始め、どこかコミカルな描写が多々。何よりも、トメのあっけらかんとした性格が、憂いてもいいはずの境遇を明るく見せている。そして、今でも足を踏み入れ難い地域をゲリラ撮影しただけあって、他の映画では見られないリアルさがそこここに。また、一拍の間を置いて見せるガス爆発、ダッチワイフを抱えて歩く青年等、シュールな描写も多くポルノ映画と雖も侮れない。個人的に、トメの弟・実夫が鶏を連れて歩くシーンが、妙に物悲しくて印象的。ちなみに、エロはトメ演じる芹明香よりも、文江演じる宮下順子がメイン。嫌悪が恍惚に変わる瞬間の彼女の表情といったら!