麥秋(1951)

ばくしゅう|----|----

麥秋(1951)

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レビューの数

104

平均評点

81.0(488人)

観たひと

693

観たいひと

51

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1951
公開年月日 1951/10/3
上映時間 124分
製作会社 松竹大船
配給 松竹
レイティング 一般映画
カラー モノクロ/スタンダ-ド
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督小津安二郎 
脚本野田高梧 
小津安二郎 
製作山本武 
撮影厚田雄春 
美術浜田辰雄 
音楽伊藤宣二 
録音妹尾芳三郎 
照明高下逸男 
編集濱村義康 
衣裳齋藤耐三 
監督助手山本浩三 
撮影助手川又昂 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演菅井一郎 間宮周吉
東山千栄子 しげ
笠智衆 康一
三宅邦子 史子
原節子 紀子
村瀬禪 
城澤勇夫 
高堂国典 茂吉
淡島千景 田村アヤ
高橋豊子 のぶ
佐野周二 佐竹宗太郎
二本柳寛 矢部謙吉
杉村春子 たみ
宮内精二 西脇宏三
井川邦子 安田高子
志賀真津子 高梨マリ
伊藤和代 矢部光子
山本多美 西脇富子
谷よしの 「多喜川」の女中
寺田佳世子 看護婦
長谷部朋香 病院の助手
山田英子 會社事務員
田代芳子 「田むら」の女中
谷崎純 冩眞屋

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

製作は「自由学校(1951 渋谷実)」「虎の牙」に次ぐ山本武。脚本は「宗方姉妹」と同じく野田高梧と小津安二郎との共同執筆。監督は「宗方姉妹」に次ぐ小津安二郎作品。撮影は常に小津作品を担当する厚田雄春。出演者は、「西城家の饗宴」の菅井一郎、「自由学校(1951 渋谷実)」(松竹)の笠智衆、淡島千景、杉村春子、高橋豊子、「白痴」の原節子、東山千栄子、「天明太郎」の佐野周二、「あゝ青春」の三宅邦子、「恋文裁判」の二本柳寛、「初恋トンコ娘」の井川邦子などである。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

間宮周吉は北鎌倉に住む老植物学者である。息子康一は医者で東京の某病院に通勤、娘紀子は丸ノ内の貿易会社の専務佐竹宗太郎の秘書である。佐竹の行きつけの築地の料亭「田むら」の娘アヤは紀子と学校時代からの親友で二人共未婚であるが、安田高子と高梨マリの級友二人はすでに結婚していて、四人が顔を合せると、未婚組と既婚組とに対立する。折から間宮家へは周吉の長兄茂吉が大和の本家より上京して来たが、紀子の結婚談が出る。同時に佐竹も自分の先輩の真鍋という男との縁談をすすめる。間宮家では、周吉夫婦をはじめ康一たちも佐竹からの話に乗り気になり、紀子も幾分その気になっているが、古くから間宮家の出入りである矢部たみの息子で、康一と同じ病院に勤めている謙吉が、急に秋田の病院へ転勤するときまったとき、謙吉こそ自分の結婚すべき相手だったことに気がつく。謙吉には亡き妻との間に光子という三才の遺児があり、恒産もないので、間宮家では四十歳ではあるが、初婚で、善通寺の名家の出である真鍋との結婚を希望するが、紀子のたっての希望を通してやることにする。紀子は秋田へ去り、周吉夫妻も大和の本家へ引きあげて行く。その大和はちょうどさわやかな麦秋であった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1964年2月号増刊 小津安二郎<人と芸術>

生前自選シナリオ四本:麦秋

1956年臨時増刊号 戦後十年傑作シナリオ集

特別口絵:麦秋

「戦後十年傑作シナリオ集」松竹映画 1951年作品:麦秋 

1951年10月下旬号

日本映画批評:麥秋

1951年10月上旬秋季特大号

試冩室より:麥秋

1951年9月上旬特別号

グラビア:麥秋

1951年7月下旬号

グラビア:麥秋

1951年7月上旬特別号

日本映画紹介:麥秋

2024/03/29

2024/03/30

80点

その他/TSUTAYA DISCAS 


紀子三部作その2

紀子三部作(「晩春」「麦秋」「東京物語」)の2作目。
紀子は勿論小津安二郎監督のマドンナ原節子です。「晩春」では、27歳で独身で父親が笠智衆。本作品では28歳で笠智衆は兄の役。「東京物語」では、平山家の戦死した次男の嫁役で、笠智衆は義理の父親役でした。原節子はあまり年齢が変わらない役でしたが、笠智衆の変化の方が驚き。本映画の兄役で確かに髪は黒々でした。
話は未婚の紀子の結婚話で父(菅井一郎)、母(東山千栄子)や兄(笠智衆)がやきもきするなどの・松竹小津映画らしい設定。
タイトルの麦秋の意味は?季節で言う麦秋は、穂が実初夏を指す。本映画では、麦が二度出てきた。戦士した次兄が友人に送ってきた手紙の中に麦の穂が入っていたとのことで紀子が欲しがる。また紀子の縁談が決まり、連れ合いの秋田へ行くことになった間宮家でこの機会に父母は故郷の大和(奈良県)へ帰るが、そこで観た季節が麦の秋であった。
紀子が居なくなり部屋が空くのに、何で父母まで故郷に帰る必要があったのでしょうか疑問です。
もう一つ疑問、康一(笠智衆)に叱られ、家を飛び出した息子二人、海岸べり(遠くに見えるのは江ノ島の灯台でしょう)まで行っていたが、住まいは確か北鎌倉駅の近くのはず、江ノ島の見える海岸までは相当遠いでしょう。
驚き、ショートケーキが900円。当時の900円とは相当に高級なケーキですね。

2024/03/26

2024/03/27

77点

選択しない 


淡島千景の可愛いこと

原節子の私を太陽のように照らす笑顔同様
『東京物語』で初めて彼女を見た時に
感じた天真爛漫さはこの作品でも貫かれていた
小津安二郎を辿る旅は同時に原節子の存在抜きでは語れないと認識する

台詞の応酬とテンポの速さは
想定外だった 
特に原節子の登場場面の
ポンポンと弾む会話は観客を
飽きさせないが
菅井一郎の
時にしんみりとさせる場面との緩急のとりかたも絶妙だった

小津安二郎劇団と呼んでいる(私が)お馴染みの俳優たちの
キャスティングも楽しい
原節子の縁談に苦悩する
笠智衆は『東京物語』では
物静かで穏やかな父親役だったが
菅井一郎にその役をあてがい
『麦秋』では若々しい医師の兄役で
少し気難しそうな堅物
年齢も職業も思いのままに
演じることができるんだなぁと感心
そうそう、『東京物語』では
夫婦役だったけど『麦秋』では
親子の役だった東山千栄子は違和感無しなのも凄い
逆に菅井一郎が笠智衆の父親役だった方が違和感大有り
菅井一郎のきれいな顔の輪郭なんかがいかにも若々しくて
老けメイクが下手だなぁ

絶対に動かさない小津安二郎独特のカメラワークや
昭和のモダンなインテリア
が何故か心を静めてくれる

俳優の表情を静かに見つめている
カメラがふと
老夫婦の見上げる空に向けられて
秋の色の空に風船が揺れている
自慢の娘の縁談に心を乱された
親の気持ちを象徴していた
風に飛ばされて行く風船は原節子そのものに見えたっけ

2024/02/04

2024/02/04

50点

テレビ/無料放送/BS松竹東急 


小津監督の家族ドラマは一挙に観た事がなく、本作も3日に渡って小出しで鑑賞完了。
物語にはあまり興味が無く、昭和日本の家屋と家具の鑑賞会状態で観た。
本作の見どころは、黒くフサフサした髪に眼鏡と髭が無いため最初別人かと思った笠智衆に、終盤の原節子と淡島千景の上手すぎる秋田弁。

2024/01/18

2024/01/18

75点

テレビ/無料放送/BS松竹東急 


2年後の「東京物語」では義父と娘となる笠智衆と原節子が兄妹、老妻役となる東山千栄子は二人の母親役という役どころが面白い。
そういえば本作で妻役をやっている三宅邦子は「東京物語」では長男の山村聡の妻役なので同ポジションということになる(笑)。
俳優だからどんな役でもやらなければならないのだろうが、大変なことだ。
28歳の妹の嫁ぎ相手を巡り、家族、周りの人々がいろいろ配慮やおせっかいを行うのだが、行き着く先は「青い鳥」的展開。
戦後の女性達の人生観の変遷、未婚と既婚の間にある旧態依然とした隔たりなど、世相の中で人の心の奥を覗き込む作品の重厚感はいつもながら大したもの。

2023/12/17

2023/12/17

70点

テレビ/無料放送/BS松竹東急 
字幕


どこともつかない境地と連鎖する光景

700に近いショットの構成によって極上の光景を生み出している.顕微鏡が見え,その顕微鏡をのぞく職場で間宮康一(笠智衆)や矢部謙吉(二本柳寛)は,どこに行こうとしているのだろうか.矢部は秋田を辞さないが,彼を溺愛する母親のたみ(杉村春子)は秋田行きを都落ちとも言わんばかりに,「物を言わなくなる」いつもの癖で謙吉を住まいの北鎌倉に引き留めようとしている.彼女は,口元でぶつぶつ言いながら涙を溜めているが,これは演技なのだろうか.物語の時間では,それからややあって,彼女を泣いて喜ばせる出来事が浮上する.おしゃべりな彼女は,本音なのか,冗談なのか,怒らせまいと気遣いながらも,康一の妹で近所に住んでいる未婚の紀子(原節子)に息子との縁談話を仮定として漏らす.そこで物語は急展開をしていく.
が,それはそれで愉快な喜劇であって,息を呑む光景は別にある.康一の母の志げ(東山千栄子)が戦没した次男への思慕を語りながら,遠い目をすると,鯉のぼりがはためいている.思い切った紀子は,白いブラウスとベージュか何か薄い色のついたスカートで砂丘を登ろうとすると,その隣には似た格好をした義理の姉の史子(三宅邦子)も歩いており,彼女らが丘の絶頂にいたるとその先には海岸線が見えている.それは彼岸のようにも映り,冒頭で打ち寄せる波の無時間がオーバーラップしてくるように想起される.そして博物館に寄った後,志げと彼の夫の周吉(菅井一郎)は遊歩道の脇に腰を下ろし,何かを食べている.食べ終わり,空を見上げると風船が,どこへと向かっているのだろう,上へ上へと登っている最中でもある.彼女と彼の食べる動作が同調しているだけでなく,その直前に紀子と彼女の未婚の悪友でもあるアヤ(淡島千景)が,既婚の友人二人にすっぽかされ,独身同志でジュースを飲むその動作の同調から,カットインアクションのように繋がれ,博物館にショットが飛んでいる.
少年たちは,「レール」に夢中であるが,そこを走るおもちゃはどこへ向かうのか,それともどこにも向かわずに,そのレールを周回し続けるのだろうか.歌舞伎が上演されている.それを観覧する者もいれば.ラジオからの歌舞伎中継で聞いている者もいる.亡くした兄からの麦の穂が紀子の手元へ届くのは,謙吉を手を経てから出なければならない.まほろばの大和には山が見え,麦畑の中を花嫁行列がどこか上手の方へと向かおうとしている.カメラはその光景に引きずらるようにゆっくりと上手に動こうとしている.3世代の家族7人の写真が撮られ,その後,旧世代の爺婆のツーショットが撮られ,爺婆は,大和に住む周吉の兄(高堂國典)の元へと身を寄せている.その兄は「つんぼ」と呼ばれ,孫世代には「バカ」となじられ,大仏の前でキャラメルを紙ごと食べながら,超然としている.彼はどのような境地にいて,爺婆はどの境地に向かおうとしているのだろうか.
紀子とアヤの驚くような秋田弁のやりとり,アヤの母(高橋豊子)が痴呆的に彷徨い探している黄色い何か,差される碁と集められる石,むくれて消えてしまった少年の兄弟二人と彼らの友のように列をなしている石の支柱,踏切の手前で躊躇ってため息をつく周吉,周吉がこさえている鳥たちの餌など,刮目すべき光景がどこまでも連鎖していく.

2023/12/09

2023/12/12

79点

映画館/東京都/Bunkamura ル・シネマ 


寅さんの原点、

原節子と淡島千景の掛け合いがあまりにかしましく麗しい。コメディ要素満載でケーキをちゃぶ台下に隠すシーンとかはまるで寅さん。
前週にNHKでやっていた小津安二郎スペシャルで、本作で出征して帰ってこない次男は山中貞雄オマージュであるとの解説を踏まえてみると、ラストの麦畑やら味わい深さマシマシなのでぜひ合わせてみることをおすすめしたい。傑作。