長屋紳士録

ながやしんしろく|----|----

長屋紳士録

amazon
レビューの数

38

平均評点

77.3(175人)

観たひと

258

観たいひと

23

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1947
公開年月日 1947/5/20
上映時間 72分
製作会社 松竹大船
配給 松竹
レイティング 一般映画
カラー モノクロ/スタンダ-ド
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演飯田蝶子 おたね
青木放屁 幸平
河村黎吉 為吉
笠智衆 田代
坂本武 喜八
吉川満子 きく
小沢栄太郎 幸平の父
三村秀子 ゆき子
高松栄子 とめ
長船フジヨ しげ子
河村祐一 平ちゃん
谷よしの 茅ヶ崎のおかみさん
殿山泰司 写真師

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

無声時代「東京の合唱」「生れてはみたけれど」「出來心」「大学よいとこ」等幾多の名作を生み、戦前「一人息子」「淑女は何を忘れたか」「父ありき」等を発表昨夏帰還した小津安二郎の再起第一回監督作品。脚本は「美人哀愁」以来「出來心」「浮草物語」「一人息子」「戸田家の兄妹」「父ありき」に至るまで数多くの協同作品をものした自身と池田忠雄の協同で、撮影には「鍵を握る女」「許された一夜」等の厚田雄春が当っている。小津作品のおなじみの俳優が顔をそろえている他、往年の名子役突貫小僧の実弟青木富廣が少年役で出演している。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

東京の焼け跡に復興の家がぼつぼつ建ちはじめ、昔なじみの顔もそろってきた。数年前夫を失い続いて一子をも失ったおたねは、たった一人で昔通りの荒物屋を開いている。ある日彼女の家の裏に住む占見登竜堂先生は一見戦災孤児のような少年幸平を拾ってきた。しかし自分で育てる力のない登竜堂はそれをおたねに押しつけた。おたねは内心甚だ迷惑に思ったが、別にどこへ行かすあてもないので仕方なく一夜だけ泊めてやる。そして翌日近所の家々を頼んで歩いたが、どの家庭を見ても、一人暮らしのおたね以上幸平を養うのに適した家はなかった。おたねは少年がかつて父と共に住んでいたという田舎の町へ、幸平を連れて出かけたが、求める家は見当らなかった。いまはおたねも幸平を捨てる訳にもゆかず、やむを得ずまた自分の家に連れ戻った。そして二人の生活が続き幸平の少年らしい仕草を見ているうち、おたねは自分の失った愛児の面影を想い出さずにはいられなかった。近所のどの家庭を見ても、皆子供を中心に幸福そうである。子供の良さは誰の子も同じではないか。おたねはついに幸平を我が子として育てようと決心する。やがては学校にも上げてやらねばなるまい。幸平もおたねになついてきた。しかしある日不意に幸平の父が訪ねて来た。彼は東京へ仕事を求めに来た時、幸平とはぐれてしまったのである。おたねは礼を言って去る親子を見送って、少年の本当の幸福をしみじみと願った。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2024年1月号

COMING Old Pictures 旧作紹介:「長屋紳士録」

2024/03/04

2024/03/05

85点

映画館/大阪府/シネヌーヴォ 


飯田蝶子のシャキシャキとした佇まい

戦後間もない焼け跡の中にポツンと佇むユートピアのような長屋の住人達が醸す落語の世界のようなユーモラスでのんびりとした雰囲気が懐かしくも心地良く、叱り飛ばしながらも情が移っていく飯田蝶子のシャキシャキとした佇まいが小気味良い。ラストの上野公園の西郷像の前に集まる浮浪児たちの姿に当時の現実を思い起こすが、一人でも二人でもかあやんみたいな人に引き取られて幸せに生きて欲しいと願ってしまった。

2023/05/26

2023/05/26

85点

購入 
字幕


台詞が絶妙である

2023年5月26日に鑑賞。DVDにて。1時間11分04秒。スタンダード・黒白。画面では、「昭和22年4月完成」の文字ある。

台詞が厳選されて絶妙である。

画面では、監督部:本郷武雄、山本浩三、武田義晴、塚本粧吉、田代幸蔵、撮影部:中村喜代治、井上晴二、川又昻、老川元薫 である。

2023/01/11

2023/01/12

70点

VOD/Amazonプライム・ビデオ 


渡る世間は鬼ばかり・・・じゃないと信じたい

おたね(飯田蝶子)はようやく父親(小沢栄太郎)が男の子(青木放屁)を引き取りに来たことに、ほっとするがしばらくたたずむ。従来の小津安二郎なら、たたずむおたねの後に人がいない風景を2,3カットを加えて終わりとなる。

だが、この作品はこの後、この映画のテーマをおたねを訪ねて来た近所の住人たちが来る。
おたねに拾った男の子の世話をしてくれと頼む占い師・田代(笠智衆)と為吉(河村黎吉)である。

この時におたねが今の世の中の不人情さをなげくのである。男の子のぶっきらぼうな態度をなじったり、この子に対してヒドイ態度を取った彼女が考えて見れば、今の大人のほうがダメだと気がつくのだ。おたねが男の子をやっかいものとし、冷たい態度を取るのは、終戦後の混乱の中、必死で生きる当時の人々としてはそれも仕方ない。他人のことなどかまっていられない。でも、一緒に暮らしていくうちに情が移り、親がみつからないなら、自分の子として育てようと決心したこの女性が、自分の態度に気が付いただろうと思われる。そしてそこがこの映画のテーマであっただろう。戦争が終わって人の心が荒れてきたことに対する小津の嘆きだと思う。

小津はシンガポールから帰ってきて、一年間休養を取った後に、この作品を手掛けた。休養を取っている時期に、そんな不人情な場面にいくつか遭遇したのだろうと思う。それを映画で訴えるために、このおたねが自分の不人情に気が付く場面を入れたのだと思う。この後の作品は主人公がたたずむ場面に人がいない風景を2,3カットを入れてお終いという小津スタイルがこの作品にはない。

それは観ている人に直接伝えたいということで、ここで監督の気持ちを説明したセリフを入れた。説明セリフは映画作法で一番まずい方法なので、やってはいけないことであるが、たぶん小津は誰にでもワカル方法を採用して、映画芸術的にはどうなのよと言われても良いと思ったんじゃないのかなあ。そういう意味では自分の想いを直接的にラストの演説に長々と入れたチャップリンの「独裁者」にも似ている。もっとも日本ではまだこの映画は公開されていないので、模倣ではない。

こういう説明セリフによるもう一押しの表現はまだ小津スタイルがこなれていないようだ。だが、これをあえて入れたのは、映画の出来がどうであれ、直接説明したいということなんだろうと解釈しておく。

そう思うのはこの映画でひとつおやっと思わせる演出があったからだ。おたねが男の子を自分の子供として育てる決意しただろうと思うところは一緒に記念写真を撮ろうと写真屋を訪れる場面だ。ここで一緒に写真を撮るおたねと男の子の姿が反転して場面が真っ黒になる。古い映画なので、ここはフィルムが劣化したのだろうと一瞬思った。だが真っ黒になっている場面にセリフが聞える。ということはこれは劣化じゃないと判断できる。

そしてここでの小津のアバンギャルドな演出は一体何を意味したのだろうか。考えて見たものの思いつくところがなかった。これはまた数年後に観直さなきゃならないだろうな。他の小津映画を観直してみたら気が付くかもしれないから。

この場面の写真屋のオヤジは観ている最中には気が付かなかったが、後でキャスト表を見ると殿山泰司なのには驚いたなあ。

2022/12/10

2022/12/10

-点

その他/古石場文化センター 

『長屋紳士録』。かあやん(飯田蝶子)がぼうや(青木放屁)に対して見せるいろいろな顔。「めっ!」と怒っているんだけど何だか可笑しくなる。かあやんたちは築地本願寺の近くに住んでいるようだ。子供達が築地川南支川の備前橋辺りで釣りをしている。三角籤で2000円当たる。一枚いくらなんだろう。

2022/10/23

2022/10/23

80点

VOD/Amazonプライム・ビデオ 


歌う笠智衆。

小津安二郎監督です。珍しく、全編にわたって笑えます。ラストはかなり切ないですが。冷たいようで愛情がこもっている。貴重な記録映画。

2022/09/07

2022/09/07

83点

VOD/Amazonプライム・ビデオ/レンタル/PC 


こんなにおもしろいとは。

他人の子を引き取り、情が移ってしまうお馴染みのジャンルの原型みたいな作品。
とてもシンプルで気持ちがよく、素直に楽しめます。
飯田蝶子のブルドッグ顔が楽しい。棒立ちで無表情の子どもがかわいい。シラミを飼っているのか、しきりに肩口をモゾモゾやってて、それが女主人にも移る。お風呂に入れてあげればいいのに、とはらはらと見ていたが、当時は銭湯も焼けてなかったのかな。
じっと佇む、じっと考え込む、小津独自の姿勢の見せかたがはまっていて美しい。