浦島太郎の後裔

うらしまたろうのこうえい|----|----

浦島太郎の後裔

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レビューの数

7

平均評点

62.3(18人)

観たひと

33

観たいひと

2

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1946
公開年月日 1946/3/28
上映時間 82分
製作会社 東宝
配給 東宝
レイティング
カラー モノクロ
アスペクト比
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

演出成瀬巳喜男 
脚本八木隆一郎 
製作筈見恒夫 
撮影山崎一雄 
岡崎三千雄 
美術安倍輝明 
音楽山田和男 
録音大家忠男 
照明藤林甲 
特殊効果円谷英二 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演藤田進 浦島五郎
中村伸郎 鳥丸飛夫
杉村春子 千曲女史
高峰秀子 龍田阿加子
三津田健 豪田豪太郎
山根寿子 豪田乙子
菅井一郎 唐根
龍岡晋 黒原
宮口精二 稻倉老代議士候補

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

「勝利の日まで」に次ぐ成瀬巳喜男演出の東宝第三撮影所第一回作品。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

HA・A……O、HA・A……O……ラジオが不思議なさけび声を放送していた。これは最近南方から復員したヒゲもじゃの男浦島五郎の放送である。彼は言う、これは歌ではない「私は不幸だ」という言葉だ、日本の現実は僕にこう叫ばせずに置かない、HA・AO……と。そしてその声は全国津々浦々に放送されて行った。新聞「大権威」の婦人記者龍田阿加子はトッサに浦島の叫び声をものにしたらビックニュースになると思い彼に議事堂の頂上から叫ぶことをすすめる。浦島はビックリするがすすめられるままに議事堂の塔上に上がりHO・A……O……をさけびつづける。そして「大権威」は浦島の記事を写真入りで大々的に報道して彼の人気をあおった。「大権威」の社長唐根は今や人気の絶頂にある浦島をニセ民主主義政党日本幸福党に五十万円で売りつける。かくて浦島はニセ政党のロボットと化し去った。日本幸福党のパトロン豪田の娘乙子は浦島に憧れて彼の秘書となる。浦島を賛美する乙子は彼の英雄化を助長していった。もはや浦島は日本の不幸を叫ぶ純な青年ではなく、ニセ政党に踊らされる傀儡となってしまった。一方阿加子は浦島の歩む道の間違いを悲しみ忠告する。浦島はほんとに自分に力があるかないかを試してみようと日本幸福党大会に特徴的なヒゲを剃り落として演壇に上がりHA・A……O……を絶叫する。しかし聴衆はヒゲのない浦島を信ぜず「真物の浦島を出せ」とどなる。狂気の如くさけぶ浦島は遂にヒゲのない自分には何の力もない事を知って失意の底に落ちた。彼は始めてニセ政党の手から離れて覚醒した--。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2024/03/12

2024/03/12

60点

購入/DVD 


珍品?

成瀬巳喜男監督にしては珍しいメッセージ色の強い映画。あの成瀬でさえ戦争責任を叫ばなければいられなかったか?しかし国会議事堂のてっぺんに登りターザンのように吠える浦島を描くのはどうか・・・?珍品。

2021/09/12

2021/09/12

70点

選択しない 


戦後第一作

成瀬監督の作品を年代順に見てきて、やっと戦後第一作まできました。たぶん、鶴八鶴次郎あたりから、ラブストーリー系が消えてしまい、戦時中は芸道、子供、道徳ものといった内容で、表現することが不自由な中で、良い作品ではあるものの、どこかもどかしい感じが漂っていました。そして、ここにきて最初の放送局の場面を見て、かつての思い切った表現が戻ったような気がして、一気に晴々とした気分になりました。それがこの作品の何よりもいいところだと思います。

高峰秀子の新聞記者の登場で、フランク・キャプラの「群衆」を想起し、前半は「群衆」のストーリーに沿った展開が続いていきます。そして、藤田進を囲む高峰秀子と山根寿子の場面から、いかにも成瀬巳喜男監督オリジナルな感じになっていきます。山根寿子のエピソードは、ストーリーの中で浮いているとはいえ、ここに割って入ってくる山根寿子に、成瀬監督らしさを感じました。

そんな「群衆」のリメイクみたいな作品ですが、ラストに向かって教条的になっていくのが難点。そこまで主義主張を言葉で話しますか?というところですが、戦中に植え付けられた思想を一気に逆転させるには、当時必要なことだったのでしょう。ここには戦中と同様の国策的なやり方を感じます。最後に杉村春子が演壇に立つとことなど、なんでお前が?おかしいだろ!というところですが、果たして、本人納得して演じていたのでしょうか?不思議です。作品中の幾つかのウラシマの絵は、さながら毛沢東かスターリンかというところです。本来成瀬監督の映画は政治色は薄いですから、本当に監督らしい作品が作れるようになるには、もう少し待たないといけないようです。

2017/03/05

2017/03/06

-点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 

『浦島太郎の後裔』。クレジットでは「高峯秀子」名義。ラジオでターザンのように「あ~ああ~」と叫ぶ髭モジャの藤田進。ラジオ受信機はほとんどJRC製。議事堂の屋根のセットの上で叫んでいる藤田。生中継の担当は花澤徳衛。特撮は圓谷英二だが、ウトウトしてたので肝心の特撮場面を見逃す大失態。

2015/08/27

2015/08/27

60点

テレビ/有料放送/日本映画専門チャンネル 


民主主義映画

日本映画専門チャンネルで放映したものをヴィデオ録画したものを観た。
キネマ旬報で成瀬監督は本作を次のようにコメントしている。
「(前略)これも戦争中とは逆の意味で“仕方ない”写真ですね」

GHQにより民主主義を啓蒙する映画を作れという支持で意に沿わぬけれど作ったというわけで、失敗作に終わった。渋々作っているから、演出も演技も面白みがないのだ。ハッピーエンドも成瀬らしくないしね。
民主主義の映画でフランク・キャプラみたいな仕上がりになっているのは興味深いけれど、これはシリアスなものにせずにコメディタッチで描いたらもう少しおもしろかったかも。

国会議事堂に登るとは「キングコング対ゴジラ」のキングコングだよ、と思っていたら、本作の特殊効果に円谷英二のクレジットが。

2013/11/10

2013/11/10

50点

映画館/東京都/東京国立近代美術館 フィルムセンター 


成瀬戦後第1作にしてスランプの始まり

ラジオで奇妙な叫び声をあげ、人気を得た復員兵の浦島五郎。その人気を利用し女性記者阿伽子はエセ民主主義政党に50万円で売りつけるが、党大会で浦島はトレードマークの髭を切り、聴衆に総スカン喰う。
過ちに気付き自己批判し、党のスタッフをやり玉に挙げ自分を取り返す浦島五郎。
戦後すぐに作られた民主主義啓蒙の映画であるが、成瀬自身で納得していないと思われる本音がかいま見える失敗作で、長いスランプを迎える事になる。本作と、次作の「俺もお前も(1946年)」で資本家を糾弾した成瀬には時流に乗る器用さはなく、この後、東宝争議に巻き込まれ、やかましい時代だったと回顧している。

2013/11/10

2013/11/10

60点

映画館/東京都 


資本家と政党の癒着を告発

戦後民主主義と財閥解体後の財閥と政党の癒着をコミカルに描いた作品。資本家と政党の結びつきは今も変わらないが、山本薩夫や今井正が作りそうなテーマを成瀬が手掛けたことがいちばん興味深い。しかも部分的にミュージカル風になる。
高峰秀子の女性記者と杉村春子の雑誌編集長の会社の描写で、当時のマスコミの雰囲気が解るのも貴重。
本作品のベースはフランク・キャプラの「群衆」とされているが、八木隆一郎の脚本は風刺がストレート過ぎて、洗練さに欠ける。党名が日本幸福党とは偶然とはいえ面白い。