この1年前にもシネマヴェーラ渋谷で鑑賞している。あまりに面白かったので翌年ラピュタ阿佐ヶ谷の「草笛光子特集」で2回も鑑賞してしまった。
主に善良な人物を扱った作品が多い丸山誠治監督が、人間の欲望を描いたダークな犯罪モノも扱っていたことに衝撃を受けた。
脚本は高木隆、加藤俊雄という人が書いている。聞き慣れない名前だが、良く練られた脚本だ。草笛の悪女役もお見事。
それから何と言っても「音」の使い方がいい。一例を挙げると、河津清三郎が奥さんの坪内美詠子の首を絞めるシーン。蓄音機から流れるけたたましいジャズの音のボリュームがグイッと上がる―。
私はかつてある人から「プロとアマチュアの違いは音が上手く使えるか否かだ」ということを教わったことがある。本作を観て私はこの映画をつくった人たちは間違いなくプロだと確信した。
笹るみ子の演技は観る人によってはイラッとするかもしれない。正直私もイラッとした。しかしそれは彼女が自分に与えられた役をそれだけ上手く演じ切っているからとも解釈できる。
ただ、ラストの展開には正直私も迷った(今も)。しかしそれでも本作は犯罪計画のプロセスを描いたスリラー映画としては一級品であった。