事件記者シリーズの第四弾、「姿なき狙撃者」であります。暇を持て余す警視庁記者クラブに、時計店に賊が侵入したとの一報が入ります。しかしそれは未遂に終りました。賊は男女アヹックで、女の方の秀子(葵真木子)だけ逮捕されましたが、「黙秘権つて知らないの?」などと憎まれ口を叩き何も話しません。
すると男の方から「秀子を釈放しないと警官を殺す」との電話が。俄に忙しくなる記者クラブ。予告通り交番が襲撃され、さらに外国人まで殺される事件が。犯人は前科持ちの「赤靴のトミー」(杉幸彦)なる若者と判明、ヤツが発砲した拳銃の弾丸と分かりました。
ところがトミーから電話が入り、外国人の殺人は自分ではないと云ふ。自分の拳銃は、アパートに泥棒に入つた時に手に入れたものですが、その拳銃の元元の持ち主が殺したらしい。そいつは杉浦(深江章喜)なるヤクザで、姿を消したトミーを探してゐました。
東京日報の菅(沢本忠雄)は、トミーを自首させやうと、遊園地へ呼び出します。スガちやんの説得により、自首を決めたトミーでしたが、そこへ杉浦と舎弟たちが襲撃に来ました。外国人殺しは杉浦の犯行で、その罪をトミーになすりつけやうとしたのです。絶体絶命のピンチですが......
今回も社を越えた記者クラブのチームワークが光りますが、何より沢本忠雄が主役らしい活躍を見せるのが嬉しい。杉幸彦を説得する役目を自ら買ひ、キャップの永井智雄に「ブンヤは事件を追ふもので、自分で作つては不可ない」との教へを忘れてゐない事を告げる辺りは成長を見せてゐます。
それは同期の山田吾一がおちやらけ一辺倒に走るのと対をなしてゐます。まああれはあれで面白いんだけど。そして永井は「スガちやんに何かあつたら僕の責任だから」と心配しバックアップに努めます。無責任上司が横行する昨今、お手本のやうな人ですね。
ゲスト陣も地味ながら手堅い。小ワルアヹックに杉幸彦と葵真木子。わたくし、密かに葵真木子ファンなのですが、蓮ッ葉な演技も魅力的でした。あくまでも個人の意見です。大ワルコンビは深江章喜と南風夕子。日活アクションでお馴染みの顔ぶれです。殺しだけではなく麻薬にまで手を出してゐました。
ラストの銃撃戦はなくもがなと存じますが、メインプログラムの添物映画としては十分満足の一本と申せませう。