石川達三の同名小説を山本薩夫監督が映画化した「先生と生徒の教育現場、日教組、そして教育に対する政治のあり方」を描いた幅広い問題意識を提示する作品であった。
この映画を観ようと思ったのは、現在読んでいる香川京子の自伝本『凛として~女優香川京子』にこの映画の章があり、映画未見なので自伝本を先に読むよりは映画を観てから読もうと思ったから…。
この映画、明確には何県という明示は無く、津田山という地名だけは駅名とともに出て来る。原作小説は、佐賀県の実話をベースにした物語とのこと。
津田山市。炭鉱と漁業が行われているいるようだが寂れた雰囲気。
山の麓の小学校の新学年から始まる。志野田先生(香川京子)は明るく一生懸命に担任を務める。夫(南原伸二)は県教組の幹部、出世第一主義のため、家庭を顧みず活動している。
そんな折、志野田先生は同僚教師と2人呼ばれて、退職勧告を受ける。理由は、2人とも夫との共稼ぎだから。この頃、退職勧告は全国的な規模で行われており、教師に支払う予算を削るためだった。2人の退職勧告は組合決議の上で正式に拒否。
こうした出来事の合間に、教師と生徒の関係が描かれる。そんな中で素晴らしいのは志野田先生の隣のクラスの教師=沢田先生(宇野重吉)である。彼は生徒との意志の通じ合いを重んじながら、生徒と接する素晴らしい先生であった。
豪雨の時には、志野田先生のクラスの生徒が3円安いノートを買うために踏切を渡っていて電車との接触事故で死んでしまう。泣き崩れる志野田先生。その横で、幼い息子のためにお棺作りをする父親(東野英治郎)。この父親の存在感も寡黙であるが故の見事さ。
また、突然画面が「忌中」の文字を映し出すので「誰の葬儀か?」と思ったら、沢田先生の奥さんの葬儀だった。そんな沢田先生は相変わらず、愛情を持って生徒に接していたが、小児麻痺で片足がきかずチ○バと同級生から虐げられている生徒を見て、いじめていた33人を叩いてしまう。(ぶん殴るほど強くはない…)それが体罰問題となり辞任問題へ発展する。沢田先生が志野田先生に言うには「闘わない者は負ける」。名言である。山本薩夫監督は、このセリフを言わせたくてこの映画を作ったのではないか、と思うほど。
途中、国会審議での教育法案の成立を巡っては、群衆のデモするモブシーンがあるが、こういうシーンを見ると「山本薩夫監督は、本当に凄いな~」と思う。
山本薩夫監督が教育現場の在り方を描いた佳作であった。