まがい物の背広や着物を口八丁でバイ(売る)する甲州の行商人団のコメディ。リーダーは加東大介。映画はその行商人団に加東の甥っ子夏木陽介が加わるところから始まる。他のメンバーは小林桂樹、三井弘次、山茶花究、清川虹子という曲者俳優がずらり。さらに、加東の先輩売人の森繁久彌が重要な役で絡む。行商人の宿の向かいの三好栄子が経営する飲み屋の酌婦に団令子と草笛光子。団は加東、草笛は小林といい仲。松林宗惠監督で「新・狐と狸」('62)の続編あり。このラピュタ阿佐ヶ谷の特集に関し、尾形敏朗氏がキネ旬2024年1月号で、「1964年ころ東宝の重鎮、藤本真澄は自社の監督を野球の打順になぞらえた。一軍メンバーは、1.千葉泰樹/2.川島雄三/3.成瀬巳喜男/4.黒澤明/5.稲垣浩/6.久松静児/7.松林宗惠/8.杉江敏男/9.豊田四郎/ピンチヒッター円谷英二、という(高瀬昌弘『東宝監督群像 砧の青春』)」と書いている。今回の特集で上映される映画のうち、「東京の恋人」「大番シリーズ(全4作)」「沈丁花」「二人の息子」「みれん」「裸の重役」「春らんまん」と観ているが、千葉監督が東宝の中でも高く評価されていることを初めて知った。【最高の職人(アルチザン)こそ芸術家(アーティスト)。千葉泰樹 至高の世界!】