後味の良い女の半生モノ。高千穂ひづる、素晴らしい。
島倉千代子が唄う心地良い主題歌で幕を開ける。しかし実際にはかなり深刻な物語だ。まぁ、こういう女の半生モノって、たいていそんなもんで、主人公の女優の悲劇のヒロインっぷりを終始観ているのが辛くなる。後味もそんなに良くない。
しかし、本作はそんな私の知っている典型的な女の半生モノとは違っていた。高千穂ひづる、本当に素晴らしい。お姫様女優というイメージのあるこの方にあの役柄が相応しいのかどうか心配していたが…見事な演技であった。貧困、戦争、愛する人たちとの死別…様々な困難を乗り越え、力強く生きる気丈な女性を見事に演じ切っていた。
酒におぼれ、死のうとするも伊藤雄之助に制止されて正気に戻り、初恋の人・田村高廣と別れを告げて駆け足で峠を駆け下りて行った後、裸足になって伊藤の麦踏みを手伝う―という終盤の展開が何と清々しいことか。後味の良いラストに、心から良い映画を観た、と思える。伊藤の笑顔も良い。