ラピュタ阿佐ヶ谷で始まったフランキー堺の特集で観た「僕は三人前」は、就職が決まらずにいたフランキーの元に、一気に三つの採用通知が届き、取り敢えず三つとも体験しようと、製薬会社、金融会社、倉庫会社を掛け持ちする事から起きるすったもんだを描いたコメディです。
製薬会社では社長・十朱久雄の娘・河内桃子に親切にされ、金融会社では社長・左卜全の愛人・中田康子から色目を使われ、倉庫会社を紹介してくれた下宿の大家の娘・香川京子も何かと親身になってくれるなど、女性関係でも満更ではないフランキーが、製薬会社と金融会社の契約をまとめたり、製薬会社の密輸騒動に巻き込まれたりする中、大家の娘・香川京子を伴侶と選ぶことにして、警備会社1本に絞ろうとしたところ、香川に“辞表を出しておいたわよ”と言われて、再び無職に逆戻りするというオチがつきます。
雪村いづみの「あんみつ姫」や柳家金語楼の「おトラさん」シリーズなど、東宝傍流の東京映画や宝塚映画を手掛けた新井一が、井上薫(この人はあまり多く書いていません)と一緒に書いた脚本は、大した出来ではないものの、大きく破綻している訳でもないというもので、ここ数年で手堅い映画を観た瑞穂春海の監督ぶりは、笑わせようとして滑っているところが散見するとはいえ、ここでもまずまずの腕前を見せています。
瑞穂春海の映画は、わたくしが観たものがたまたま出来の良い部類だったのだろうとは思いますが、侮れない出来のものを観続けている印象であり、ここ暫くは上映作品をみつけたら追いかけたいと思います。