当時中学生だった自分は、通学路に立つ新東宝の看板に胸をときめかせていたものだ。むろん入場は叶わなかったがいつか自由に見たいと憧れていた。55年後に観る機会がやってこようとは思ってもいなかった。今見るとデカパンのビキニ止まりの露出度で、PG12にも該当しないような内容であり、失われた昭和時代を改めて感ずる。
作品内容も、無人島に漂着し仲間に置き去りにされたボクサー稲田が、発見した財宝と共に名前と姿を変えて6年後に帰国し、置き去りにした仲間に復讐を遂げる。イージーなストーリーとチープな美術、上滑りの演技とに、ノスタルジーを呼び起こす以外にとりえはない。
日本映画の入場者数が11億2700万人の絶頂を迎えた1958年に本作品は作られ、3年後の1961年8月に新東宝は映画活動に終止符を打つ。