火の玉奉行

ひのたまぶぎょう|Fireball Magistrate|Fireball Magistrate

火の玉奉行

レビューの数

2

平均評点

64.3(9人)

観たひと

13

観たいひと

2

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル 時代劇
製作国 日本
製作年 1958
公開年月日 1958/5/12
上映時間 92分
製作会社 東映京都
配給 東映
レイティング 一般映画
カラー カラー/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督深田金之助 
脚色結束信二 
原作陣出達朗 
企画玉木潤一郎 
撮影吉田貞次 
美術塚本隆治 
音楽高橋半 
録音東城絹児郎 
照明田中憲次 
編集宮本信太郎 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演片岡千恵蔵 遠山金四郎
明石潮 遠山左衛門尉景晋
原健策 弥三郎
トニー谷 平公
霧島八千代 おとみ
水野浩 瓢左衛門
雪代敬子 お景
植木千恵 おちい
浦里はるみ お半
薄田研二 前田柴山
桜町弘子 お君
柳永二郎 伊吹屋次郎八
月形龍之介 牧田備前守
市川小太夫 塩谷遠江守
岡義司 鎌沢因幡守
富田仲次郎 広海玄番
阿部九洲男 熊木大膳
西村幹雄 村部勘五郎
江原真二郎 池田相模守
玉島愛造 峰大和
八汐路佳子 桃太郎
若水美子 吉奴
中島栄子 雛丸
富久井一朗 露吉
立松晃 東風疾之進
片岡栄二郎 神並兵介
花柳徳兵衛 瀬川菊之丞
河部五郎 跡部山城守
三条雅也 土井大炊守
梅沢昇 水野越前守
仁礼功太郎 井上文左衛門
尾上華丈 大井勝俊
藤木錦之助 赤松兵部
中野文男 塚村昌三

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

陣出達朗の原作を、「葵秘帖」の結束信二が脚色、「はやぶさ奉行」の深田金之助が監督、「旅笠道中」の吉田貞次が撮影した遠山金四郎もの。主演は「大菩薩峠 第二部(1958)」の片岡千恵蔵、「恋愛自由型」の江原真二郎、「夜の鼓」の雪代敬子。ほかに浦里はるみ、植木千恵、月形龍之介など。色彩は東映カラー。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

--島津、黒田、鍋島の各藩主の署名血判のついた、江戸城抜穴の図面があった。それをタネに、京都二条城御在番塩谷遠江守、鎌沢因幡守の二人が各藩から金品をゆすっているという。北町奉行遠山左衛門尉景晋は二人を取調べたが、偽造らしき証拠の品が届かず、取調不充分のかどで、役目御免となった。その子金四郎は物好きに長屋で住むが、訪ねてみると貼紙が一枚。「江戸の春も飽きて候。依って当分、旅につき、留守。金」--金さんは京都に現れ、祇園の茶屋一力の娘お景をチンピラやくざから救ったのが縁で、そこの板前として働いていた。一力で毎夜宴をはるのが、例の塩谷、鎌沢らしいのだ。金さんは東海道で知り合った弥三郎という男と協力していた。金さんは情報を得るたびに、鳩を江戸へ向けて飛ばした。塩谷らは西陣の絵師前田柴山の家に出入りした。柴山は偽造図面を描き上げたとき、一味の手裏剣に倒れた。それは二条城で左衛門尉方の隠密が刺されたものと同じだった。柴山の図面は骨トウ商伊吹屋の手に渡ったが、それが古めかしく仕上げられたとき、伊吹屋も殺された。刺客たちは京都所司代牧田備前守の別邸へ消えた。金さんはこれらすべてを目撃した。彼を追い廻すのは、鉄火芸者のお半である。備前守は鳥取池田相模守を招き、図面をタネに一万両をゆすろうとした。容易に応じぬ相模守を狙った銃口は、突然現れた舞台の黒衣にさまたげられた。それは金さんだった。--所司代邸に、相模守の名代と称する大徳寺の住職が現れた。図面と引換えに一万両を渡すことを相模守が承諾したと告げた。が、そのとき本ものの使いが到着し、ニセ者と判った。--金さんである。彼はユスリの確証を握ったのだ。そのとき絵図面を盗みとった弥三郎と共に、邸から消えてしまった。--所司代の白州で裁判が開かれた。証拠の品々が提出された。最後に、弥三郎こと島津藩士南川三四郎の手に入れた偽図面がキメ手となり、備前守、塩谷らは刑に服した。--金さんは相模守らや、お半、お景らが見送るなかを江戸へ向って出発した。“遠山桜”が満開である……。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1958年7月下旬号

日本映画批評:火の玉奉行

1958年5月下旬号

日本映画紹介:火の玉奉行

2013/10/12

2021/10/27

70点

選択しない 


変装も愉しい王道の一作

 いれずみ判官シリーズの堂堂13作目、「火の玉奉行」であります。一体どの辺が「火の玉」なのでせうか。盆暗のわたくしには分かりませんでした。監督は三作連続で深田金之助。プログラムピクチャの何たるかを知る職人。脚本に東映時代劇の主力ライターの一人、結束信二が担当してゐます。いれずみ判官シリーズは意外にも本作だけの参加。

 始めの舞台は二条城。島津・黒田・鍋島の各藩主の血判のついた江戸城抜穴の図面をネタに、塩谷遠江守(市川小太夫)、鎌沢因幡守(岡譲司)の二人が各藩の弱みに付け込んで強請り集り行為をしてゐます。しかし証拠を掴めず、北町奉行・遠山左衛門尉景晋(明石潮)は、役目を果してゐないといふ事で、暇を出されてしまひます。長男・金四郎(片岡千恵蔵)は京都へ飛び、祇園のある茶屋で板前として潜入してゐました。

 塩谷、鎌沢両名は絵師の前田柴山(薄田研二)に偽の図面を描かせ、骨董商の伊吹屋(柳永二郎)に仕上げをさせた上で二人を殺害しました。更に影でワルどもを操る総本山・京都所司代の牧田備前守(月形龍之介)は、鳥取の池田相模守(江原真二郎)を一万両で買収せんとしますが、これが失敗。相模守は清廉潔白の士だつたのです。

 金さんは住職に変装し、相模守の名代と偽り塩谷、鎌沢らと対峙しますが、これがバレてしまひ大立ち回り。弥三郎(原健策)と名乗る、何かと金さんの周辺に出没してゐた男が此処で現れ、絵図面を奪ひ取ります。傷つきながらも金さんと共に消えるのでした......

 ワルどもはいつもの面子。親分の月形龍之介以下、市川小太夫・岡譲司に加へ、阿部九州男・富田仲次郎らが暗躍。一方いつもワルの薄田研二や柳永二郎が犠牲者となります。原健策もいつもの悪のイメエヂを逆手に取り、実は藩主に忠実な正義感でした。江原真二郎も、先達の悪が露見してそれが原因で御家断絶とならうとも、不正に加担は出来ぬと清潔過ぎる対応。やるねえ。
 女優陣は可憐な桜町弘子・雪代敬子に加へ鉄火芸者の浦里はるみ。夫々適所と申せませう。皆金さんにホの字なのは当然。コメディリリーフにトニー谷。眼鏡もそろばんもありませんが、そつなくこなしてゐます。また、「長脇差奉行」に続き花柳徳兵衛がゲスト的出演。

 肝心の千恵蔵金さんは相変らず大車輪の活躍。多羅尾伴内よろしく変装して潜入捜査し、事件を解決します。板前をこなし伝書鳩で情報を江戸へ流し歌舞伎の黒子を務め大住職に変装する。炎に包まれ大ピンチに陥つても、水音を聞き(あんな劫火の下でよく聞こえるものだ、などと云つてはいけません)脱出の糸口を見つけます。
 そしてクライマックスのお白州。水戸黄門と同じく、パタン化されてゐますが、否それだからこそ、当時の観客は愉しみにしてゐたでせう。「金さんなる者」を出せと五月蝿いワルどもに、桜吹雪を披露するこの場面の為に存在するシリーズと申せませう。

2014/05/24

2014/05/24

70点

テレビ/有料放送/東映チャンネル 


定番金四郎

もうおなじみの遠山金四郎シリーズ。
とにかく面白い。また最後のお裁き場面が楽しい。
ここで新たな発見をしたのだが、金四郎というのはすごい器用な人で、しかもプロ並みである。武士であるから武芸には通じているから、へなちょこ武士を相手にしてもスルリスルリとかわすことができるのは当たり前。その上に手裏剣まで達人の技。
この映画では板前として雇われ、京の料理屋で通用すること、船頭として川下りの船を操ること、歌舞伎の黒衣として後見ができることなどなどスーパーマンである。
ま、これが悪いというわけでなく、これがあるからこそ映画が楽しくなるわけである。金四郎=多羅尾伴内みたいなものだ。
脇役陣はいつもの山形勲や進藤英太郎は出なくて、月形龍之介、薄田研二、富田仲次郎、阿部九洲男などがカバー。さらに市川小太夫、河部五郎などで締めている。原健作も器用な人で、悪人をやらせても、善人をやらせても何でもこなす。むしろこの映画では悪人かと思わせなが、実はというのがあって、むしろ悪人風に見えるところが起用された理由であろう。
女優陣の出番は少ないが、浦里はるみの粋なお姐さん、雪代敬子、桜町弘子などのお嬢さんなど魅せてくれる。植木千恵も可愛い芝居を見せてくれる。
ストーリーも絵図面が主役で、物語の筋立てをそれによって悪事の本質を推測しながら見せ場に導いていく手法がいい。