緋ざくら大名

ひざくらだいみょう|Tatooed Lord|----

緋ざくら大名

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レビューの数

5

平均評点

67.3(15人)

観たひと

27

観たいひと

3

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル 時代劇
製作国 日本
製作年 1958
公開年月日 1958/1/29
上映時間 58分
製作会社 東映京都
配給
レイティング
カラー モノクロ/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督加藤泰 
脚色斎木祝 
原作山手樹一郎 
企画辻野公晴 
藤川公成 
撮影松井鴻 
美術角井博 
音楽高橋半 
録音墨関治 
照明福田晃市 
編集宮本信太郎 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演大川橋蔵 松平千代三郎
大川恵子 鶴姫
故里やよい お松
大河内傳次郎 北崎外記
波島進 松平越中守
杉狂児 丹波内蔵助
尾上鯉之助 藤尾圭之介
岡村文子 おたみ
立松晃 北条紀五郎
千秋実 浅吉
岸井明 小林平太郎
富久井一朗 五十嵐富太郎
香島ラッキー 円助
ヤシロセブン ぴん助
野々浩介 素天堂典斎
岸田一夫 久八
太田優子 おかつ
団徳麿 甚さん
佐々木松之丞 源さん
常盤光世 越中守の奥方
赤木春恵 舟宿のおかみ
浜田伸一 舟頭徳
加賀邦男 馬場三十郎
浦里はるみ 菊島
津村礼司 亀田半蔵
明石潮 北条信濃守
北村曙美 
千舟しづか 五月
海江田譲二 石倉角之進
中野文男 浪人河合
小金井修 浪人堀内
浅野光男 浪人植村
八汐路佳子 お米
大文字秀介 なきめの金兵衛
山内八郎 中盆
中村時之介 市村田五郎
島田秀雄 木戸番
若水美子 お照
尾上華丈 門番

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

家の光に連載された山手樹一郎の原作を斎木祝が脚色し、「黄金の伏魔殿」の脚色者加藤泰が監督、「竜虎捕物陣二番手柄 疾風白狐党」の松井鴻が撮影した時代もの。主演は「任侠東海道」の大川橋蔵、尾上鯉之助、「忍術水滸伝 稲妻小天狗」の満里はるみ、「神変麝香猫」の大川恵子。助演は大河内傳次郎、故里やよい、波島進など。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

桑名十一万石松平家の次男坊千代三郎は、押しつけられた縁談を嫌って家を飛びだし、浅草の掛小屋で太鼓叩きを手伝って暮していた。鶴姫という北条五万石の姫君が悪侍に追われて掛小屋に逃げこんできたのを救い、千代三郎は彼女を自分の住い“いただき長屋”へ連れて行った。鶴姫は家老北崎が亡君の遺言によって、松平家の次男坊を婿と定めたのを嫌い逃げだしたのだ。彼女の親せき筋の紀五郎が姫を自分のものにし、北条家の当主になろうと画策していた。長屋に姫を寝させ、千代三郎が相棒とお松を連れて外へ出た時、再び例の悪侍たちに襲われたが、簡単に打ちのめしてしまう。紀五郎一味によって北条家当主信濃守は毒殺され、北崎外記らは刀を奪われて監禁された。紀五郎一味は鶴姫を探し求めた。鶴姫は長屋から姿を消し、千代三郎も彼女の姿を求めて町中駈け廻った。一味に捕われかけた姫を救い、長屋にとって返すと、再び紀五郎一味が待ち伏せていた。立ち廻り。一味は滅び去った。そこへ、忠臣藤尾圭之介に救い出された外記も駈けつけた。千代三郎は名も告げずに立ち去った。鶴姫は涙で見送った。二人は自分たちが許婚者同士であることを知らないのだ。その婚礼の日、二人は式に出ようとせず、それぞれ相手を求めて“いただき長屋”へ駈けつけた。そうして、すべてが判り、二人はそのまま、そこで、式を挙げたというわけである。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1958年3月下旬号

日本映画批評:緋ざくら大名

1958年2月上旬特別号

日本映画紹介:緋ざくら大名

2024/03/03

2024/03/15

48点

テレビ/有料放送/東映チャンネル 


前半快調、後半腰くだけ

前半の展開はなかなかのもので、これは山手樹一郎の原作が貢献しているのだろう。親が決めた縁談を嫌って藩を抜け出したお姫様(大川恵子)が芝居小屋に紛れ込んで、舞台のお囃子を手伝っている若侍(大川橋蔵)に好意を抱くようになる。この若侍は何やら身元を隠している模様。
この辺りで類型的な展開の予想を立ててしまうのだが、普通は底が割れると面白さは半減するものだが、観客の先回りをして、若侍の身元を早めに明かしてしまう話の展開となる。身元を隠すについてはもっともらしい事情も設けられていて、偶然すぎないような工夫がみられる。
それにしても、意外に早く種明かしをしてしまったら、その後の話をどう引っ張るのだろうと新たな期待も生まれるのだが、類型破りの工夫はここまでで、その後の展開はあまり面白くならない。海江田譲二演じる雇われ浪人が悪家老(加賀邦男)に加担して子分を連れて右往左往するのだが、モタモタしていて話の先が読めてしまう。話の先がほぼ読めているのに、悪家老一派と若侍一派(橋蔵の他に千秋実、藤田進)との攻防戦が長々と繰り広げられて、単なるチャンバラを延々と見せる映画になってしまった。
調べてみると、この映画が封切られた1957年(昭和32年)は1月だけでも、橋蔵はこの映画を含めて3本出演しており、多忙の中で撮り上げられた粗雑さが見えてくる。加藤泰監督作品としては東映入社間もない習作時代の一つになっていて、本領発揮はこの数ヶ月後に公開の「風と女と旅鴉」そして「浪人八景」まで待つことになる。

2020/12/20

2024/03/14

75点

選択しない 


東映時代劇の見本のやうな娯楽作

 大川橋蔵主演、1958年公開の「緋ざくら大名」であります。原作は明朗時代劇の代名詞・山手樹一郎。監督は加藤泰、脚色は斎木祝、音楽は高橋半といふ顔ぶれ。

 桑名松平家の次男坊・千代三郎(大川橋蔵)は、さるお姫様との縁談を嫌ひ、家を飛び出して庶民と共に暮らしてゐます。浅草の芝居小屋で太鼓なんか叩いて気楽なものです。一方北条家のお姫様・鶴姫(大川恵子)もやはり縁談を押し付けられ、逃げ出しました。家来が追つてきますが、居合せた千代三郎が匿ひます。

 北条家ではワル家臣の馬場三十郎(加賀邦男)が、鶴姫の親戚筋の紀五郎(立松晃)を北条家当主とすべく暗躍、現当主の信濃守(明石潮)を毒殺します。明石潮はこんな役柄が多い。その責を北崎外記(大河内傳次郎)になすりつけ、幽閉します。後は鶴姫を力づくでも連れ戻すだけ。しかし千代三郎がそれを阻み、長屋での大立ち回りで撃退するのです。

 北崎外記も、忠臣・藤尾圭之介(尾上鯉之助)の働きで救出され、目出度く一件落着。結局千代三郎と鶴姫は定められた政略結婚に臨みますが、式の直前になつて二人とも逃げ出してしまふ。千代三郎と鶴姫は既に互ひを想ふ仲になつてゐたのです。夫々が相手を求めて長屋で再会する二人でしたが、実は両家が決めた縁談と云ふのは......(以下予想通り)

 原作が山手樹一郎なので、どう演出しても明るくなる題材。若様と姫様が夫々の縁談を嫌つて逃げ出すと云ふ展開が、ほぼ結末が予想できる物語です。橋蔵もやんちやな若様を愉しさうに演じ、ファンサ―ヸスに努めてゐます。相手役の御俠な大川恵子も適役。
 脇を固める尾上鯉之助、波島進、千秋実、杉狂児らも盤石の演技を見せます。故里やよいも橋蔵への淡い想ひを秘めた好演。大河内傳次郎は余り役に立ちません。

 ワル側は加賀邦男、立松晃、海江田譲二、浦里はるみらですが、もう一枚カシラに進藤英太郎や山形勲級が欲しいところです。ところで激しく同情するのが、お照役の若水美子。大川恵子の我儘により命を削る思ひをしました。鶴姫は彼女に特別の褒賞を与へて頂きたい。

 加藤泰も敢てローアングルなどの個性は返上して、明朗東映時代劇の一作として製作した感じです。1958年と云へば、日本の映画人口がMAXに達した年。空前の11億2千万人と云ふ動員数を記録しました。本作も映画が娯楽の王様だつた頃の波に乗つた、誰もが幸せな気分になるシャシンと申せませう。通俗で良いのです。志の低い「低俗」は困りますが。

2016/08/23

2016/10/07

80点

映画館/東京都/東京国立近代美術館 フィルムセンター 


文句なしに幸福な映画

フィルムセンターの加藤泰生誕100年記念特集、28本目。10年前にNHK-BSで放送された際に観た事があった「緋ざくら大名」は、今回の特集に合わせてニュープリントされた版の上映でしたが、「風と女と旅鴉」ほどボヤけてはいなかったものの、白と黒のコントラストが弱かったことは事実で、くっきり鮮明な画面という訳ではありませんでした。
中身は、橋蔵・恵子の大川コンビが主演する東映らしい痛快娯楽劇で、筋書の概ねは知っていながらも、大川恵子に降りかかる困難と立ち向かう彼女を観ているだけで頬が弛む、大好きな映画です。
主人公・橋蔵は、実は桑名家の次男坊ながら、無理矢理養子縁組で結婚させられることに反発し、今は長屋暮らしをしながら、芝居小屋の太鼓叩きをしているという、呑気な男です。そして橋蔵が働く芝居小屋に、大川恵子が海江田譲二ら浪人たちに追われて飛び込んできて、橋蔵に助けられます。大川恵子もまた、無理矢理押し付けられた結婚話に反発して、家を飛び出してきたお姫さまです。大川恵子は橋蔵に連れられて長屋暮らしをするうち、橋蔵に惹かれるようになります。観客の誰もが簡単に予想できる通り、橋蔵と大川恵子が嫌がっている縁談の相手は、実はお互い同士なのであり、ラストでようやくそれが明らかになるという、明朗時代劇です。
長屋仲間で居合抜き大道芸をしている故里やよいが、橋蔵を密かに想っているものの、大川恵子の存在によって恋を諦めざるを得なくなるあたり、加藤泰らしい女性像として成立していますし、悪者でありながら、時折人間臭い味を出していた海江田譲二や彼の仲間の浪人たちは、最終的に殺されることなく、長屋住民たちに袋叩きに遭うだけに止められ、命を奪われるのは、大川恵子の藩で謀反を起こそうとしている次席家老・加賀邦男とその配下だけです。橋蔵が、浪人たちと繰り広げるチャンバラの際には、観客にはっきりと峰打ちだとわかるように、刀の刃の向きを変えるという、律儀なところを見せるのも、加藤泰の細かな作劇です。
哀れにも命を落としてしまうのは、大川恵子の側近腰元・若水美子ですが、彼女が死ぬ場面には、加藤泰映画お馴染みの豪雨が降り注ぎます。
10年前にTVでこの映画を観た時、わたくしは“加藤のフィルモグラフィーの中でも幸福さという点ではピカイチと言えるかも知れず、観ている者を文句なしに幸福にしてくれる映画なのでした”と書いていますが、それと全く同じ言葉を今回も捧げておきます。

2016/08/11

2016/08/12

80点

映画館/東京都/東京国立近代美術館 フィルムセンター 


至福の時

「恋染め浪人」と同じく山手樹一郎の原作。当然明朗、勧善懲悪。そして恋愛。中でもコメディ要素は「清水港は鬼より怖い」のスベリがなく、格段に巧い。波島進との腕相撲に見られる予想の外し方。悪役の浦里はるみ、立松晃、加賀邦男らも、大河内らを殺さず、牢屋に押し込めているだけ。それだけに岡村文子が斬られてしまうのは哀れ。岡村文子が橋で佇む姿をローアングルで捉えたショットが美しく、突然の雨も加藤泰の必須アイテム。泰作品中、最高のハッピーエンド。まさに至福の時。

2015/07/17

2015/07/18

65点

テレビ/有料放送/東映チャンネル 


大名の子は我が身であって我が身でない

お家騒動と逃げ出した姫および若さまの恋物語。と書くと簡単そうだが、それぞれ複雑な事情がある。
大川橋蔵はさる大名の次男坊で他家に養子に行くことになっているが、乳母の元で気楽な暮らしをしている。一方大川恵子のお姫さまは親が一方的に定めた婿をいやがって家出する。その隙にお家乗っ取りを企む連中が暗躍するが、若様の活躍で阻止する。姫および若様は互いの素性も知らずに思い合う仲だが、兄の言った「大名の子は我が身であって我が身でない」という言葉に従い一旦はそれぞれの家に帰り、婚礼の日を迎えることになる。しかし両名とも最後には逃げだし元の長屋でばったり会ったところで家来達が追いつき、両家の若様と姫様であることがわかりめでたしめでたしとなる。
加藤泰得意のローアングルはあまり見られなかったが、若様と姫様の恋物語を美しく描いているのと、例によって橋のシーンは多く出てくる。
娯楽映画として十分楽しめる。