恋染め浪人

こいぞめろうにん|----|----

恋染め浪人

レビューの数

3

平均評点

66.6(7人)

観たひと

14

観たいひと

5

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル 時代劇
製作国 日本
製作年 1957
公開年月日 1957/1/22
上映時間 84分
製作会社 東映京都
配給
レイティング
カラー モノクロ
アスペクト比
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督加藤泰 
脚色結束信二 
原作山手樹一郎 
企画藤川公成 
撮影三木滋人 
美術塚本隆治 
音楽高橋半 
録音東城絹児郎 
照明田中憲治 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演大友柳太朗 夏目鮎太郎
薄田研二 生田頼母
長谷川裕見子 美穂
花柳小菊 江戸屋紫
松風利栄子 おりえ
若水美子 およし
光岡早苗 おはや
有島三都子 おみつ
岸井明 亀助
波島進 松代宗之助
中野雅晴 杉本省平
香川良介 国分屋久兵衛
円山栄子 おさと
梅村直次郎 沢村常右衛門
河村満和 及川安之助
中野市女蔵 池野平八
藤木錦之助 石坂弥八郎
波多野博 大塚小助
石井麗子 
原健策 小倉内記
浦里はるみ お牧の方
立松晃 松代家邦
吉田義夫 黒木滄庵
山口勇 浅田伝右衛門
沢田清 山谷の今七
大文字秀介 川島狼之助
遠山恭二 中島
中野文男 大坪
海江田譲二 赤沢一平
加藤浩 高倉伊之助
富久井一朗 岡田理介
小金井修 岩野文五郎
岸田一夫 作造
中村時之介 弥七
山田光子 近所の女房
太田優子 長襦袢の女
立岡光 番頭久七

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

山手樹一郎原作“恋染笠”より「魔像(1956)」の結束信二が脚本をかき、久方ぶりで加藤泰が監督にあたる。撮影は「新諸国物語 七つの誓い・三部作」の三木滋人。主な出演者は「大江戸喧嘩纏」の大友柳太朗、「任侠清水港」の花柳小菊、長谷川裕見子、「新諸国物語 七つの誓い・三部作」の浦里はるみ、「旗本退屈男 謎の紅蓮塔」の薄田研二、ほかに原健策、香川良介、吉田義夫、山口勇、岸井明、中野雅晴、円山栄子、若水美子など。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

江戸浅草の春。浅田道場のゴロッキ剣客らに難題をつけられた女手妻師江戸屋一座の座頭紫太夫。彼女の急場を救ったのは、鮎さんこと、夏目鮎太郎という着流しの浪人者。紫が逃げ去ったのを見届け、足にまかせて追手をマイたが広法寺の墓地で、麻薬に冒された美しい武家娘を救う。麻薬のため正気も失った娘を仮にお夢と名付け、自らが身を寄せる下総屋で看病するが、浅田道場の連中はここにも目を付ける。黒幕は誰?と疑う鮎太郎は、下総屋久兵衛と娘おきとにお夢を託し、道場の連中を叩き伏せる。だが一瞬の差で久兵衛は斬られる。そこに現われた松本省平と名乗る侍は、お夢の身許を語る。彼女の本名はお美穂、鮎太郎が前に仕えた松代藩の家老生田頼母の娘である。背後に何かあると睨んだ鮎太郎は裏面の醜くさに撫然としつつ、省平の連れ帰るお美穂を見送る。紫が父を失ったおさとを引取り、一座は信州へ旅立つことになるが、そこに訪れたお美穂と父の頼母。頼母の語る真相は次の通り……。現藩主家邦は愚君で、すべては奥方お牧の方と、家老小倉内記の意のまま。図に乗った内記ほお牧の方と不義を働き、先君の弟完之助をさしおき、二人の間の子を世継ぎにと企む。頼母の諌言にも、家邦は美穂を側女にすれば家督を宗之助にゆずると言い放つ。お家のためと頼母は娘を差出そうとしたが、これを知った内記一味は腹心黒木滄庵を使い、美穂の毒殺を計ったのだ。協力を決意した鮎太郎は紫一座の助力を得て松代藩国許へ乗り込もう止したが、滄庵に見破られ道場の剣客一味の襲撃。雷雨の中にお美穂をかばい、宇津峠の山中に迷いこんだ鮎太郎。雷雨の衝撃でお美穂は正気を取戻すが滄庵の罠で千丈の崖から真逆さま。一方、松代藩では隠退を決意した家邦が突然の江戸入り。江戸屋敷内で内記、お牧の方、滄庵らの計画通り世継ぎの儀が進められる。そこに姿を現わしたのは宗之助君。彼の合図で鮎太郎と美穂も現われ正邪入り乱れての大乱闘。家邦を斬った内記始め一味を倒した鮎太郎は、宗之助世襲で納った松代家を後に、滄庵の短銃に倒れた紫を偲びつつ一人、旅に出た。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1957年2月下旬号

日本映画批評:恋染め浪人

1957年2月上旬特別号

日本映画紹介:恋染め浪人

2023/11/22

2023/11/22

70点

VOD/U-NEXT 


加藤泰の秀作

長回し・ワンカットワンシーン、テンポのいい会話。歌謡映画。俯瞰撮影。加藤泰の魅力満載の映画。女の自己犠牲。狂女。女の映画

2016/08/10

2016/09/28

70点

映画館/東京都/東京国立近代美術館 フィルムセンター 


思い入れを込めた人物像

ネタバレ

フィルムセンターの加藤泰生誕100年記念特集、21本目。初めて観た「恋染め浪人」は、白と黒のコントラストがぼやけて全体が灰色っぽく見えるというプリント状態で、フィルムセンターのニュープリントにしてこの状態だという事は、東映によるネガの保存が悪いという事であり、残念ではありましたが、まあ観られただけで有難いことではあります。わたくしはこれで加藤泰の長篇はコンプリートしました。
東映に移籍したのち、1年間は佐々木ズーのもとで助監督をしていた加藤泰が、ようやく再び監督としてメガフォンを握ることになった「恋染め浪人」は、ある屋敷で着物姿の娘が何やら薬を盛られたらしい様子で倒れ、吉田義夫扮する怪しげな侍の指揮のもと、岸田一夫と中村時之介がその娘を棺桶に入れ、二人で墓地に行って埋めようとしたところで、主人公・大友柳太朗に見つかり、大友が娘を連れ帰るというオープニングです。パンや移動を駆使した長回しで場面を組み立てつつ、なめらかな語りに腐心しているように思える演出です。
大友柳太朗は自宅で医者をやっている浪人という設定で、そんな男が娘を助けるのですから、ご都合主義も極まれりという感じですが、山手樹一郎原作を映画化した東映痛快娯楽時代劇ですから、こんなご都合主義は当たり前のことに過ぎません。助けられた娘・長谷川裕見子は、吉田義夫らに盛られた麻薬のせいで記憶を失っており、大友は彼女のことを“お夢”と名付けて自宅に置いて療養させます。
大友柳太朗が次に出会うのが、行きつけの酒場で海江田譲二ら道場侍に絡まれて困っている旅芸人・花柳小菊です。これ以降、花柳は大友のことを想い続け、最終的には大友を助けるために自分の命を落とすに至るという、加藤泰得意の、情念を燃やす女性像を体現します。
海江田譲二が所属する道場の主・山口勇は、吉田義夫の配下に当たり、長谷川裕見子を埋めようとしていた岸田一夫や中村時之介も山口勇の道場に加わる侍です。そしてそんな吉田義夫を操る黒幕が、某藩次席家老の原健策で、その原は、自堕落な藩主・立松晃を蔑にして、その藩主の妻・浦里はるみと通じ、浦里に原が産ませた息子を藩主の子だとして、彼が跡継ぎになるよう画策し、それに抵抗する筆頭家老・薄田研二を排斥しているという設定で、その薄田研二の娘が、記憶喪失になっている長谷川裕見子なのでした。まさにご都合主義!
さらに、主人公・大友柳太朗は、以前この藩に仕えていて、前藩主の弟で、次期跡継ぎ候補の筆頭と目されていた波島進とは、肝胆照らし合う親友という設定であり、藩の重鎮だった大友の父親が罠にはめられて処刑されたことを機に、大友は傷心のまま浪人となっていたのであり、必然的にこの藩のお家騒動に飛び込んでゆきます。
結局、長谷川裕見子は記憶を取り戻し、父・薄田研二とともに藩の癌である次席家老・原健策の追い落としに加わろうとするものの、原のほうは藩主の妻・浦里はるみとともに、遂に藩主・立松晃を殺害するという暴挙に出るのであり、乗り込んだ大友は、原らの悪事を暴いて斬り殺し、後を薄田や波島進に託すという展開。
大友柳太朗が長谷川裕見子と某藩の国許に行った際は、丘の上に立つ屋敷に案内されたのち、吉田義夫ら悪の一味の企みによって、その屋敷の土台ごと丘から崩落されるという、派手な場面も用意されるなど、まさに波乱万丈の痛快娯楽が展開しますが、全ては東映調で丸く収まるのであり、加藤泰自身は“当時の東映時代劇路線をふみ外さず、極められた予算と日数でちゃんと撮りあげる事が出来たと言へる仕事である”と総括しているそうです。
チャンバラの最中に“ずいずいずっころばし、ゴマ味噌ずい”と歌を口ずさむのが大友柳太朗の癖で、大友の下手糞な歌に苦笑しながらも、観る者はこの人間臭いキャラクターに愛着を覚えてゆくのであり、ラスト、この大友の身代わりになって死んでいった花柳小菊のことを想いながら、大友が再び旅に出る場面では、大友と天国にいる花柳が“ずいずいずっころばし”をデュエットするのが、なんとも微笑ましいのです。物語上でのヒロインは長谷川裕見子ですが、加藤泰の思い入れは明らかに花柳小菊に傾いており、彼が思い入れた人物を力込めて描く時、映画は輝くという、加藤泰映画ならではの魅力が、この東映第1回監督作でも発揮されています。

2016/08/10

2016/08/11

75点

映画館/東京都/東京国立近代美術館 フィルムセンター 


大友柳太朗の魅力炸裂

加藤泰は最初のショットでみごとに物語へ誘う。本作は毒を盛られた長谷川裕見子が倒れるショット。そして陰謀を匂わし、酔客にからまれる花柳小菊を助ける大友柳太朗、口ずさむ「ずいずいずっころばし」はラストで活きる。大友の明朗さ、怒りの表情、彼の魅力を引き出している。当然、雨もあるが、加藤泰としては特段悪くもないという程度の作品。