貿易会社の社員・木崎(宇津井健)は、専務の浅沼(藤田進)に頼まれ、書類を社長に届けます。その晩社長は何者かに殺され、更に会社の金庫から1500万円が盗まれるのです。容疑は木崎にかかり逮捕され、金庫の鍵を預かつたとして木崎の恋人・夏岐(前田通子)も共犯と目されました。
これは浅沼が初めから仕組んだ芝居で、子分の野口(丹波哲郎)が木崎に扮しワザと目撃されるやうに細工したのであります。浅沼は邪魔な木崎を葬り、夏岐を自分のモノにせんと企んでゐたのでした。夏岐は浅沼の渡米に同行させられ、船上で襲はれます。夏岐は逃れる際に誤つて海に落ちてしまひます。
無人島に流された夏岐は、五人の男に救はれます。彼らも難船してこの無人島に漂着してゐたのです。夏岐を巡つて彼らは対立、彼女をモノにしやうと迫るワルを、正義漢・雄三(天知茂)が救ふのです。そして夏岐は海底で大量の真珠貝を発見します。
その後外国船に助けられた夏岐は真珠貝で財をなし、ヘレン南と名乗り雄三と共に日本に凱旋帰国するのであります。死刑が決まつた木崎を救ひ、浅沼たちに復讐をする為に......
新東宝の大蔵貢は社長に就任するや、それまでの文藝路線を捨て、大衆に受ける俗悪な作品を連打しました。前田通子をヴァンプ女優として抜擢、当時は乳首を出すのは御法度だつたので、ぎりぎりの水着で助兵衛男どもを煽つたのです。そして後ろ姿ながら、日本の女優が初めて全裸を晒すシーンにも前田は果敢に挑戦しました。
当然俗悪な映画として「良識派」からは叩かれましたが、客が入つてナンボだと開き直る姿勢を示し、まあ個人的にはこれも一つの選択であらうと存じます。
作品自体は前述の如く、女モンテクリストの物語であります。役者も案外揃つてゐます。前田の恋人に宇津井健、妹に三ツ矢歌子、協力者に天知茂、ワル側の専務に藤田進(こんな純然たる悪役は珍しいのでは?)、その手下に丹波哲郎といふ塩梅。
まあ、暇があれば観ても良いかな、といふところか。わたくしのやうな新東宝映画愛好家なら必見と申せませう。