怨霊佐倉大騒動

おんりょうさくらおおそうどう|Appeal on the Cross|----

怨霊佐倉大騒動

レビューの数

1

平均評点

57.8(5人)

観たひと

8

観たいひと

2

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル 時代劇
製作国 日本
製作年 1956
公開年月日 1956/6/27
上映時間 100分
製作会社 新東宝
配給 新東宝
レイティング
カラー モノクロ
アスペクト比
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督渡辺邦男 
脚本渡辺邦男 
企画竹中美弘 
製作大蔵貢 
撮影渡辺孝 
美術梶由造 
音楽山田栄一 
録音鈴木勇 
照明平岡岩治 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演嵐寛寿郎 宗五郎
花井蘭子 妻きん
大沢幸浩 長男宗平
上田明男 次男源之助
松本直明 三男喜八
小野田高久 四男六之助
中山昭二 堀田上野介正信
阿部九洲男 堀田玄蕃
中村彰 池浦主計
鮎川浩 金沢丈右衛門
広瀬恒美 稲葉十郎衛門
沢井三郎 岡村要蔵
三浦恭二 和田兵衛門
加藤章 名倉甚太
山室耕 伝蔵
高田稔 小島式部
若柳敏三郎 山崎庄内
岡譲司 教全和尚
鳥羽陽之助 儀兵衛
宇治みさ子 八重
横山運平 甚兵衛
岬洋一 忠蔵
原文雄 半十郎
国創典 重右衛門
広瀬康治 百姓
花岡菊子 女房よし
江川宇禮雄 警固頭

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

佐倉宗五郎の義挙で有名な佐倉義民伝を新角度から眺めた時代劇大作。「金語楼の兵隊さん」のコンビ渡辺邦男が脚本・監督、渡辺孝が撮影を夫々担当した。主な出演者は「疾風!鞍馬天狗」の嵐寛寿郎、「妻の心」の花井蘭子、「暴力の王者」の中山昭二、「若さま侍捕物帳 魔の死美人屋敷」の岡譲司、「金語楼の兵隊さん」の宇治みさ子など。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

佐倉両総十二郡の領主、堀田上野介正信は、苛酷な取立を行い、領民は苦境に陥っていた。名主たちの嘆願をよそに、城代家老堀田玄蕃は年貢米の二割増額を申付けたが、更に、桝屋の儀兵衛の娘八重が正信の側室であるのを利用して儀兵衛に不正の桝を作らせ、年貢米を偽り取ろうとした。城下公津村の名主宗五郎は、虐げられる百姓の味方となって今では百姓の神様とまで云われていた。年貢米納入の日が来た。役人の桝に不正を見つけた百姓たちは一斉に騒ぎ出し桝を奪った。だが、それも束の間、玄蕃は役人や捕使に命じ、証拠の桝を壊させ、その上、桝を作った儀兵衛を殺し、正信の側室八重には宗五郎が下手人だと偽った。怒りたった百姓たちは教全和尚の仏頂寺に竹槍や手斧を持って集り、敵わぬ迄も城へ討入ろうと喚声を上げた。だが、宗五郎は犬死を戒め、江戸屋敷にいる城主正信に直接嘆願を試みようと一同にはかった。やがて宗五郎たち十数名の百姓は連れ立って江戸屋敷を訪れ、窮状を訴えた。しかし、父殺害の犯人を宗五郎と信ずる八重の助言で、正信は逆に百姓たちを召捕ろうとした。宗五郎たちは危うく難を逃れたが、かくなる上はと、大老酒井雅楽守に路上から嘆願書を差出した。更に意を決した宗五郎は今度は将軍直訴を企て、一夜故郷へ帰り妻子に別れを告げて来た。将軍の寛永寺参詣の日、教全和尚の計らいで宗五郎は直訴の役目を果した。村に帰った宗五郎は、忽ち佐倉城の役人に捕り、妻や幼い子らとともに磔にされ刑場の露と消えた。その夜、城内で処刑の模様を聞く正信の眼前に突如、宗五郎の亡霊が現われた。奸計を漸く知った八重は正信に玄蕃の悪計を告げて自害、正信も初めて百姓たちの窮状を知り、一味を捕縛した。刑場跡に宗五郎の祠が建てられ彼の死も無駄にはならなかった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1956年8月下旬号

日本映画批評:怨霊佐倉大騒動

1956年7月下旬号

新作グラフィック:怨霊佐倉大騒動

1956年7月上旬夏の特別号

日本映画紹介:怨霊佐倉大騒動

2022/10/09

2022/10/18

66点

その他/DVD 


嵐寛寿郎が時代劇の大御所として活躍していた最後の主演作品は「風雲新撰組」で、ほぼ60年前、1961年に公開されている。それ以後は東映の「網走番外地」などで脇に回っている。

1956年制作のこの映画は歌舞伎でも演じられる佐倉宗五郎の物語である。時代劇の大御所だった嵐寛寿郎は剣に強い浪人などを演じていたので、この映画のように農民を演じているのは極めて珍しい。
下総国(千葉県)佐倉藩の城代家老(阿部九洲男)による悪政で苦しめられた農民の代表となって、宗五郎が窮状を将軍に直訴したため、宗五郎本人のみならず、妻子もろとも処刑される悲劇を扱っている。

救われない暗い話であるが、監督脚本の渡辺邦男が快調なテンポで話を進める。舞台で名高い「仁兵衛渡しの場」もそつなく取り込まれている。いつも老人役でいい味を出す横山運平が斧で鎖を断ち切って船を出し宗五郎を助ける見せ場を作っている。

これだけの暴政を敷いた原因に、側室八重の方(宇治みさ子)が藩主を唆(そそのか)していたという背景が描かれている。ファムファタールによる復讐劇の味わいが加わってエンタテインメント性が強まる。
民の窮状を想っての訴えに対して佐倉藩は家族皆殺しの極刑で臨んだために、藩主が改易にされる。宗五郎の霊を鎮めるために佐倉霊廟として祀られたという逸話が後日談として描かれる。
藩主の暴政を唆す側室を宇治みさ子が珍しく悪女役で好演している。

農民の群衆の中に万里昌代が花岡菊子のやや後ろにワンカットだけ見られる。

ナンセンスコメディ「森繁の新婚旅行」で快調な演出ぶりを見せた渡辺邦男が、その5ヶ月後(1956年6月)に全く異なるジャンルのお家騒動を、これまた快調に演出している。やっぱりこの人は職人監督として巨匠なんだろうな。