同じ松林宗恵監督の作品とは思えない(!)。殺伐としたアバン・タイトルがかなりショッキング。最初から最後まで、もう目が離せない。
部落差別という深刻な社会問題を背景に、その出身者である若い男女の悲恋、ヤクザによる弱き者への制圧、法の力の限界等々を巧みに絡め、見応えある作劇を展開。人間が、真に人間として生きて行くとは、どういうことかを問う。
同じ松林監督の「人間魚雷回天」(1955年)、鈴木英夫監督の「彼奴を逃すな」(1956年)等でお馴染み、木村功・津島恵子のペアの演技ももうすっかり熟練したような印象を受ける。特に木村が素晴らしい。ヤクザ稼業から足を洗い立ち直ろうとするも、とうとう自分自身の弱さに負けてしまい、追い詰められ、弱音を吐き散らす木村の名演は泣かせる。
物語はユニフォーム姿の子どもたちが元気いっぱいに野球の練習をする場面で幕を閉じるが、決してハッピー・エンドにはなっていない。