真昼の暗黒

まひるのあんこく|Darkness At Noon|Darkness At Noon

真昼の暗黒

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レビューの数

20

平均評点

77.6(81人)

観たひと

120

観たいひと

14

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1956
公開年月日 1956/3/27
上映時間 122分
製作会社 現代ぷろだくしょん
配給 独立映画
レイティング 一般映画
カラー モノクロ/スタンダ-ド
アスペクト比 スタンダード(1:1.37)
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 モノラル

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督今井正 
脚本橋本忍 
製作山田典吾 
撮影中尾駿一郎 
美術久保一雄 
音楽伊福部昭 
録音空閑昌敏 
照明平田光治 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演草薙幸二郎 植村清治
松山照夫 小島武志
矢野宣 青木庄市
牧田正嗣 宮崎光男
小林寛 清水守
左幸子 永井カネ子
内藤武敏 近藤弁護士
菅井一郎 山本弁護士
中村栄二 及川裁判長
下元勉 西垣幸治巡査
加藤嘉 大島司法主任
清水元 浅山署長代理
織田政雄 皆川刑事
陶隆 亀山刑事
市村昌治 井上刑事
織本順吉 杉田刑事
久松保夫 警察医
山茶花究 白木検事
芦田伸介 吉井判事
三田国夫 立石判事
戸田春子 愛子
相生千恵子 松尾夏江
飯田蝶子 植村つな
鈴木洋子 植村良子
日高ゆりえ 永井辰子
新山幸三 永井哲夫
北林谷栄 宮崎里江
玉川伊佐男 清水勉
城久美子 清水道子
武田正憲 清水磯吉
夏川静江 清水保子
山村聡 雄二
野浜建 仁料孫吉
於島鈴子 仁料たね
嵯峨善兵 高橋由造
畑中蓼坡 青木の老爺
五月藤江 青木の老婆
小笠原章二郎 竹内甚造
殿山泰司 松村宇平
原芳子 宇平のおかみさん
島田屯 久保田勇
利根司郎 看守
石島房太郎 安原弁護士

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

弁護士正木ひろしの著書「裁判官--人の命は権力で奪えるものか」より、「生きとし生けるもの」の橋本忍が脚本を書き、「由起子」のコンビ、今井正が監督、中尾駿一郎が撮影を担当した。主なる出演者は新人群として、民芸の草薙幸二郎、中芸の松山照夫、牧田正嗣、俳優座の矢野宜、新協の小林寛の他、「神阪四郎の犯罪」の左幸子、「ビルマの竪琴(1956)」の内藤武敏、北林谷栄、「赤ちゃん特急」の飯田蝶子、「早春」の山村聡など。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

瀬戸内海に近い三原村で小金を貯めこんでいるという噂のある仁科老夫婦が惨殺され、その翌朝、皆川、矢口両刑事は笠岡市の遊廓から小島武志を検挙した。ジャンパーの血痕、指先の血糊--動かぬ証拠をつきつけられた小島は流石に色を失っていた。だが捜査本部では単独犯では片づけられない種々の事情から判断して、小島の口から共犯の事実を吐かせようと躍起になった。そして小島と同じ土工仲間の植村、青木、宮崎、清水の四人が浮び上った。連日の厳しい訊問に心身共に疲れ果てた小島は、夢遊病者のように四人も共犯だと自白させられた。緊急手配によって四人は次々に挙げられ、植村の内妻カネ子も取調べを受けた。一年後の秋、食堂の給仕女として働くカネ子は、そこではからずもこの事件を担当する近藤、山本両弁護士に逢い、植村の証しを立ててくれるようにと懇願し、差入れのために乏しい給料の中から数枚の紙幣を渡すのだった。結審の日、多数犯を強調する鋭い検事の最終弁論を、訥々と反発する近藤弁護人の額には、脂汗が滲んでいた。彼は小島の遊興費欲しさの単独犯だと主張するのである。その主張は理路整然とし、今や小島の単独犯は動かすことのできない事実であるかに思われた。しかし、判決の日、小島のでたらめな陳述と西垣巡査の保身の証言のため、弁護人の努力、家族たちの嘆きをよそに、植村は死刑、小島は無期、青木は十五年、清水と宮崎は十二年の懲役が宣告された。複雑な気持で食事に出かける近藤弁護士は、最高裁判で闘う決意を固めていた。拘置所の面会室では、植村と母が顔を見合わせていた。黙って走り去る母の背後に絶叫した。お母さん、まだ最高裁判があるんだ」と。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1989年1月下旬号

VIDEO:スポット・ライト 「真昼の暗黒」

1964年増刊 シナリオ3人集 橋本忍・水木洋子・新藤兼人

橋本忍:真昼の暗黒

1959年11月上旬号

特集 映画と日本の政治 「真昼の暗黒」から「人間の壁」まで:日本映画の政治意識

特集 映画と日本の政治 「真昼の暗黒」から「人間の壁」まで:対立の中の人間像 「人間の壁」を見て

特集 映画と日本の政治 「真昼の暗黒」から「人間の壁」まで:政治小説と政治映画

1958年臨時増刊 目で見る日本映画の六十年

4・終戦から大型映画まで:「真昼の暗黒」その他

1957年2月下旬号

レットル・フランセーズ紙の「真昼の暗黒」批評:

1956年6月下旬号

旬報論壇:「真昼の暗黒」の行方-について

1956年5月下旬号

日本映画批評:真昼の暗黒

1956年5月上旬号

旬報論壇:「真昼の暗黒」の行方

1956年3月下旬号

特集批評 「真昼の暗黒」:リアリズムと娯楽性

特集批評 「真昼の暗黒」:裁判と偏見

特集批評 「真昼の暗黒」:この映画の社会性

特集批評 「真昼の暗黒」:新らしい大衆映画

特集批評 「真昼の暗黒」:官僚独善に対する追究

特集批評 「真昼の暗黒」:芸術家と「責任」の問題

特集批評 「真昼の暗黒」:弁護内容の表現が卓抜

特集批評 「真昼の暗黒」:素直な感動

日本映画紹介:真昼の暗黒

1956年2月下旬号

新作グラフィック:真昼の暗黒

1956年2月上旬ベスト・テン発表記念号

「真昼の暗黒」と今井演出:

1955年11月上旬号

シナリオ:真昼の暗黒 正木ひろし「裁判官」より

2020/08/03

2020/08/04

85点

選択しない 


振り切った迫力に押し切られます

現実に公判中の実話で、罪状が確定しない段階での、思い切った冤罪の告発という映画でした。八海事件の裁判は、この後も最高裁と高裁の間を2往復し、結審したのはこの映画の11年後になります。そういった事情から、いろいろと圧力がかかり物議もかもしたとのことでした。映画では、完全に冤罪という結論に振り切れており、警察の違法捜査の場面をこれでもかと流し続け、権力の横暴を訴え続ける形になっており、この映画の果たした役割も一定のものがあったのでしょう。

そういった、決意と気合の入っている映画だけに、凄まじい迫力を感じます。前半は、拷問の場面や警察の捜査の人権を無視した違法性が次々と描かれ、後半は冤罪を受けた家族の苦しみや、それでも警察組織の為に偽証をする巡査の葛藤など、心情に迫って来るエピソードで固められていきました。クライマックスは、近藤弁護士の最終弁論。雰囲気が変わって弁舌さわやか、被告たちからも笑いが出てくるといった雰囲気。その流れで無罪を確信する母親たち…。そしてラストの飯田蝶子の力強い場面は、プロレタリア映画のような、心情に突き刺さる迫力を思い出しました。

俳優さんたち、被告の5人は劇団からの新人俳優で固められています。草薙幸二郎が主人公格ですが、松山照夫が面白い演技をしていました。ベテラン俳優陣は、女優陣では飯田蝶子と北林谷栄が凄いですね。北林谷栄の目力はさながらジュディ・デンチみたいです。若手では何と言っても左幸子が可憐でした。男は悪役の刑事陣が前半大活躍ですが、後半の検事の山茶花究がいいですねぇ。ちょい憎まれ役が上手いです。そして、少しだけ出てくる豪華俳優陣。芦田伸介、山村聡、夏川静江などなど、ちらりと見かけました。映画史を見るような側面もありますが、社会派の迫力に触れたという感じがしました。

2020/07/05

2020/07/05

80点

購入/DVD 


権力という名の恐怖が不条理な冤罪を生み出す!

正義という名の裁判が果たして常に正しい判断を下せるのか⁈冤罪事件が起きる度に考えてしまう。実際に起きた事件を裁判中にもかかわらず映画化した脚本の橋本忍、今井正監督の強い憤りをひしひしと感じる。

2020/05/07

93点

VOD/YouTube 


真実かどうかは問題ではない

ネタバレ

実際に起こった八海事件を冤罪として告発した弁護士正木ひろしの原作を元に作り上げた作品で、当時まだこの事件は係争中であった為に相当物議を醸したという。
国家がその気になれば、個人の命など簡単に奪えるというとても恐ろしい内容である。
警察も検事も判事も沽券に関わるから、一度出した判決は簡単には覆さない。今のような科学捜査もなかった時代に、十分な証拠もなしに冤罪にさせられた人間は数多くいるのだろう。
ある老夫婦が惨殺された家宅に警察が捜査に入る場面から話は始まる。警察はおそらく強盗目的で、複数の人間による犯行だろうと断定する。
そして下宿にいたある男が血のついたジャンパーを所持していたことから警察は彼を拘束する。
小島というこの男は今でいうとサイコパスな人間になるのだろう。犯行を供述し始めるのだが、その場その場をうまく言い逃れするために生きているような男で、まるで先のことを考えいない。そして脅えきった様子ではあるものの、殺人を犯したことに対する罪悪感は全くない。
何でもないことのように犯行の様子を語る小島の姿がとても不気味だ。まず夫を斧で殺害し、妻を絞殺した後に夫婦喧嘩であると思わせるように偽装工作をした後に、盗んだ金を持って遊郭に行ったと自供する小島。
しかし警察はこの事件を複数犯の犯行であると決めかかっており、小島の供述を信用しない。他のメンバーを吐けと拷問する警察の連中。そうすれば死刑は免れるかもしれないと。
良心を持たない小島は自分が助かるために、植村、清水、青木、小島の名前を上げて、彼らに自分は協力しただけだという嘘の供述をする。
それぞれ前科のあった彼らは元々警察に睨まれていたこともあり、あっという間に逮捕されて犯人に仕立てられてしまう。
小島の供述を全面的に支持する警察は四人がどれだけ犯行を否定しようが自白するまでは容赦しない。
複数犯であるという自分たちの説が正しいことを証明するために、四人に拷問を繰り返す彼らの姿には観ていて怒りを覚える。
自白を強要するために絶えず身体的な苦痛を与えられれば、誰だって自分がやっていなくても自白してしまうだろう。
四人は罪を認めてしまい、新聞には大きく殺人者として彼らの名前が載ってしまう。そして四人には死刑判決が下される。
貧しいながらも何とか弁護士を立てて、被告の家族たちは彼らの無罪を主張しようとする。徹底した現場検証を行おうとするが、保身に走る警察官の嘘の証言などもあり、なかなか判定は覆らない。
しかし近藤、山本二人の弁護士の誠実な働きかけによって、次第に小島の供述には矛盾がたくさんあり、信憑性がないことが証明されていく。
二審での理路整然とした近藤の答弁には、四人の無罪を決定的にするような力強さと説得力があり、被告の誰もが無罪判決を確信した。
しかし下された判決はあまりにも無慈悲なものだった。判決を覆せるほどの決定的証拠がないということなのだろうが、逆に言えば死刑に出来るほどの決定的な証拠もひとつもないのだ。
確かに被告の四人に感情移入させられるような映画の作りになっているので、真相はこの時点では分からないのだが、明らかに判事は自分たちの面子を守るために判決を覆さなかったように感じた。
この事件さえなければ植村はカネ子という女性と結婚するはずだった。四人にはそれぞれの人生があり、また家族があった。
彼らの無実を信じる家族の姿が切実で、観ていて辛いものがあった。
色々と口喧嘩をするような仲だった植村の母親だが、息子が無事に帰ってくるよう何度もお参りする悲痛な姿に心を打たれた。
そして死刑判決が下りてしまった植村の顔を見て、耐えられなくなりその場を去ってしまう母親の悲しげな眼。
「まだ最高裁があるんだ!」という植村の悲痛な叫びでこの映画は終わるが、最悪の結末ではなく、それでもまだ希望が残っているのだと思わせるようなラストでもあった。
実際には長い裁判を経て四人には最終的に無実の判決が下されたという。しかし失われた彼らの人生は戻ってこない。
とても暗く重い内容だったが、もし自分が冤罪にかけられたとしたらどう闘えば良いだろうかと色々考えさせられる作品でもあった。

2020/04/09

2020/04/09

80点

購入/DVD 


時代を感じました

実際にあった冤罪事件を今井正監督、橋本忍さん、脚本で描く作品です!制作の段階でこの事件の裁判は、結審していなかったので、最初は、有罪か冤罪か判断を観た人に判断を任せるストーリーにしたかったそうですが、橋本さんがそれでは書けないということで「冤罪」と決めてストーリーを作っていったそうです。
製作者の思いがつまった作品になっているのでその当時の時代背景が判らないとステレオタイプに見えてしまいます。時代の空気を知るのって難しいですね。
途中で気になってきたのが、警察がこれだけ強硬に話を進めたのは、マスコミに発表してしまったからもあるのではないのでしょうか?新聞に関する登場人物がいなかったのが気になりました。
あの頃の新聞の風潮が判らないとこの映画が世間の風に乗っていたのか逆風だったのか判りませんでした。
登場する役者さんは、皆さん、ベテランになってからの活動しか存じてなかったので若い時の姿にびっくりしました。
演じる間合いは、若い時から変わりませんね。

2019/08/14

2019/08/18

70点

選択しない 


冤罪事件

ネタバレ

 実際の冤罪事件を取り上げた原作の映画化。映画公開時にはまだ事件の方は最高裁で係争中であったため公開を見送るようその筋から圧力があった由。配給会社にも圧力が加えられたが、それでも自主上映で公開したという。いかにも社会派、今井正監督らしいエピソードだ。
 確かに係争中の事件を、製作者サイドの類推から冤罪と断定し、その方向でドラマを作ってしまうというのはいささか乱暴に思える。でも逆に言えばそれぐらい当時の警察の捜査、取り調べが杜撰かつ強引であったとも言えそう。
 容疑者の苦し紛れの自白に乗せられた警察は4人の友人たちを共犯と断定。しかも殺人の主犯をその友人の一人に押し付けてしまう。結局彼は二審で死刑判決を受けることになる。
 映画はその警察のほとんど拷問とも言える取り調べの様子をとりわけ強調して描いている。裁判で「記憶にありません」を連発する証人(刑事)らのふてぶてしさを悪役同然に描いている。その描き方の徹底には4人が無罪であることの製作者側の確信が伺える。
 担当弁護士役の内藤武敏の思いやりのある表情と検事役山茶花究の冷酷さの対照をわかりやすく強調させ、どちらに正義があるかを絵で指し示す。
 演者でははからずも主犯とされてしまった植村(草薙幸二郎)の母と妻を演じた飯田蝶子と左幸子の哀切漂う演技も印象に残る。

2000年代

2019/04/17

70点

レンタル 


面目躍如

ネタバレ

この映画を観た上で昨今頻発する冤罪事件を考えると、これまで一体何人のひとが無実の罪で獄中に追いやられたのだろう、とついつい考えてしまい、暗澹たる気分に襲われる。またそれと同時に、警察も検察も裁判官も所詮はお役人なんだな、という今更ながらのことを再認識。そんな今尚通じる司法の矛盾と公権力の闇に真正面から迫った社会派監督今井正の面目躍如たる一編だった。