月形龍之介による「水戸黄門漫遊記」シリーズの第六作目。未見でしたが、東映チャンネルで放送してくれたので拝見いたしました。監督はいつもの伊賀山正徳、脚本は尾形十三雄、音楽はヴェテラン山田栄一ですが、画像と合つてゐなかつたり、矢鱈と五月蝿かつたりしてイマイチでした。
物語は伊達騒動のその後。詰め腹を切らされた原田甲斐の息子・大輔(坂東蓑助)は、陰で動いてゐたとされる水戸光圀(月形龍之介)を父の仇として復讐の機会を待つてゐました。そして騒動から実に二十年後、光圀が甲斐の居城付近にやつて来たのを知り、今こそ仇討のチャンスと虎視眈々と狙ひます。一行は助さん(月形哲之介)、格さん(加賀邦男)、緋牡丹お蝶(千原しのぶ)のお馴染みの面面。
この原田大輔、佝僂男に化けたり白頭巾になつたり手練れの刺客に扮したりして大活躍。流石の光圀もあはや露と消えるかと思はれましたが、やはり悪は栄えません。父の遺影の前で仇敵光圀を葬る筈が、自らが同じ道を辿る皮肉な最期となりました。クライマックスの乱闘シーンでは、格さんも刀を抜いてゐます。かうでなくてはいけません。
大輔の誤算は、弟・民蔵(江原真二郎)が操り人形にならなかつた事。江原は(新人)とのクレジット入りで、実に初々しい演技でした。アイドルつぽいです。
テレビの水戸黄門シリーズを見慣れた人ですと、月形黄門は貫禄は十分乍ら、何かと脇が甘い。捕はれの身になつてもなすすべがありません。更に情報の漏洩には注意されたし。それからお忍び旅の要素が薄く、必要とあらば自分の身分を明かします。まあ、この方がリアルとも云へますが。
そんな訳で、いまいち効果のなかつた坂東蓑助の四変化(?)。典型的なプログラムピクチャの一作ですが、長らく未見の作品を見られて満足でした。