勝新太郎のデビュー1年目の作品としては悪くない。レジットでは単独主演ではなく、5人の名前トップにあり、黒川弥太郎と勝新太郎が両端に、阿井美千子などの女優三人が真ん中に並んでいる。どちらかと言えば数こなしの一作に起用されたという印象。黒川が最後に「やくざなんてこんなものだ、目を覚ませ」というが勝は理想の親分を求め去っていく。本当に去っていったのか、それとも死んでしまったのか、残された恋人や妹はどうなったのか、悪代官はどうなったのか、黒川のその後の身の振り方はどうなったのかなど疑問の多い終わり方である。
取り立てて印象に残る映画ではないが、市川小文治のちょっと小狡い親分が三國連太郎を思わせる演技で、彼の役柄としては目新しかった。