新東宝も初期作品はキワもの作品はなく、社会性のあるもの、文芸作、時代劇にコメディとバラエティ豊かな作品を提供してくれましたが、本作品はやや特殊な作品でした。
九州の山林で樹木を伐採し里まで荷下ろしする、祖父譲りの牛山師・繁の、少年から成長して青年になり、いっぱしの牛山師となる過程を描いた、オールロケのセミドキュメンタリータッチの作品です。
九州の阿蘇山や球磨川の雄大な背景にした舞台ですが、仕事は足場の悪い山道を、巧みに牛を操ってケガや原木ロスをせずに運搬する危険な仕事で、まだ若い繁にとっては、仲間付き合いにも気配りが求められます。
戒律厳しい山の掟もあり、酒癖の悪い鉄三に目の敵にされ、飼牛を処分しなければならない状況に追い込まれ、繁は牛と共に身を隠します。
所を変えての繁と鉄三の追跡劇は、鉄三が川下しの材木の堰を切ったために全員水中に取り込まれてしまいます。
最後のクライマックスは、撮影条件の厳しい中、迫力充分です。鉄三が良心に目ざめて、繁に許しを乞うという展開になります。少し弱い気もしますが鑑賞対象は学童も多いと思われ、悲惨な結果にはしにくかったと思われます。