由起子

ゆきこ|Yukiko|----

由起子

レビューの数

3

平均評点

53.6(9人)

観たひと

13

観たいひと

2

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1955
公開年月日 1955/8/3
上映時間 105分
製作会社 中央
配給 松竹
レイティング
カラー モノクロ
アスペクト比
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督今井正 
脚本井手俊郎 
原作菊田一夫 
製作伊藤武郎 
小林清 
撮影中尾駿一郎 
美術平川透徹 
音楽古関裕而 
録音安恵重遠 
照明平田光治 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演津島恵子 矢田部由起子
木村功 上野山三吉
宇野重吉 尾高恭助
関千恵子 最上田鶴子
野添ひとみ とめ
小沢栄 青砥義秀
永井智雄 浜田義夫
原保美 楠信太郎
村瀬幸子 小原やす子
大塚道子 小原成子
吉行和子 小原寿子
奈良岡朋子 女中きく
加藤嘉 上野山彦造
賀原夏子 湖畔の旅館の内儀
平田治子 湖畔の旅館の女中
清水将夫 ホテル支配人
石島房太郎 玉木屋支配人
中村是好 楽屋番
落合義雄 医者
西村晃 警官
成瀬昌彦 刑事
中村伸郎 教頭
左卜全 営林署の小使
田所千鶴子 中年の主婦
武智典子 老婆
戸田春子 料理屋の内儀
島田屯 踏切番
織田政雄 旅館の番頭
原芳子 下宿の主婦

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

連続ラジオ・ドラマを、「五十円横町」の井手俊郎が脚色し、「ここに泉あり」の今井正が監督、撮影も同じく中尾駿一郎の担当である。出演者の主なるものは「たそがれ酒場」の津島恵子、「美わしき歳月」の木村功と野添ひとみ、「狼」の宇野重吉と小沢栄のほか、劇団人多数である。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

昭和七年の事。三十歳の時小児麻痺にかかり、それ以来不自由な体になった画家尾高恭助は、廃人同様の彼を嫌って姿を消した妻の俤を求めて、新婚の地十和田湖に訪れた。そこで彼は、自殺するつもりで同じ湖畔に来た矢田部由起子に会った。彼女は幼い頃母に死なれた私生児で、伯父に引きとられて育てられたが、周囲の生活は冷かった。女学校の時、レビューの踊り子になった親友最上田鶴子から結婚の相談をうけ、彼女の婚約者上野山三吉に会ったが、程なく田鶴子は悪質の興行師青砥によって地方廻りに売り飛ばされ、カッとなった三吉は青砥を傷つけて故郷の因の島に去った。この事件のまきぞえを食った由起子は、教師楠の擁護もむなしく女学校を追われ、自殺を決して十和田湖畔に来たのだった。それから四年、彼女は恭助に引きとられ、その助手としてほのかな愛情に生きて来た。折しも二・二六事件が起り、二人は騒ぎを避けて京都から因の島へ旅したが、由起子の秘かな目的は、そこで三吉に会う事だった。しかし三吉には許嫁者のとめがおり、父親の彦造は由起子を三吉に会わせなかった。その夜三吉は由起子を訪れ、二人は四年の間、胸の奥底に秘め合っていた慕情を打合けあい、結婚の約束を結んだ。しかし、その語らいを耳にした恭助の悲しみ、三吉をしたうとめの気持、男やもめの彦造……。その夜、酒に酔った彦造は由起子たちの旅館にあばれこんで来た。それを追ってとめも来た。ようやく真の愛情に眼覚めた由起子だったが、すべての人々の幸福をねがうためには、島を去ろうと決心するのだった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1955年9月下旬号

日本映画批評:由起子

1955年8月上旬号

日本映画紹介:由起子

1955年7月下旬号

新作グラフィック:由起子

1955年6月上旬号

日本映画第一線の動き:今井正の「由起子」

2022/08/13

2022/08/14

55点

テレビ/有料放送/衛星劇場 


すれ違うメロドラマ。

ネタバレ

「君の名は」で有名な菊田一夫のラジオドラマの映画化作品で今井正監督作。津島恵子、木村功、左卜全と前年の黒澤明作品「七人の侍」からの出演者も多い。物語は戦前を描くだけあって、舞台芸人への世間からの蔑視、警察の横暴、教育者の事なかれ主義など頑なな周囲が描かれる。

私生児として育ての母に疎んじられ、親友の婚約者が犯罪者として追われる不幸な主人公・由起子の苦境。しかし、全般にはやはりすれ違いメロドラマ。

しかも瀬戸内海まで追っていった心の恋人・三吉に親同士が決めた婚約者があると知って、彼と話し合うことなく諦めてしまう。このまま由紀子は東京に帰るのだから、三吉からすると女性に裏切られる二度目の経験と見えるだろう。なんとも宙ぶらりんな結末。

なお、二人の義理の姉妹の一人を演じているのが吉行和子。よく見ないと分からなかった。

(※BD-R 録画 CATV 衛星劇場)

2022/01/20

2022/01/21

58点

テレビ/有料放送/衛星劇場 


あんみつと激辛ラーメン

ネタバレ

監督の今井正は「にごりえ」で繊細なこころの機微を描き出し、「真昼の暗黒」で冤罪事件の悲劇を怒りを込めて描き出した。いずれも私には大好きな映画で、何度観たか覚えていない。好きな映画監督の一人である。

ところがこの映画「由起子」の場合は、こころの機微も社会批判も中途半端になった。

ヒロイン由起子(津島恵子)が父母の消息や自分の出自を知る人を訪ねる旅から始まって、途中から愛する人(木村功)を訪ねる旅に変わってしまう。それでもやっと彼を探し当てたと思ったら、慕っている女性(野添ひとみ)が傍に居ることが分かって、由紀子は彼と別れる決心をしてエンドマークになる。なんだコレは!
私の知る限り井手俊郎はこんな中途半端な脚本を書く人ではなかった。
由起子は何を求めて旅を重ねるのだろう。映像に付き合わされた観客は不完全燃焼のまま放り出される。どうしてこんな映画になったんだろう。
菊田一夫原作のNHK連続ドラマの映画化であるとタイトルに記されている。すると時期的には日本中の老若男女を沸かせた人気ドラマ「君の名は」に続くラジオドラマだったのではないか。
「君の名は」レベルのメロドラマを期待して由起子の重なる不幸に涙しようとハンカチ持参でワクワクしながら映画館に駆けつけたら、社会構造を批判する映画を見せられることになる。あんみつを食べたいと店に入ったら、激辛ラーメンを出されるようなものだ。

この映画にはサイドストーリーがある。由紀子の高校時代が回想場面として挿入される。
浅草の興行を食い物にしている芸能プロデューサー(小沢栄)が跋扈していて、背後で暴力団と繋がっていて、しかも警察も馴れ合って共存している図式が描かれる。この権力関係に抵抗しようものなら浅草界隈では生きていけない。踊り子をしている由起子の友達・田鶴子(関千恵子)は恋人(木村功)と共に抵抗を試みたために地方のどさ回りに飛ばされて恋人と引き離されてしまう。恋人はのちに由起子の愛する人になってしまう。田鶴子は救われないままに、その後はドラマから消えてしまう。不完全燃焼はここにもある。

高校生だった由起子は友達の田鶴子を訪ねてこの界隈に出入りしていたことで不純異性交友を疑われる。それが事実誤認であったと分かっても、警察(成瀬昌彦)は学校長(中村伸郎)に謝罪などしないと言い切る。そのため由起子は退学処分になってしまう。この理不尽さ!
当時の社会構造の歪みを俎上に乗せる視点自体は悪くない(激辛ラーメンそのものは否定されるものではない!)。しかし、大衆はそういう映画を鑑賞するのにハンカチを持って駆けつけたりしなかったと思う。菊田一夫のメロドラマの看板を掲げて、その人気にあやかろうと海老で鯛を釣るような商魂が見え隠れする。社会批判の正義をそういう呼び込みをして見せるのはあまり気分の良い作り方ではないし、出来栄えも二兎を追って中途半端になった。

2022/01/16

2022/01/16

60点

テレビ/有料放送/衛星劇場 


菊田メロドラマ

NHKのラジオドラマの映画化らしい。君の名はのヒットにあやかったのだろうが、世の女性の涙を絞るほどの作品ではない。
不幸な生い立ちの由起子(津島恵子)が恋をするが、婚約者のために身をひくという自己犠牲の物語。
時代背景がどうやら二・二六事件の頃の話らしい。
古い社会通念を問題視しているような部分も見られるが、それほど重いテーマとしては捕らえられていない。