少年死刑囚

しょうねんしけいしゅう|Sentenced to Death|----

少年死刑囚

レビューの数

2

平均評点

62.4(10人)

観たひと

15

観たいひと

2

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1955
公開年月日 1955/7/3
上映時間 104分
製作会社 日活
配給 日活
レイティング
カラー モノクロ
アスペクト比
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督吉村廉 
構成八木保太郎 
脚本片岡薫 
佐治乾 
原作中山義秀 
製作児井英生 
撮影峰重義 
美術木村威夫 
音楽斎藤高順 
録音高橋三郎 
照明三尾三郎 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演牧真介 垂井浩
左卜全 垂井芳蔵
田中筆子 垂井たま
菅井一郎 山本梅吉
田中絹代 山本里子
多々良純 垂井慎太郎
若原初子 垂井春江
相馬幸子 町田とも江
木室郁子 町田いく子
増田順二 角さん
内海突破 ボン
殿山泰司 念仏さん
安部徹 石松
片桐常雄 所長
深見泰三 教育課長
田島義文 保安課長
信欣三 吉良看守長
石黒達也 検事
宮崎準 看守長A
阪井一郎 看守長B
光沢でんすけ 死刑囚
澄川透 死刑囚
瀬山孝司 死刑囚
二階堂郁夫 死刑囚
河瀬正敏 死刑囚
伊東柳晴 死刑囚
山之辺閃 死刑囚
植村進 第四舎の担当看守
吉田祥 第四舎の担当看守
伊丹慶治 調室の主任
島村謙二 看守A
千代京二 看守B
神山勝 導師
衣笠一夫 死刑立会検事
水谷謙次 検察事務官
浦島久恵 ある家の女
須田喜久代 待合室の女
津田明子 女の事務員

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

中山義秀の原作を「次郎長遊侠伝 天城鴉」の八木保太郎が構成、「狂宴」の片岡薫が新人佐治乾と共同で脚色、「初恋カナリヤ娘」の吉村廉が監督に当る。撮影は「青春怪談(1955 市川崑)」の峰重義、音楽は「月は上りぬ」の斎藤高順の担当である。主なる出演者は「うちのおばあちゃん」の牧真介、「「春情鳩の街」より 渡り鳥いつ帰る」の田中絹代のほか、木室郁子、左卜全、菅井一郎、多々良純など。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

祖父母と叔父夫妻を殺害した満十八歳の垂井浩は、第一審に於て死刑と判決され、第二審は控訴中であり、目下コンクリートの高塀に囲まれた東京拘置所に入れられていた。彼は舎房の中でも暴れ廻り、又検察庁での検事の論告に対してもわめいて反抗したりした。斯くして確定通知まで一〇三号の舎房に投げこまれ、同じ運命を持つ仲間念仏、角さん、チョビ博士、ボンなどの顔も覚えたが、その仲間も一人二人と消えて行くのである。ある日、浩に母親の里子が面会に来たが、彼はすげなく帰してしまった。浩は毎日何ものかに対する反抗で、すべてに反発を示したが、反面耐え切れぬ空虚を感じていたのだ。終戦時の混乱の頃の自分。義父梅吉の冷たさ、祖父母に対する叔父夫婦のあまりの仕打ちに憤慨した夜の兇行。死にたがっていた祖父母に対するあの行為。今更ながら悪夢のように胸が苦しい。浩は思わず自殺を計ったが未遂に終った。ある日、幼馴染のいく子からも手紙がとどき、彼の過去の行為をいさめてきた。やがて浩の死刑確定通知も伝達された。母の里子やいく子との最後の面会も笑顔ですませた。愈々死刑執行の日、仲間とも別れ、花を抱いて刑場へ向う浩の口もとには微笑が浮かんでいた。がその時、急に彼の恩赦の報が伝わった。それを知った浩は、殺してくれ、と叫び、且つ号泣し、だまされたと云って絶叫しつづけるのであった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1955年7月下旬号

「少年死刑囚」の宣伝:

1955年7月上旬夏の特別号

新作グラフィック:少年死刑囚

日本映画紹介:少年死刑囚

2023/04/19

2023/04/19

68点

テレビ/有料放送/衛星劇場 


死にたいから生きたいに変わるとき

優しい祖父母と、母を追い出して祖父母につらく当たる伯父夫婦を殺害したことで死刑を宣告された少年垂井浩(牧真介)が吉良看守長(信欣三)の導きで生きることに希望を見いだすまでの話。
テーマがやや重いが、話としては分かりやすい。不幸な祖父母を死なせてやったことは理解できるが、伯父夫婦を怒りにまかせて惨殺したことは容認できるものでは無い。ただ、時代がよくわからないのだが、少年院に入っていたのは戦時中で、人殺しをしたのは戦後なのかなあ。年齢の推移がよくわからない。死刑の判決を受けたのは18才未満の時か、それとも20才未満の時か。最後に恩赦になるがそのとき迎えに来るのが八王子少年刑務所。どこまでが少年なんだか。
死刑執行の前に家族面会があったが、昔はこれが普通だったのだろうか。現代ではほとんど実施されていないようだが。
吉良看守長が死刑囚を安心させるために、死ねば浄土へいけるという話をして死を覚悟させたのに、恩赦になったとき生きていればまた希望が湧くというようなことを言ったために一波乱ある。まるで、戦前が軍国主義だったのに、戦後は民主主義になった大人の言い分みたい。しかし看守長としてはこうするほかはないのだろうな。
母親は田中絹代。いつものもっさりとした演技だが、母親としては合格。

2017/07/23

2017/08/31

70点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


いつかもう一度観たいと思っていた映画

ネタバレ

ラピュタ阿佐ヶ谷の日活特集、「少年死刑囚」は、わたくしが小学生の頃TVで観た事があり、中身は見事に忘れているものの、そのショッキングなタイトルと共に、暗くて恐ろしい映画だったという印象だけが強く残っていて、いつかもう一度観たいと思っていた映画でしたが、ほぼ50年ぶりに観直して、やはり暗くて観るのがしんどい映画ではありました。
主人公の牧眞介は、18歳にして実の祖父母と叔父叔母を殺して一審で死刑を言い渡され、現在控訴審が行われているため、東京拘置所に収容されているという少年です。拘置所内での牧は粗暴を極め、看守たちに食って掛かっては取り押さえられて自室に閉じ込められ、部屋の壁や扉を蹴り付けて怒りをぶつけるという有り様。牧の教育係である看守・信欣三は、自分も信仰する仏教に牧を導こうとしますが、聞く耳を持ちません。
何が牧眞介をここまで粗暴な態度に追いやるのか、当初は観客も見当が付かずに戸惑いますが、次第に明らかになってゆくのは、死刑になることの恐怖であり、自分が犯した罪への悔恨であり、自分を祖父母の許に置いて出て行った母親への追慕です。
戦後の貧しい暮らしの中で、祖父・畑中蓼坡、祖母・田中筆子は牧眞介を可愛がってくれたものの、米屋を実際に運営している叔父の多々良純、その妻・若原初子は、甥っ子に当たる牧眞介の食い扶持を確保する困難を毎日のように愚痴り続け、牧に対して甘い若畑中蓼坡と田中筆子を責め、祖父母は自分たちが死ねば生活が多少は楽になるのだから早く死にたいなどと言っているのを耳にした孫の牧眞介は、日々胸を痛めているという過去の映像が映し出されます。そして牧は、一度は自分がこの家を出てゆくことを決意して、実際に鉄道駅までゆきますが、翻意して家に戻った彼は、死にたいと訴えていた祖父祖母の願いを叶えてやるとともに、そんなふうに祖父祖母を追い込んだ叔父叔母を鉈で殺すのでした。
自らの中にある死への恐怖、罪への悔恨、母への追慕という思いと向き合うことができた牧眞介は、周囲の房に収監されている死刑囚が次々と刑の執行がなされてゆく中で、次第に死の覚悟が固まってきたのか、態度も表情も平静になってゆき、信欣三が薦める写経や読経にも積極的になり、実母・田中絹代の面会も幼馴染・木室郁子の面会も平静心で受け止めることができるようになり、信欣三は控訴審での刑の軽減を期待していながら実際に下されたのは控訴棄却という厳しい結果だったにも拘らず、牧眞介は平然と受け止め、上告を薦める信欣三の声を拒んでまでして死刑を受け入れる決意を固めます。
そうして心安らかな中で迎えた死刑の執行日。実母・田中絹代の見送りを受けて刑場に向かう牧眞介の許に届けられたのが、恩赦の報せです。信欣三は良かった良かったと喜びますが、死を完全に覚悟していた牧眞介は激しく動揺した上で凶暴さを蘇らせ、“俺を殺してくれ、俺は騙された”と叫びつつ、看守の一人から拳銃を奪って拘置所内を逃げ回り、取り囲んだ看守たちに向かって発砲寸前のところまでゆきます。
結局牧眞介はそれ以上の罪を重ねることなく(拳銃を奪って逃げたことは不問に付されたのでしょう)、少年刑務所の迎えの車に乗せられてゆき、その車を田中絹代が「陸軍」のラストシーンを彷彿とさせる走りで追い掛けながら、映画は終わりますが、なかなかどうして重い感触を残す映画でした。