麦笛

むぎぶえ|Love Never Fails|----

麦笛

レビューの数

6

平均評点

66.4(10人)

観たひと

21

観たいひと

1

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1955
公開年月日 1955/5/3
上映時間 103分
製作会社 東宝
配給 東宝
レイティング
カラー モノクロ
アスペクト比
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督豊田四郎 
脚本池田一朗 
豊田四郎 
原作室生犀星 
製作田中友幸 
撮影三浦光雄 
美術河東安英 
音楽団伊玖磨 
録音藤好昌生 
照明石川録郎 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演久保明 伸夫
太刀川洋一 
青山京子 お玉
越路吹雪 お松
志村喬 伸夫の父
中北千枝子 伸夫の姉照代
三好栄子 伸夫の叔母
浪花千栄子 表の母
浜田百合子 表の姉瑞枝
藤原釜足 斎藤老人
塩沢登代路 茶屋の女中
左卜全 警官
三條利喜江 劇場の女
東静子 劇場の女の娘

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

室生犀星原作の『性に目覚める頃』から「或る女」の豊田四郎と「泉へのみち」の池田一朗が共同で脚本を書き、豊田四郎が監督に当る。撮影は「女性に関する十二章」の三浦光雄。出演者は「潮騒(1954)」の青山京子、久保明、太刀川洋一、「女給」の越路吹雪、「めくら狼(1955)」の志村喬、「浮雲」の中北千枝子の他、三好栄子、浪花千栄子、浜田百合子、藤原釜足など。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

大正の中頃、倉敷の松山寺の息子伸夫は読書や詩作にふける日を送っていた。彼の詩友で髪結の息子表は、環境のためか早熟だった。伸夫は姉照代が愛ももたずに嫁いだ気持が分らなかった。権現さんの茶屋の娘お玉が寺にお詣りに来て、下駄の鼻緒を切った時、伸夫は彼女に不思議な圧迫感を覚え、手拭を投げあたえた。お玉は表に伴われ礼に来たが、伸夫の無礼な態度に腹を立てた。表のとりなしで一緒に海岸へ行ったものの、お玉と表の親密げな様子に伸夫は逃げる様に立ち去った。芝居見物の時識らぬ娘に対する表の態度に伸夫は怒り、決闘状をつきつけた。しかし決闘場へはお玉が来て、激しく伸夫をなじった。悶々の時を過して、ふと本堂へ行った伸夫は、賽銭箱から金を盗んでいる凄艶な女お松を見たが、その平然とした様子に茫然とした。伸夫はお松の後を家迄つけて行き、我知らず彼女の下駄を盗って了った。こっそり返しに行ったが、お松につかまり争ううちに懐の短刀をつかんでいた。伸夫は姉に全てを打ち明け、短刀を預けて寺へ帰った。伸夫の詩が雑誌に載った祝に伸夫と表はお玉の茶屋で乾盃した。数日後、表が病気との報せに伸夫は急いで病床に見舞った。痩せ衰えた表はお玉との連絡を頼んだ。お玉に会うと伸夫は彼女との間には何か異った感情が流れるのを感じた。表は伸夫にお玉のことを頼んで死んだ。一緒に墓参した二人はかつて三人で行った海岸へ出た。二人は激しく抱き合ったが、伸夫はその瞬間お玉をつき放し海へ向って表の名を呼んだ。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1955年6月下旬号

日本映画批評:麦笛

1955年3月下旬号

日本映画紹介:麦笛

1955年2月下旬号

新作グラフィック:麦笛

2021/05/09

2021/05/23

60点

映画館/大阪府/シネヌーヴォ 


所謂一種の童貞こじらせもので、伸夫の女性への接し方が本当に不器用。ただ口下手なだけならまだしも、攻撃的になる質だから余計に誤解されやすい。そんな彼が開眼するのが、足へのフェティシズム。下駄の鼻緒が切れて素足で階段を上るお玉、寺へのお参りで本堂に素足で上がるお松、二人の女性の素足が描かれる。特に後者は、伸夫が本堂の階段の下に身を潜めていることもあり、窃視の傾向が見られたりも。そして、その後の彼の行動は常軌を逸しているものの、こじらせっぷりがよく分かる。また、話が進むにつれて鬱々としてくるけれど、序盤は友人・表の母親演じる浪花千栄子がコミカルで、橋で荷車が逆走しかけるシーンに思わず笑ってしまう。それにしても、お松演じる越路吹雪が妖艶、警官演じる左卜全はそこに居るだけで面白い。

2021/03/15

2021/03/24

75点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


豊田の嗜好炸裂

正式タイトル『麥笛』
豊田が名作『雁』の翌年に撮った作品。彼の代表作ではないが、豊田の特性が発揮されている点で、注目に値する。久保明の内気でネクラなキャラは、理解できるが、身近にいれば苦手なタイプ。友人の太刀川は正反対な性格。賽銭泥棒の越路吹雪の後を追い、履物や足に欲情するのは、思春期の描き方としては今観ても過激だと思う。室生犀星の『杏っ子』(成瀬)も偏屈な人物だったが、豊田にかかるともっと過激だ。青山京子、久保明の『潮騒』コンビとは思えないほど不健康な青春。ラスト、雪の海岸の墓参は青春の墓標か。三浦光雄の厳しいカメラ!

2021/03/18

2021/03/18

-点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 

『麥笛』。大正時代の倉敷。倉敷市交通局線五軒屋駅が登場するが、大正時代には鉄道自体存在していない。伸夫(久保明)は髪結い床の女性に囲まれて思わず鼻血。警察署で警官に絞られていたのは佐田豊っぽい。塩沢登代路、中野俊子、千葉一郎など出番気づかず。五月藤江は台詞ありの目立つ役。

2021/03/14

2021/03/14

75点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


煮え切らない純文学的青年

口から出る言葉が女性に伝わらない歯痒さ。
久保明は正に適役でした。

越路吹雪や青山京子が時より見せる性的露出の観せ方や、浪花千栄子ら豪華な脇役陣の見どころなどあったが、肺病に侵された友人と青山京子、久保明の3人のやり取りからの終盤は重苦しさに押されてしまいましたね。

2016/12/06

2016/12/07

-点

映画館/東京都/新文芸坐 

『麥笛』。久保明は青春期のもやもやを演じるのだが、何やってんだと歯がゆい思い。女性心理はむずかしいなあ。倉敷の街や風景がのどか。青山京子の茶店は箆取(へらとり)神社。ここからの眺めがすばらしい。婚礼準備の髪結い(浪花千栄子)はナイスな配役。出番はほんの少しだが三好栄子も出演。

2013/11/21

2014/07/04

65点

映画館/東京都/東京国立近代美術館 フィルムセンター 


東宝らしい清潔感

フィルムセンターの新所蔵映画特集・東宝篇、1955年製作、豊田四郎監督「麦笛」は、室生犀星の自伝的短篇小説「性に眼覚める頃」を映画化したもので、寺の息子として思春期を生きる内向的な主人公・久保明が、ませた親友・太刀川洋一に振り回され、彼との絶交を宣言したりしつつも、肺を病んだ太刀川の死に立会い、寺の賽銭を繰り返し盗む妖艶な女・越路吹雪に翻弄されるといった体験を経ながら、密かに想い続ける茶屋の娘・青山京子との健全な男女関係を育んでゆくという、東宝らしい清潔感のある青春物語です。
石坂洋次郎の青春ものの翻案などを巧みに手掛けていた池田一朗が、この原作も巧みに脚色しており(豊田との共同執筆)、豊田の演出も、フィルムセンターの解説文に書かれた通り“この直後に代表作『夫婦善哉』(1955)を手掛けるなど、キャリアの円熟期を迎えており、本作でも、思春期の青年たちの揺れ動く恋心が丁寧に演出されて”います。