旗本退屈男シリーズ、戦後第八作目です。「謎の怪人屋敷」。七作目以降、14作目を除いて全てタイトルは「謎の〇〇」で統一されます。あまり謎はないのだけど。
監督・脚本は早撮りの渡辺邦男であります。退屈男対柳沢吉保の対決を描いた痛快篇!
相変らずモテモテの早乙女主水之介(市川右太衛門)。退屈男の行くところ、小芳(高峰三枝子)を始め娘たちがキャアキャア言ひながら付いて行きます。更に治右衛門(原健策)なる道楽男を兄に持つたお陰で苦労続きのお紋(喜多川千鶴)を救つたりして、さらにファンが増えます。
しかしお紋は柳沢吉保(阿部九州男)の目に留まり、将軍綱吉(月形龍之介)の側室となり、生活が一変、治右衛門も妹の威光を笠に着て威張り放題。時はまさに「生類憐みの令」が発布され、御犬様の所為で庶民は苦しんでゐました。
その風潮に逆らふ主水之介は、柳沢に命を狙はれますが、退屈男の敵ではありません。さればと柳沢はお紋を使ひ色仕掛けで篭絡せんとします。主水之介は魂胆を知つた上で、しやあしやあとお紋の膝枕で寝ていい気分です。
サテ激怒した綱吉は、主水之介に切腹を命じます。サアどう出る退屈男?
勧善懲悪を絵にかいたやうなストオリイであります。主水之介の見せ場も当然たつぷりで、ワンマンショウみたい。ただ配役にいささか疑問が残ります。月形の将軍は似合はないし、阿部九州男も柳沢役は家賃が高いと存じます。しかし一番違和感があるのは京弥さまに女優(勝浦千浪)を起用してゐることですな。彼女を充てる必然性を感じないのですけど。
まあいい。しかし「怪人屋敷」とはちと大袈裟ですね。