ありもしない石油を放ることに熱中する佐野周二たちとの交流を通してヒロイン・南風洋子が生きることの素晴らしさに目覚めて行く過程が良く描かれているが、如何せん面白みに欠ける作品になってしまったことは否めない。市井の人たちの人間模様を描くことに長けていた五所監督のまなざじ、恵まれない者たち、幸福の薄い者たちへの人間愛を感じないのだ。それは同年の日活作品「愛と死の谷間」もしかり。
石油は掘れなかったが温泉は掘れた、にもかかわらず佐野たち石油労働者は除け者扱いされて秋田へと旅立っていく、という何とも苦労が報われないラストも、後味の良いものではない。鳴かなかった鶏が鳴いてくれても晴れ晴れとしない幕引きである。ところで物語の舞・台時の岬は南房州にあるという設定で、私の地元(鴨川)もそのエリア内にある。もっともこれは余談なのだが。