シネマヴェーラ渋谷の瑳峨三智子特集「大岡政談妖棋傳」の第二部「地獄谷の対決」は、銀将四枚を集めた者に示される地図を入手した清水将夫と山田五十鈴が手を組み、富と権力が約束された宝を探しに山奥の秘境を目指す一方、毒が抜けた大谷友右衛門と堀雄二が後を追うという展開になりますすが、食糧が尽きた清水と山田の欲の張合いが凄まじく、咲き乱れた山百合の美しさと対照的な人間同士の欲望が観る者の心に残ります。
山田五十鈴と清水将夫が目的寸前で息絶える中、“山彦”と呼ばれる秘宝を入手した与力・大谷友右衛門が、家康直筆によって御墨付きになった権力の座の証明を前に、権力欲を露わにする場面に凄味がありましたが、その後舞台を江戸に戻してから明らかにされる“白蝋鬼”の正体は、筋が通っているのかどうか疑問ではあり、一応話の決着は付けられているものの、ただ帳尻を合わせただけのようにも思えます。
とはいえ、中盤までの、清水将夫と山田五十鈴が繰り広げる欲の張り合いは、十分に観る価値のある場面であり、並木鏡太郎の映画の中でもきちんと記憶しておきたい映画だと思われました。