森の石松の話ばっかり。なんだかスピンオフの映画を観ているみたい
クレジットタイトルで森繁久彌が一番右、左に小堀明男、越路吹雪の一枚看板。森繁が出演者の中で一番の格上になったことを知らしめる。
この回は全面的に森の石松が主役という作品になった。
ここでもはつらつとした森繁の演技がすごく良い。後の当たり役社長シリーズよりも良い。バカだけど気が良い男を森繁が乗りに乗っていることがこちらにも分かる。
そして戦前の日活時代からマキノ雅弘監督の映画に出演していた志村喬の登場で映画がグッとひきしまる。
森繁とのやりとりがこの映画の一番の見せ場で、志村が森繁を支えて、面白い。
この映画のラスト。石松がズタズタにされて戻ってくる。が、息が絶える石松を発見するものがいない。
それに反して、石松が惚れた女郎を見受けする志村喬。志村が「石松は幸せもんだ」と晴れ晴れとした表情が映し出される。
この対比でグッとくる。石松の死の悲惨さがより強調される。うまいですねえ、マキノ雅弘監督。