シネマヴェーラ渋谷の伊藤雄之助出演作特集で初めて観た「一等女房と三等亭主」は、下村健さんの労作“新東宝データベース”によれば小森白の監督デビュー作のようですが、作劇テンポがギクシャクしている点が残念だし、妻は夫に依存するのが幸せだとでも決め付ける世界観が気に食わぬものの、格差婚夫婦という題材は悪くありません。
「一等女房と三等亭主」の“新東宝データベース”における表記は、“実際の画面から確かめた訳ではないので、違っているかも知れない”と但書きがあった通り、小川虎之助の息子は大泉滉ではなかったし、新井麗子は妾宅の女中ではありませんでした。記載にはなかったですが、轟夕起子の弟子に三原葉子がいました。
冒頭近く、放送開始して間もないTVで美容法を語る轟夕起子を飲み屋の受像機で観ていた亭主の伊藤雄之助が“あれは僕の女房”と語ると、“あんな美人が君みたいな情けない男と結婚する筈がない”と笑い飛ばすサラリーマンの酔客を演じているのが沢村昌之助。兄弟共演を果たしています。