敗戦後10年経って復員してきた河那辺浩一が見た故郷は、米軍のキャンプ地になっていて、実家もオンリーの由岐子に間貸しをしている有様。
恋人だったハルエの消息を知りたいが、恐ろしくて聞けない純情さがまだ残っているのが、隔離世界に長い事いたためだと気付かされます。
大家族の河那辺家の家族と同居の由岐子、そして地域の住人の織りなす群像劇は猥雑ですが、恋愛・結婚問題が大きなテーマになっています。
そこには戦争の影響が大きく影を落としていますが、米人は殆ど表に出ず、日本人の内輪の話として事を大きくせず、基地と銘うっている割には問題を矮小化しています。
そんな中で登場人物中、由岐子を演じた根岸明美が一番の存在感を見せていたと思います。
周囲の悪口があるのも十分承知の上、女ひとりで生きていくのだという、戦前は考えられなかった女性像を見せ、毅然とした態度でいる姿は美しかったです。
そんな彼女がプライドをかなぐり捨て、浩一に心の内を吐露する姿には感動します。
翌日のバス車内で交わす眼差しで、彼女に戻った矜持と喜びとが混ざった表情が素晴らしいです。
これらのストーリーが浩一がやってきて翌日には去ってゆく、というたった一昼夜の出来事というのが信じられないスピード展開のドラマでした。