初っ端から思ったのだが、ジェリー藤尾のようなタイプの人間は一流の大学にはどう頑張っても行けないだろうね。これは半世紀以上たった今でも通用するんじゃないかな。詳しいことは「ドラゴン桜」とかを観たらわかるよ、ここでは割愛する。それにしてもジェリーのキャラクターは何だかなれなれしくて鼻につくな。やたら余計なことをしゃべるし、見ていてイライラしてくる。
ついた嘘は呆気なく暴かれてしまい、ジェリーはスパイの疑いをかけられ、文字通り悲劇を絵にかいたような運命をたどることになる。次々と嘘を暴き、ジェリーを拷問にかける藤巻潤等、学生運動の同志たちが彼に向ける冷めたような視線がたまらない。もはや抜き差しならないムードをその力によって作り上げてしまっているのだからすごい。若尾文子もそう。
しかし物語はこれだけに終始せず、ジェリー監禁事件を機に学生運動の同志たちの連帯の揺れ、それまで見えてこなかった様々な思惑、人間模様が映し出されていく。最終的にジェリーの疑惑は晴れ、同志たちとも和解したように思えるが、もはやそこに本当の友情も、正義の欠片もない。ゾッとするような結末だ。
原作者の大江健三郎が原作と異なることに激怒したとかで、未だ映像ソフト化もされていないようだが、文学による表現と映像によるそれとはまた別物だし、何でもかんでも原作通りに作れば良いものができるという保障は何処にもない。大江のような老いぼれ(今となってはだが)に映像作品のことをとやかく言う資格はない。