白い粉の恐怖

しろいこなのきょうふ|What Price Love|----

白い粉の恐怖

レビューの数

9

平均評点

72.0(15人)

観たひと

25

観たいひと

4

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1960
公開年月日 1960/9/4
上映時間 87分
製作会社 東映東京
配給 東映
レイティング
カラー シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督村山新治 
脚色舟橋和郎 
原作栗山信也 
企画吉野誠一 
撮影星島一郎 
美術中村修一郎 
音楽林光 
録音加藤一郎 
照明銀屋謙蔵 
編集田中修 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演三國連太郎 須川弘
岩崎加根子 須川滋子
春丘典子 明子
浜田寅彦 杉山
今井俊二 桜井
増田順司 夏木
大木史朗 吉原
須藤健 村井
多魔井敏 藤本
清村耕次 大場
菅沼正 堀田
河野秋武 矢野
菅原通済 所長
中原ひとみ ユリ子
山茶花究 金山
曽根晴美 井本
潮健児 宮川
浦野みどり 光子
山本桂子 紅子
永田靖 佐伯
大村文武 田口
谷本小夜子 運び屋の女
木下通子 女中
山本緑 看護婦
中村勝利 火葬場の職員
片山滉 監察院の技官
三田耕作 おでん屋の親爺
相馬剛三 刑事
松村達雄 製薬会社課長
北峰有二 製薬会社事務員
田中恵美子 製薬会社女事務員
植松鉄男 酒屋の小僧
美原亮 野次馬の男
三重街竜 裏通りの中毒者1
近衛秀子 裏通りの中毒者2
田崎重子 裏通りの中毒者3
稲益美弥子 田口の情婦

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

桑山信也の原作を、「東京の女性」の舟橋和郎が脚色し、「消えた密航船」の村山新治が監督した麻薬の実態を描いた一編。「大空の無法者」の星島一郎が撮影した。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

盛り場の暗がり、厚生省麻薬取締官たちが一台のトラックにすし詰めになって、情報を待っていた。川井組の麻薬密売人井本と宮川を押さえるためだ。取締官の須川は、情報提供者の朝鮮人金山を囮に使い、その報告を待って密売現場を襲った。宮川とパンパンの中毒女ユリ子を捕らえたが、井本はすでに消えていた。ユリ子は妊娠を理由に釈放を求めた。ユリ子に捜査への協力を約して釈放した。翌日、金山は井本の暴力を浴びて新宿を追われた。金山は最後の情報として、つるやという飲み屋にバイ人の出入があると須川に告げた。須川は、ユリ子の客を装いつるやに行った。が、井本は須川の正体を見破った。ために、ユリ子も井本に狙われるようになった。須川は彼女を千葉の総武病院に入れ、麻薬から救おうとした。ユリ子の禁断症状は癒えた。ユリ子はまた須川のため囮の仕事を始めた。彼女は須川を慕うようになっていた。ヒカリパチンコ店のマスター田口が大口の密売をしているのを知り、田口をさぐった。だが、彼女は孤独感に襲われ、再び麻薬の魅力に負けてしまった。須川は、田口と太陽商事社長佐伯とのつながりを突きとめた。大和製薬会社の秘書課員に偽装し、ユリ子の手引きで、田口と麻薬取引を交渉、さらに佐伯へとわたりをつけた。会社がピンチなので闇資金調達のためといつわり、佐伯と田口を納得させたのだ。「かぶと」という料亭で取引きが行われることになった。須川は、ユリ子がまた薬を打っているのに気づいた。手引した彼女の身の危険を感じ、須川は彼女を自分の家に保護した。「かぶと」で佐伯に手錠をかけた。佐伯邸の、内部は麻薬密造工場になっていた。そこに、金山がいた。囮として協力したことのある金山だが、現行犯として逮捕せざるをえなかった。田口だけが逃亡した。その頃、ユリ子が須川の家をとび出していた。彼女は死んだ。多量のへロイン注入によるショックであった。他殺と思われた。翌日、彼女の死体は火葬された。骨は拾いようもなくボロボロだった。麻薬の毒は骨の髄まで犯していたのである。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2023年11月号

COMING Old Pictures 旧作紹介:「白い粉の恐怖」

1960年10月上旬秋の特別号

日本映画批評:白い粉の恐怖

1960年9月下旬号

日本映画紹介:白い粉の恐怖

2023/10/29

2023/10/31

78点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


麻薬という社会悪に挑む

 「七つの弾丸」(1959年)も良かったが、本作は更に社会の闇へ闇へと潜入し、三國連太郎演じる麻薬取締官たちの姿を追う。戦後日本には20万人に及ぶ麻薬中毒者がいる―という客観的な数字を提示しつつ、カメラはネオンの光輝く新宿の繁華街に視点を向ける。ドキュメンタリータッチな村山演出は冴えまくりで、特にこの新宿の街を捉えたロケーション等は実に見事だ。
 三國の説得に応じ、初めは麻薬を止められたと思った中原ひとみだが、結局また手を染めてしまう。最終的にはヘロインのショックで帰らぬ人となる。身寄りのなかった彼女の仮想が済まされた後、三國とその妻・岩崎加根子がその遺骨を箸でつまもうとすると、ボロボロに崩れてしまう。何度も何度もつまんでも結果は同じ。中原は骨の髄まで麻薬に侵されてしまった。彼女は麻薬のために、全てを、自分の身体さえも失った―恐怖というよりは、虚無感が残るラストだ。

2020/09/07

2020/09/08

68点

テレビ/有料放送/東映チャンネル 


麻薬取締官


麻薬取締官と麻薬の売人の戦いを描いている。
三国連太郎の麻薬取締官が映画をグッと引き締める。さすがに力のある役者は違う。
中原ひとみが麻薬中毒の売春婦を演じているのは珍しい。でも、なかなかの好演。
麻薬中毒者の禁断症状が多く描かれたり、骨がボロボロになるというシーンがあったりで、麻薬使用をやめようというアピールが根底にある真面目な映画だと思う。村山新治演出はドキュメンタリータッチでモノクロ画面と相まってなかなかにリアル。

2019/08/14

2019/08/15

65点

テレビ/有料放送/東映チャンネル 


ぼろぼろな骨は当時の(おそらく)ショックシーン。

ネタバレ

三國連太郎扮する麻薬取締官が、麻薬常用者を更生させる一方で囮捜査の手足として使う。中原ひとみ、山茶花究が捜査に協力するものの共に陰では麻薬を止めておらず、どちらも破滅していく苦い結末。ことにヘロインに体の髄まで蝕まれた中原の骨がボロボロになって箸で拾うことさえできないシーンは、衝撃的。

ところで、三國扮する取締官の須川が、中原扮するユリ子に「旦那」と呼ばれて、「スーさんだよ」というシーンがある。「釣りバカ日誌」より30年前近くの作品。

2019/01/14

2019/06/26

75点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 


山茶花究や中原ひとみのペー中毒芝居の巧さに改めて感心

シネマヴェーラ渋谷のニッポンノワール特集「白い粉の恐怖」は、2年前の2017年だったかラピュタ阿佐ヶ谷の三國連太郎特集で観たばかりですが、山茶花究や中原ひとみのペー中毒芝居の巧さに改めて感心すると共に、東映東京撮影所ならではのドキュメンタリー・タッチが効いたロケーション撮影を堪能しました。

2019/06/25

2019/06/25

75点

テレビ/有料放送/東映チャンネル 


三國の役名は須川。中原ひとみが「スーさん」と呼ぶシーンがある。

実直に作った麻薬捜査もの。
デ・パルマの「ミッドナイトクロス」の、あのシーンを思い出した。
おとり捜査・潜入捜査は、捜査官の命がかかっているから、見てて緊張する。

中原ひとみが、「姉妹」や「純愛物語」のイメージを捨て、パンパンや麻薬中毒者の役を演じる。
黒人の混血を演じたりした事があってビックリしたこともある。

本作は桂千穂のカルトムービー本で見つけて鑑賞した。
この本は、ベストテン以外の映画に眼を向け、ありがたいのだが、見出しでネタバレしている箇所があり残念だ。
本作についても、ラストのキモをバラしてる。

ロケシーンは、あまり多くないような気がするが、新宿ミラノ座あたりでアーネスト・ボーグナイン「警部物語」1960.6.18封切り、エドアルド・ネヴォラ少年「旅路はるか」1960.6.28封切り、新宿東急が二本立て名画座?「カチューシャ物語」1960.3.5封切りと、題名推定だが「白鳥の湖」1960.3.6の看板を見てとれる。

2019/01/16

2019/01/16

65点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 


取り締まる側も、取り締まられる側も牧歌的

麻薬の元締めを追うのが警察ではなく、厚生省の麻薬取締官という設定は珍しい。
麻取係官を三國連太郎が務めますが、末端の中毒患者の女性中原ひとみを囮にしようとしたり、彼女を保護するために三國は中原を、妻子も暮らす自宅に住まわせるなど、いくら何でも有り得ない強引な展開が目立ちます。
それでも興味本位で麻薬の取り締まりを見せるのではなく、いたって真面目に、地道な取り締まりの様子を描いていて好感の持てる作品に仕上がっていると評価できます。