これまた身分違いの恋。屏風や紗(?カーテンみたいなやつ)の使い方や配置が秀逸で、奉公人・小林勝彦と材木問屋白子屋の一人娘・山本富士子という、愛し合う若い男女の身分ゆえの隔たりを醸し出している印象を受けた。紗の中で抱き合うふたりをアップで捉えた場面が何と美しいことか。処刑に処せられたはずの小林が実は生きていたという展開も面白い。山本を持参金つきの商人・千秋実と結婚させるための謀であったのだ。
ただ…事情も知らず婿養子になった千秋実が可哀想過ぎる。結局死んじゃうし。スリの女と隠れキリシタンの侍の役割もよくわからない。女の方は小林・山本の幸福を願っているとかいうけれど、かえってその幸福から遠ざけるようなことをしているようにしか見えない。侍の方も、心中しようとした山本を助けた命の恩人であり、その後の物語に深く関わって行くような気配を見せるが、そういうこともなく傍観者のような存在で終ってしまっていて勿体無い。
報われぬ恋をした小林・山本も、スリの女も、キリシタンの侍も、考えてみたら罪人もしくは世間から迫害されるようなマイノリティである、という点でだいたい共通している(?)。そういう人間に焦点を当てたかったのか?にしても話がまとまっていない気が…演出意図がよくわからん映画だ(まぁ、そういう映画、国内外問わずいっぱいあるけどね)。