基地問題という社会派が好みそうな題材を、名匠・家城巳代治監督がコミカルなタッチで料理。池野成による軽快な音楽もグッド。不発弾拾いを生業とする南廣の生き様を描き出すとともに、彼と未亡人・淡島千景、木村功の三角関係等を巧みに絡ませる。単純な娯楽劇に終始せず、様々な人間模様から、翻弄される基地周辺の人々の姿、日米関係に潜む不条理が露呈されて行く。脚本は橋本忍。見事な構成である。
東映は東宝や松竹がレッド・パージを敢行していたのに対し、右派とか左派とか関係なしに様々な思想・価値観の映画人たちを積極的に受け入れた。今井正監督や関川秀雄監督、内田吐夢監督だってそう。おかげでこうした名匠・巨匠たちが大いに腕をふるうことが出来た。そういう点でも、東映が戦後映画界に果たした貢献は大きい。