キッド(1921)

きっど|The Kid|The Kid

キッド(1921)

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レビューの数

80

平均評点

79.5(382人)

観たひと

591

観たいひと

33

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル コメディ
製作国 アメリカ
製作年 1921
公開年月日 1921/7/30
上映時間 68分
製作会社 ファースト・ナショナル映画
配給 松竹
レイティング 一般映画
カラー モノクロ/スタンダ-ド
アスペクト比 1:1.33
上映フォーマット 35mm
メディアタイプ フィルム
音声 無声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

チャールズ・チャップリンが親子の情愛を描いたヒューマンコメディ。共演はジャッキー・クーガン、エドナー・パーヴィアンス、トム・ウィルスンほか。無声。1971年にチャップリン自身の編集・作曲によるサウンド版(53分)が製作された。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

朝の散歩の途中で捨て子を拾ってしまったチャーリーは、その子を育てるはめに。5年後、成長した男の子はチャーリーの仕事を手伝い始める。一方で赤ん坊を捨てた女性はその後成功し子供を捨てたことを後悔する日々を送っていた…。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2026/02/09

2026/02/11

78点

購入/ブルーレイ 
字幕


小さな身体に宿る喜劇と悲劇

公開からすでに一世紀以上を経たチャールズ・チャップリンの長編第1作でありながら、いまなお鮮烈な感情を呼び起こす奇跡のような映画だ。サイレントであることも、時代が違うことも、鑑賞の妨げにはならない。むしろ、人間の感情の根源だけをすくい取ったような純度の高さが、現代の観客にもまっすぐ届いてくる。

本作で強烈な印象を残すのは、ジャッキー・クーガン演じる“キッド”だ。彼の動き一つひとつが、生き物としてのリアリティに満ちている。手をくるくる回して石を投げる仕草、相手を睨みつけて喧嘩を仕掛ける様子、短い足でトコトコと走る姿。その多くが、浮浪者チャップリンの身体表現と見事に呼応している。まるで二人が同じリズム、同じ呼吸で世界を渡り歩いているかのようだ。

前半のスラップスティックな軽やかさは、二人の即席の“家族”としての生活をユーモラスに描く。窓ガラスを割っては修理代を稼ぐ詐欺まがいの連携プレーなど、笑いの中に生きる知恵と貧しさが滲む。しかし、この映画が真に忘れがたいのは、笑いが一気に引き剥がされる瞬間にある。
行政によって引き離される場面で、キッドが見せる泣き叫び、哀れみを乞う仕草は、もはや演技という言葉を超えている。しがみつき、手を伸ばし、声なき声で必死に訴える姿は、観る者の理性を容赦なく揺さぶる。ここには説明も字幕もいらない。ただ「離れることの残酷さ」だけが、胸に直接突き刺さる。

チャップリン自身も、この場面では喜劇役者としての仮面を脱ぎ捨て、父として、守る者としての感情を露わにする。夢のような救出シーンや再会の展開には甘さもあるが、それすら含めて、この映画は“生き延びるための希望”を選び取っている。

ふと思う。もし『キッド』を主人公にしたスピンオフ映画が作られていたらどうなっていただろうか。成長したキッドが、浮浪者チャップリンの人生を追い越し、別の視点から社会と格闘する物語。それは下手をすれば、チャップリン自身を食ってしまうほどの力を持った映画になっていたかもしれない。それほどまでに、ジャッキー・クーガンの存在感は圧倒的だ。

『キッド』は、喜劇と悲劇、保護と放浪、親と子という相反する要素を、わずか一時間余りに凝縮した作品である。
百年を超えてなお、トコトコと走る小さな背中が、観る者の心を追いかけてくる。
それこそが、この映画が今も生き続けている証なのだろう。

2026/01/05

2026/01/06

80点

映画館/大阪府/第七藝術劇場 


ちょいワルでも愛情深い。

ネタバレ

<チャールズ・チャップリン監督作セレクション>の上映作品。

チャールズ・チャップリン監督による1921年作で、血の繋がらない息子を育てるチャップリンの親子愛を描いた名作。ではあるのだが、初めて道端に放置された赤ん坊を見つけた時のチャップリンが再び捨てようとして警官の目を気にして、よその乳母車に置いていこうとして叱られる序盤の展開や、5年後に子どもにガラスを割らせて自分が修理する怪しい仕事を警官に見つかりそうになり、近寄る子どもを足で追いやる表現など意外にブラック。

2年前には「サニーサイド」との2本立で見ているが、ドキュメンタリー映画「チャップリン」でロマの血筋であることを知った後では、警官(権力)が苦手だったり、ちょいワルだったり、腕力では負けるがズルさで勝つなど、世間のジプシーへのイメージを体現しているように見えてくる。

住人が皆、天使のようで、そこに悪が忍び込んで争いが始まる夢の中のシーンはチャップリンの世界観なのだろう。1時間弱、無駄がなく、娯楽の要素が詰まっている。

2025/08/08

2025/08/08

75点

その他/録画BSプレミアム 
字幕


子育て

 放浪者(チャールズ・チャップリン)と少年(ジャッキー・クーガン)とのやり取りが中心。

 ラスト、それで、どうなるの、という疑問は残るが、全編、ジャッキークーガンの素直さ、可愛さとチャップリンの動きの面白さと表情の豊かさで持って行く。

 前に観ていて、チャップリンとクーガンの顔は覚えているが、天使の場面は記憶がない。また、行きがかり上なのに、チャップリンの子育ては愛情が深いと思った。

 

2025/02/22

2025/02/25

80点

VOD/U-NEXT 
字幕


二回目

二回目観賞。
子を持つ親になったせいか前回観た時より断然よかった。
ハッピーエンドなのも良い。

2024/11/08

85点

VOD/U-NEXT 
字幕


笑いと涙

ネタバレ

チャップリンは貧しさの中に暖かな笑いを取り入れるのが本当に上手い。
実は幸せのハードルを低くすることこそ、人生を豊かにする秘訣なのかもしれない。
薄いパンケーキを何枚も重ねてキッドと二人で分け合う姿は、可笑しくもあり心がジーンとさせられもする。

捨てられた赤ん坊を見て見ぬふりするか、それとも拾って育てるか、はたまた誰かに押し付けるか。
そんなやり取りだけで笑いを取ることが出来る、彼の身体表現の素晴らしさを改めて実感させられた。

映画史上初めて喜劇と悲劇の融合が効果的に取り入れられた作品とされているが、笑いと涙は紙一重でもある。
この映画に登場する場面はどれも滑稽であり、同時に物悲しくもある。

貧しくても逞しく生きていくことを象徴するかのような、チャップリン演じる放浪者とキッドの詐欺まがいのガラス修理の場面も印象的だった。

献身的にキッドを育ててきた放浪者が、まるで悪者かのように警察官や孤児院の職員に乱暴される展開は心が痛む。

50分と短めの作品ではあるものの、ひとつひとつの場面にドラマが凝縮された見ごたえのある作品だった。
終盤の放浪者の夢を表現したアバンギャルドな場面は良く分からなかったが、放浪者にとっても、キッドにとっても、そしてキッドを捨ててしまった若い母親にとっても、最高に幸せな結末に心が暖かくなった。

2024/08/15

2024/08/15

70点

VOD/Amazonプライム・ビデオ 
字幕


剥き出しのヒューマニズム

夏期休暇前半戦、岡山の両親宅を拠点に四国へ回った。還暦プロジェクトの一環として愛媛県の旧・松下寿電子工業西条事業部と初めて一人暮らしをしたマンションを25年ぶりに再訪。その足で妻の出身地である香川県へ移動。三越時代の妻の仲良し4人組の30数年ぶりの奇跡の再会に立ち会った。因みに小川淳也事務所は盆休みで閉まっていた。

さて名作の誉れ高い『キッド』。素直に103年前に映画が存在したことが尊いと感じる。初期作品のためか流れるような展開でファンタジー調のストーリーが紡がれる。虚飾を取り払った剥き出しのヒューマニズムに溢れている。後年のような並外れた批判精神や重厚感は感じられないが素材だけで勝負した心意気は潔い。