死者との結婚

ししゃとのけっこん|----|----

死者との結婚

レビューの数

7

平均評点

70.0(18人)

観たひと

34

観たいひと

2

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル サスペンス・ミステリー
製作国 日本
製作年 1960
公開年月日 1960/5/27
上映時間 96分
製作会社 松竹大船
配給
レイティング
カラー シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演小山明子 石井光子
渡辺文雄 保科則男
斎藤達雄 保科忠則
東山千栄子 保科すみの
高野真二 中西久夫
春山勉 保科忠一
瞳麗子 保科妙子
土田桂司 赤井
須賀不二男 不破
大塚君代 テル
高木信夫 土屋
堀恵子 良子
光村譲 刑事
町田祥子 文房具店の店員
新島勉 高田
村上記代 看護婦
伊久美愛子 看護婦
末永功 医者
井上正彦 駅長
遠山文雄 川路

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

アイリッシュの推理小説の映画化。田村孟と高橋治が脚色し、「彼女だけが知っている」の高橋治が監督した。撮影は「黄色いさくらんぼ」の川又昂。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

夜の瀬戸内海をゆく一隻の汽船。甲板に立つ女、石井光子は体の中の小さい生命ごと死ぬ覚悟をしていた。船の中で知り合った親切な青年紳士保科忠一と妻の妙子は不幸な彼女を励ました。保科夫妻はアメリカで知り合って結婚し、近く生れる子供共々故郷に帰るところだった。一瞬、運命のイタズラで光子の人生は変った。船が衝突事故を起したのである。保科は死に、妙子も死んだ。しかも、事故の直前、いたずらに光子の薬指に自分の指輪をはめさせたまま……。光子は保科妙子として病院で意識をとり戻した。そして子供は生れていた。男の子だった。見舞に訪れた義弟の則男も兄の妻として疑わなかった。四国の保科家では両親の忠則とすみのが喜んで光子を迎えた。初孫は忠男と名附けられた。光子の良心は痛んだ。保科家の遺産相続が弁護士を介して行われた。光子は過分な配分を得た。則男はやがて光子を愛した。二人が結ばれることを、周囲の人はむしろ当然と思った。罪の意識におびえる光子は秘かに私立探偵を訪ねたが、数日後則男からも紹介されて驚いた。かつて光子を棄てた昔の男中西が光子の前に姿を現わした。悪竦な手段で脅迫した中西は、ついに光子を呼び出し婚姻届に無理矢理捺印させた。光子の憎悪はつのった。深夜保科家から拳銃を持ち出して光子は中西のアパートを訪れた。しかし中西はすでに殺されていた。則男が入って来た。驚く光子に則男は打ち明けた。則男は、光子が妙子でないことも、中西との関係も知悉していた。二人は中西の死体を運び出し、鉄道線路に投じた。中西を殺したのは誰だったろうか。この事件と前後して光子を実の娘のように愛したすみのが持病が悪化して死んだ。光子に宛てたその遺書の中で、すみのは彼女こそ中西を殺したことを告げていた。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1960年7月上旬夏の特別号

日本映画批評:死者との結婚

1960年6月上旬号

日本映画紹介:死者との結婚

2024/01/29

2024/01/29

-点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 

『死者との結婚』。冒頭のビルの屋上は何処だ?、考える暇なく次のカットに。高知行きの列車で下車したのは何駅だろう。万年筆の書き心地をテストしてる文房具店の外に協和銀行金沢支店。手紙の住所に「讃岐長●」。どこでロケ?。終盤、東山千栄子の朗読部分でウトウト、肝心の部分を見逃す大失態。

2021/02/25

2021/08/06

80点

映画館/大阪府/シネヌーヴォ 


スタイリッシュなサスペンス映画

ネタバレ

『裏窓』や『黒衣の花嫁』などで知られる推理作家ウィリアム・アイリッシュの小説を、田村孟の脚色、高橋治の監督という松竹ヌーヴェルヴァーグコンビで映画化したミステリアスなメロドラマ。主演もヒロインが小山明子で、その相手役に渡辺文雄といった大島渚組である。ただし、渡辺はその後の一連の大島渚作品や『女囚さそり』シリーズの所長のような曲者役、悪役ではなく、この頃はソフトな二枚目を演じている。

ストーリーは、子を宿したまま男に棄てられた光子(小山)が自暴自棄になり、死に場所を探して汽船に乗るところから始まる。ところが汽船は衝突事故を起こして転覆。幸か不幸か唯一の生き残りとして救助された光子が病院で意識を取り戻すと、見知らぬ男(渡辺)が義姉さんと呼ぶ。どうやら事故の直前、汽船で親切にしてくれた新婚夫婦の妻と間違われているようである(直前に光子はふざけてその妻の指輪をはめていた)。新婚夫婦はアメリカで結婚し、四国の実家に帰る途中であった。帰ってから妻を家族に紹介する手はずだったので誰も妻の顔は知らないのだった。

引き取られた保科家は地方の名家であり、人違いだと知る由もない両親は光子を長男の嫁だと思って、手厚く歓迎する。生まれた子供も初孫だと喜んでもらえ、おまけに莫大な遺産まで相続することになる。いつか真相を話そう、話そうと思いつつ、言い出せない光子。さらに義弟の則男との恋も芽生えはじめ、不幸から一転、幸福な人生に変わりかけたとき…当然ながら「全部知っているぞ」といった内容の脅迫状が光子のもとに届くという展開になる。

さすがはアイリッシュという感じで、発想が面白く、ぐいぐい引き込まれるストーリーである。後半には拳銃も出てくるが、全体的には日本への舞台変更もうまく行っているように思える。川又昇の構図を意識したモノクロ撮影が美しいし、前田憲男のモダンジャズも決まっている。圧巻だったのは、汽船の衝突事故の場面。光子らが船室のドアを開けると、画面手前に向かってドバーッと大量の水が流れ込んできて、出演者もセットもあっという間に押し流される。この演出には驚いた。昔の松竹撮影所もやってくれますな!

 ※大阪シネヌーヴォの特集上映「松竹100周年 松竹メロドラマの系譜」より

2021/02/21

2021/02/23

70点

映画館/大阪府/シネヌーヴォ 


沈没逃れて間違われ。

ネタバレ

< 松竹映画100周年 松竹メロドラマの系譜 >の上映作品。

ウィリアム・アイリッシュ(コーネル・ウールリッチ)作品の映画化。恋人に捨てられその子を孕ったまま死のうとした女が船上で夫婦に救われる。一時、その妻の指輪を預かるが船は沈没し、夫婦は死に彼女は生き残る。その妻と夫の家族は面識がなかったため、生き残った女が死んでしまった妻と勘違いされることに…

なりすましを描いた犯罪映画は、地位や財力を欲してのものが多いが、本作の場合は親切な家族を騙すことに良心の呵責を感じながらも心臓の弱い老母の身を案じて真実が言えないという捻った設定。興信所での結果を聞いた後のシーン以外ほとんど沈鬱な表情の小山明子もなかなかいい。

本作の最大の驚きは東山千栄子が銃を撃つという希少なシーン。(もう気が利かないなんて言わせない?)

皆の善意を無にして去っていく主人公に、自分だけ幸せになれないという戦後日本人の贖罪意識を見る。

なお、本作と同じ原作を映画化した作品にシャーリー・マクレーン主演で90年代半ばのアメリカ映画「くちづけはタンゴの後に」がある。マクレーンの役どころが東山千栄子と同じなのだが、ストーリーは同じでも印象が全く違う映画に仕上がっていたように思う。

2019/02/07

2019/02/08

-点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 

『死者との結婚』。指輪を嵌めといてと言うのはかなり不自然だが、この状況を作るためには必要だったのだろう。東山千栄子の優しいお婆ちゃんは沁みる。冒頭の客船はミニチュア。怒涛の水流にはびっくり。小山明子の元彼のアパートの電話にはダイヤルが付いていない。まだ直通通話はできない頃。

2017/07/22

2017/07/22

60点

映画館/東京都/東京国立近代美術館 フィルムセンター 


護るべきものは何ですか

「幻の女」や「黒衣の花嫁」などで知られるアイリッシュ原作のサスペンスを映画化作品で、情報確認が困難だった戦後すぐの時代ならいざ知らず、15年経過して落ち着いてきている時代を背景にしているとすれば、他人になり替わるという事は簡単な事とは思えない。
それでも突然遭遇した沈没事故に、受動的にではあれ加担してしまったなりすましの結果は安寧になる訳も無いのは当然です。
邦画らしく家系や家族の血縁、自分の殻に閉じこもりがちの主人公と、時代性もあってクールなサスペンス劇とはならなかったのも致し方ないと思いました。

2016/03/23

2016/04/11

50点

映画館/東京都/神保町シアター 


中盤まで惹きつけられたが…

ネタバレ

これまで何度も観る機会がありながら逸していて、今回初めて観た高橋治の「死者との結婚」は、アイリッシュの原作が面白いのでしょう、恋人に棄てられ人生を倦んだヒロイン小山明子が、海に身投げしようと乗り込んだフェリーボートで男に助けられ、その男の新妻である瞳麗子に励まされるうち生きる意欲を取り戻すものの、乗っていたフェリーが衝突事故を起こして沈没してしまい、生き残った小山は別れた恋人との間に出来た息子を出産した上、所持品から瞳麗子と間違われ、しかもその瞳も夫も事故で死んでしまい、男の母親である東山千栄子も弟の渡辺文雄も、男の嫁とは会ったことがなかったため、生き残った小山がその人だと思い込んでおり、真実を言い出せないまま小山は、田舎の名家である東山千栄子・斎藤達雄夫妻と息子・渡辺文雄が住む家で、幼い息子と共にその家の嫁として暮らし続けることになるという、中盤まではグイグイと惹き込まれました。変形アイリスみたいな手法が多用された、テンポ良い場面転換も効いていました。
中盤、安穏と暮らし、この生活がこの先も続くようにとモノローグで語っていた小山明子のもとに“お前の正体を知っている”などという脅迫手紙が送られてきて、小山をかつて棄てた男である高野真二が登場し、金をせびるようになる展開も、まずまず面白く観ましたし、高野の脅迫がエスカレートする中で、どのように物語が収束するのだろうと固唾を飲んで画面を観ていたわたくしたちの前で、高野真二が何者かによって殺されるという事態が起きた際にも、この先ヒロイン小山はどうなるのだろう、という興味が引き伸ばされましたし、高野を殺した人物が明かされた時も、やや強引過ぎるとは思いつつも、まあその手があったかと思うものの、そうした真犯人の“厚意”を無にするかのように、小山が子供を連れて家を立ち去ってゆくラストは、あまりにも中途半端な綺麗事として終わらせ過ぎていると、納得できませんでした。