旧大映のレア映画を上映してくれるKCDで観せていただいた「嫌い嫌い嫌い」は、叶順子のフィルムグラフィをチェックしたことがある者なら、「セクシーサイン 好き好き好き」の直後に位置する映画として気になる映画でしたから、観られて有難いと思いましたが、実際の叶順子の出番は多くなく、実は金田一敦子の映画です。
「嫌い嫌い嫌い」は、源氏鶏太原作を須崎勝弥が脚色して枝川弘が監督しているサラリーマン喜劇ですが、些か登場人物を賑やかにし過ぎているし、叶順子のキャラクターも控え目なのか積極的なのかどっち付かずな面があるものの、まあ肩の力を抜いて画面を眺めていれば事が運ばれてゆくお気楽な娯楽作です。
映画の舞台となる某社の本社ビルは、東宝の「社長」シリーズなどでも観慣れた建物で、数年前に取り壊されたことがニュースになっていました。ビルの名前も、どこにあったのかも忘れてしまいましたが、あれもまた映画ファンなら誰もが知っている昭和のアイコンでした。あとで調べたら、日本橋の呉服橋交差点そばに建っていた大和証券本店ビルです。
実質的な主演は三田村元ですが、彼のライヴァルとして田宮二郎と共に出ているのが、この映画がデビューの伊丹一三で、その芝居はお世辞にも誉められたものではありませんでした。三田村元も決して巧くなかったですけどね。
「嫌い嫌い嫌い」は、男優陣が三田村元、伊丹一三、まだ主役を張る前の田宮二郎、付け胸毛だけが印象的な石井竜一ら、女優陣は出番の少ない叶順子、出番は一番多い金田一敦子、観るからに薄幸そうな岸正子らといった出演者で、叶を除けばはっきり言って二線級の寄せ集めですが、結構楽しめました。