シネマヴェーラ渋谷の大映女優特集「性犯罪法入門」はKCD(KADOKAWA CINEMA DIG)で観逃したので観た映画ですが、その時に観て“なんじゃこりゃ”と憤慨していた友人の気持ちが良くわかりました。それにしても、東京の帯盛迪彦を招いてまでして、題材的にも東京のほうが相応しい映画を京都で撮る事情が理解できません。それが最大の謎です。
……そんなことをツイッターで呟いたところ、友人の映画ライター氏から次のような反応がありました。
“想像ですが、組合のストかなにかで東撮がロックアウトされて使えず、やむなく京撮で製作したのでは(60年代末からの大映はたまにこんなケースが)。まあ、京都にはこの手の現代劇、それも企画ものをうまく撮れるひともいなそうだし、監督は東京から連れてくるしかなかったのかも。すでに『ど根性物語 銭の踊り』のころから、時間外労働の拒否などストの影響で現場は苦労したそうです。今後ラピュタでやる『十代の妊娠』も大映性春路線のなかでこれだけポコッと京都撮影所ですね。”
……なるほど、倒産間近の大映では、そんなこともありそうです。
さて「犯罪法入門」は、何せポスターで一番大きく扱われている写真が、原案監修とクレジットされた推理作家の佐賀潜なのですから、それより他に売り物の要素がないとも言え、末期大映の台所事情の苦しさが露呈しています。こんな映画で息子の嫁・笠原玲子との痴態に及ぶ戦前日活の大スター杉狂児が痛々しいです。
キャメラは森田富士郎。時折見せる真上からの俯瞰ショットや、入江洋佑が妻の笠原玲子を乗せて車を暴走させる場面でのタイヤ舐めのショットなど、森田らしい切れ味があったものの、東京から来た帯盛迪彦の作劇テンポに切れ味がなく、森田キャメラを活かしきれず仕舞いでした。