犬シリーズの第八作目であります。村野鐵太郎監督作品。タイトルバックで田宮二郎のガンアクションをストップモーションで魅せます。
宿無し鴨井大介(田宮二郎)は、いつの間にか東京でギターの流しを生業としてゐるやうです。美声を披露しゴキゲンであります。これまで見せなかつた一面です。
鴨井は予想屋の常(藤岡琢也)や白タク運転手の五郎(小沢昭一)と共に、カネは無いながら気ままな生活を送つてゐます。この二人は終盤のレギュラーとして定着したやうです。五郎には出産間近い女房の玉子(坂本スミ子)がゐて、その為にも仕事に精を出してゐます。
この五郎、九十九会といふヤクザのカシラ・白井(伊達三郎)に依頼され、関西方面に車を走らせてゐました。ところがこの車が何者かに襲撃され大破、爆発します。焼死体が発見されますが、損傷が激しく身元が分かりません。警察は死体は白井と認定し、五郎が殺害・逃走したと見て指名手配します。
ショボクレこと木村刑事(天知茂)は玉子に、五郎は犯人ではないと自分も思ふから、貴方も信じなさいと告げます。鴨井は知らせたショボクレを怒りますが。しかしショボクレ情報によると、九十九会の白井は天心精霊会なる新興宗教団体と結託し、麻薬の売買で儲けてゐるらしい。捜査の途中で鴨井は五郎を発見します。五郎によると焼死体は天心精霊会のカシラ・天心(北城寿太郎)であり、白井は自分を犯人に仕立てやうとしたので、逃走したとのこと。
怒つた鴨井は天心精霊会に乗り込み、天心の覆面を剥ぎます。案の定、正体は白井でした。大乱闘となりますが、鴨井が負ける筈がありません。いつものやうに鴨井はワルを殺さず、警察に任せて去るのであります。
ゲスト出演者に印象的な人が多い。通常はチンピラ役が多く、早々と死ぬ事が多い伊達三郎がカシラであります。この風貌、面構へは一度見たら忘れられませんね。秘かなファンも多い。
その伊達の情婦役に堕ちてゐた江波杏子は薬漬けにされてゐました。途中で殺されてしまふが、どうやら鴨井を狙つた弾が当つたやうです。幸薄い役で、彼女が演じるのは勿体ないとも感じます。
その妹役に嘉手納清美さん。姉に会ひたい一途な態度が好印象です。「ウルトラセブン」ではニセウルトラセブンを操るワルとして登場しましたが。
吃驚したのは財津一郎さんですな。気持ち悪いオカマ役だつたのが、実は......!といふ意外性。若い頃から濃ゆい人ですね。
天知茂とのコンビも板についた一作で、お馴染みの坂本スミ子、小沢昭一、藤岡琢也も良い。シリーズならではの愉しみに満ちた娯楽作と存じます。