帰ってきた狼

かえってきたおおかみ|----|----

帰ってきた狼

レビューの数

7

平均評点

58.7(19人)

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34

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0

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル ドラマ
製作国 日本
製作年 1966
公開年月日 1966/5/11
上映時間 78分
製作会社 日活
配給 日活
レイティング
カラー シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督西村昭五郎 
脚本倉本聰 
明田貢 
企画水の江滝子 
撮影姫田真佐久 
美術坂口武玄 
音楽三保敬太郎 
録音神保小四郎 
照明岩木保夫 
編集丹治睦夫 
スチル斎藤耕一 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演鍵山順一 
山内賢 雪三
ジュデイ・オング リカ
ケン・サンダース イチ
小沢栄太郎 江木俊之助
弘松三郎 純の父
宮城千賀子 純の母
高品格 吾平

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

「北国の街」の倉本聰と明田貢が共同でシナリオを執筆、「競輪上人行状記」の西村昭五郎が監督した青春もの。撮影は「明日は咲こう花咲こう」の姫田真佐久。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

晩秋のある朝、純は新聞で実業家江木俊之助の溺死事件を知った。しかし純には、それが、事故死ではなく、明らかに池殺であることがわかっていた。--数カ月前の夏、一日中標本いじりばかりしていた純を、両親はせきたてるように海に連れだした。むろん純の健康状態を気づかってのことだ。それで仕方なく純は捕虫網をかついで海岸へ出た。その純の視野へヨットに乗った、派手なビキニをまとった小麦色の肌をした美しい女リカがとびこんできた。リカは純の父の知人の娘であり、同乗の青年雪三は、混血の美しい青年であった。この雪三は去年傷害事件を引きおこしていた。傷つけた相手は集落民である雪三らを追いだして、海岸に歓楽境をつくりあげようとした実業家江木であった。海に育ち、海を心から愛していた雪三には、それがどうにもがまんできなかったのだ。リカは、そんな雪三のたくましい身体と、その顔に時としてやどる深いかげに次第に魅かれていった。こうしてリカは、ある時は純に優しくし、ある時は雪三と熱い接吻をかわし、二人の男の心を小悪魔のようにくすぐり、嫉妬心をあおった。そしてリカはことあるごとに、雪三に再び江木を刺すことをけしかけた。そうしたある日雪三は同じ混血の仲間イチに会った。イチも静かな海を愛していた。「オレは決めた--」そお言い残すとイチは単身江木を刺しにでかけた。が、偶然そばにいた純が江木をイチの突きだすナイフから救った。イチは警察に連れ去られた。それを見ていたリカは、雪三がイチにやらせたものと誤解して激しく雪三をののしった。それから数日たったある夜、リカのヨットが突然火をふいた。この附近を荒す雷族たちの仕業であった。火災の中、どこからとびだしたか、雪三が野獣のようにはねまわり、雷族たちを叩きのめす姿があった。その事件を境に雪三はプッツリと純やリカの前から姿を消していたのだ。--純が事件を知らせにリカをヨットハーバーに訪ねると、リカは相変らず沢山の男友だちにかこまれ、新造のヨットで晩秋の海にでていくところであった。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

1966年6月下旬号

日本映画批評:帰ってきた狼

2020/08/07

2023/12/14

75点

選択しない 


狼と呼ぶには繊細な山内賢

ネタバレ

 1965年製作、66年公開の西村昭五郎監督作品「帰ってきた狼」であります。脚本は倉本聰と明田貢、撮影監督は姫田真佐久、音楽は三保敬太郎。主題歌「白い砂」を歌ふのは水島輝子。本編にも本人役で登場し、歌つてゐます。

 ある日の朝食時、純(鍵山順一)は新聞で、実業家江木(小沢栄太郎)の溺死を伝へる記事を見つけます。そのまま食卓を立つて何処かへ行つてしまふ純。一体何があつたのか。
 その数か月前の事、純の一家は葉山に避暑に来てゐました。趣味の昆虫を見つける為に海に出てきます。出演者も「海に昆虫はない」と発言しますが、ごもつとも。ここで純の両親の知り合ひである資産家の娘・リカ(ジュディ・オング)と知り合ひます。この出会ひの為に純を無理矢理海へ行かせる脚本は少し無理があります。

 リカは自分のボートを所有してゐて、雪三(山内賢)といふ青年がヨットの世話をしてゐました。雪三は「トンガの土人だつた母と日本人の父のあひのこ」と、放送禁止用語で説明されます。彼は湘南の海を愛してゐて、葉山の海岸を破壊しホテルや歓楽街を建てやうとする江木を刺した過去があります。それで皆から恐れられ嫌はれてゐますが、夏になるとこの海に戻つて来るのだとリカの世話をしてゐる吾平(高品格)が語つてゐました。

 リカと純がヨットに乗つてゐると、如何にも頭の悪さうな不良どもに襲はれますが、雪三が追つ払ひ、純は彼に好意を持ちます。リカは純と雪三を手玉に取るやうな態度を取りますが、雪三はヨットが好きだから一緒にゐると言ひます。それが分相応だと。
 リカは雪三にもう一度江木を刺すやうに焚き付けますが、それを事前に知つた純が江木を助けます。雪三には同じ境遇のイチ(健サンダース)と云ふ友人がゐて、彼も同様に江木を憎んでゐます。それでイチが江木を狙ひますが、事前に警察に捕まり未遂に終ります。しかしリカは、雪三がイチにやらせたものだと誤解し、激しく雪三を罵るのでした......

 西村昭五郎監督がロマンポルノ以前に撮つた、太陽族もどきの湘南映画であります。それまで優等生的な役柄が多かつた山内賢をワイルドな役に挑戦させてゐます。しかし狼と呼ぶには大人しく、誤解されてもセリフで言ひ訳をしないので、やきもきさせます。ジュディ・オングを秘かに愛しますが、自分の出自(トンガ土人とのあひのこ)が彼女と釣り合はない事を自覚してゐるので、彼女のヨットを世話する事でその思ひを表現してゐます。ナイーヴで影のある青年を好演してゐます。

 一方でジュディ・オングは可愛いですが、かなり無理をしてワルぶつてゐる感じがして痛々しいです。彼女には悪いけれど、とてもお嬢様には見えません。和泉雅子の不良、加賀まりこの小悪魔はサマになつてゐるのに比べて、少し残念。
 そしてこの二人といはば三角関係をなすのが、鍵山順一。何故か新人扱ひですが、もう何年も前から映画に出てゐるでせう。演技はやや生硬ながら、昆虫標本にしか興味がない真面目青年を中中良く演じてゐます。一時は雪三とリカの関係を疑つたものの、リカのヨット放火の濡れ衣を着せられリカにも誤解されたまゝ護送される山内賢の心情を理解したのは、彼だけでした。本作の狂言回し的な存在でもあります。

 ジュディ・オングのヨットはあつさりと新造され、山内賢の苦悩は何事もなかつたかのやうな展開。もう来年以降は、夏になつても狼は帰つて来ないだらうと予測させ、湘南の若者たちの狂騒曲は幕を閉ぢるのでした。

2021/09/06

2021/09/07

65点

VOD/Amazonプライム・ビデオ 


海をめぐる対立と。

ネタバレ

西村昭五郎監督、山内賢、ジュディ・オング主演による1966年作品。ボートを乗り回す資産家の家の若者たちと、貧しい生まれの混血児の一時の交流を描く。タイトルは、リゾート地として開発されることに反対して開発推進者を刺してしまった混血児がまた海辺に帰ったことを示している。

石原裕次郎をスターダムに送り出し、その後の日活の流れを決定づけた「狂った果実」と、西村昭五郎らが牽引した日活ロマンポルノ作品群の中間点にあるような作品。

母の故郷であるトンガの海に似た故郷が開発によって消え去ることを憂いて反抗に及んだ混血児を山内賢が演じているのだが、このキャスティングは肌を濃く塗っても無理がある。若者たちの中の格差や片思い、多数派の中に負けていく社会の非情などのテーマの角が削ぎ落とされ、惜しい。

2018/01/20

2018/04/03

65点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 


もっと語られて良い佳作

シネマヴェーラ渋谷の西村昭五郎特集「帰ってきた狼」は、約40年前、今はなき上板東映での倉本聰脚本映画特集で、井上芳夫「君は海を見たか」、渡哲也版「陽のあたる坂道」、中平康「現代っ子」などと一緒に観た事がありますが、さすがに40年前だとまるで覚えておらず、今回初めて観たも同然でした。
湘南の海。ヨットを所有している金持ちの我が儘お嬢様ジュディ・オング。そのオングの言いなりになってしまう童貞の受験生坊や・鍵山順一。そんな二人の前に現れるトンガの混血児・山内賢。ジュディ・オングを狙ってオートバイやヨットで誘ったり脅したりする吉田武史や市村博、根岸一正らの不良たちと、彼らに対峙する山内賢。その山内賢が1年前に刺したため脚を引きずっている実業家・小沢栄太郎が、推し進めようとしている葉山での娯楽センター構想と、それに反発する山内賢、ハーフ仲間のケン・サンダース。
この「帰ってきた狼」に描かれるティーンたちのひと夏の体験は、「狂った果実」の太陽族映画を作った日活の伝統を受け継ぐものであると同時に、明らかに5年後に作られる「八月の濡れた砂」に連なる湘南映画の流れの中に位置付けられる映画であり、「狂った果実」や「八月の濡れた砂」ほどに人々の人口に膾炙することのない映画ではあるものの、姫田真佐久が作るシャープで陰影の深い画面や、三保敬太郎によるメランコリックな劇伴とともに、もっと語られて良い佳作ではありましょう。
西村昭五郎の監督作として、「競輪上人行状記」ほどの傑作にはなっていないとはいえ、上出来の部類であることは間違いないでしょう。

2018/01/20

2018/01/20

30点

映画館/東京都/シネマヴェーラ渋谷 


外洋に出ず、入江に留まる若者

誰かが何処かに遠慮したようなつくりで、弾ける若者たちが描かれていないのが気になります。
大人目線での好青年を良しとするような展開は、時間経過したのちに懐かしく思い出す為だけのもののようで、通過儀礼にもなっていないお粗末さでした。

1975/12/21

2014/09/07

63点

映画館/神奈川県 


ターキーが企画

本作は水の江滝子の企画。山内を何とか伸ばしてスターに育てようとしていたのではなかろうか。

2013/04/12

2013/04/12

48点

テレビ/有料放送/チャンネルNECO 

若き日のジュディ・オングが可愛い。
山内賢が悪ぶっているが、余り似合っていない。
遅れてきた太陽族映画。