タイトルに「賭博師」とか「ダイス」などと入つてゐませんが、ギャンブラーシリーズの第三作目であります。監督は「流れ者」シリーズの山崎徳次郎が担当。三作目にして漸くカラー作品となりました。
冒頭では、主人公・氷室浩次(小林旭)がさすらひのギャンブラーになつたきつかけとなつた事件を復習してゐます。辺見(芦田伸介)といふイカサマ師の為に兄と妹を殺され、一旦は博奕から足を洗つた氷室。しかし世間のしがらみは氷室の左手に再びダイスを握らせるのでした。
辺見への復讐の為、信州のとある町を訪れる氷室。刑事の木戸(井上昭文)も氷室の目的を見抜き尾行してきました。この町では貝原組がブイブイ言はせ庶民を困らせてゐます。貝原(金子信雄)の娘・瑞枝(高田敏江)は、カタギのダンプ運転手の矢代(小高雄二)の妻となつてゐます。その所為か貝原は何かと矢代に嫌がらせをするのでした。
氷室は貝原の子分たちにダンプをパンクさせられた矢代を助け、居合せた戸川聖子(松原智恵子)といふバレエダンサーと知り合ひになります。ところがこの聖子の父が,、氷室の追ふ辺見だつたのです。聖子を傷つけずに、如何に復讐を遂げるか......
ストオリイや世界観が渡り鳥シリーズとかなり似通つてきました。氷室浩次のキャラクテールも滝伸次とかなり被つてゐます。違ふのは、当然ながらギャンブルで決着を付けるところ。渡り鳥や流れ者でもダイスを振つたりカードを繰る場面はありますが、ここではそれがメインとなつてゐます。従つて同じダイスを振る場面でも、様様なパタンを披露してゐます。かなり練習したか、中中様になつてをります。
他作品と比しても、今回のアキラは哀愁を感じさせる演技。恨み重なる芦田伸介と、その娘である松原智恵子の間で葛藤するマイトガイ。王道のストオリイと相俟つて愉しめる一篇です。
ワルは芦田に加へ、金子信雄が盤石振りを見せます。人格者の小高雄二、人情刑事の井上昭文、可憐な松原智恵子、父と夫の板挟みの高田敏江など、それぞれがイメエヂ通りの配役で、安心して観られる娯楽作と申せませう。