フィルムセンターの加藤泰生誕100年記念特集、30本目。加藤泰映画と言えば「喧嘩辰」。何度観ても大笑いし、胸躍り、心締め付けられ、背筋に何度も戦慄が走り抜ける、個人的なナンバーワン映画です。
加藤泰映画と言えば橋。「お竜参上」における雪の今戸橋での蜜柑の転がりの例を出すまでもなく、ほぼ全ての映画で橋が効果的に使われていますが、中でも「喧嘩辰」は、内田良平が桜町弘子を川に投げ込む橋を始めとして、ラスト、三度目の正直で二人だけの祝言を挙げる霧の中の橋まで、橋の上で情念がぶつかりあう、まさに橋の映画「喧嘩辰」です。
加藤泰映画と言えば若い恋への応援歌。「炎のごとく」での国広富之と豊田充里の恋を、文太ら大人たちが挙って応援する話や、「お竜参上」での長谷川昭男と山岸映子へのシンパシーなどと同じように、「喧嘩辰」では内田の弟分・河原崎長一郎と桜町の妹分・藤純子の恋を成就させようと、内田らが尽力するのですが、その先に悲劇が待っており、映画全体が哀しき情感を盛り上げます。