五番町夕霧楼(1963)

ごばんちょうゆうぎりろう|A House of Shame|----

五番町夕霧楼(1963)

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レビューの数

20

平均評点

79.1(63人)

観たひと

90

観たいひと

10

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル 文芸
製作国 日本
製作年 1963
公開年月日 1963/11/1
上映時間 137分
製作会社 東映東京
配給 東映
レイティング
カラー カラー/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督田坂具隆 
脚色鈴木尚之 
田坂具隆 
原作水上勉 
企画岡田茂 
亀田耕司 
矢部恒 
製作大川博 
撮影飯村雅彦 
美術森幹男 
音楽佐藤勝 
録音内田陽造 
照明川崎保之丞 
編集長沢嘉樹 
スチール加藤光男 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演佐久間良子 片桐夕子
河原崎長一郎 櫟田正順
進藤英太郎 酒前伊作
木暮実千代 かつ枝
丹阿弥谷津子 久子
岩崎加根子 敬子
木村俊恵 照千代
霧島八千代 雛菊
清水通子 紅葉
谷本小夜子 団子
安城百合子 きよ子
標滋賀子 松代
赤木春恵 お新
岸輝子 おみね
宮口精二 片桐三左衛門
風見章子 
北原しげみ 菊市
山本緑 三田看護婦
東野英治郎 国木はん
小林寛 勇はん
河合絃司 フーさん
千田是也 鳳閣寺和尚
織田政雄 鳳閣寺寺男
相馬剛三 燈全寺役僧1
織田政雄 燈全寺寺男
千秋実 竹末甚造

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

水上勉の同名小説より「武士道残酷物語」の鈴木尚之、「ちいさこべ」の田坂具隆が共同で脚色、「ちいさこべ」の田坂具隆が監督した文芸もの。撮影は「無法松の一生(1963)」の飯村正彦。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

京都五番町タ霧楼の女将かつ枝は、夫伊作の死を聞いて駆けつけた与謝半島樽泊で、はじめて夕子に会った。夕子の家は木樵の父三左衛門と肺病の母、それに妹二人という貧乏暮らしであった。色白で目もとの涼しい夕子を、かつ枝は一目見て、いける子だと思った。長年の水商売の直感だ。夕霧楼につれてこられた夕子は、同僚のうけもよく、かわいがられた。そんな夕子にかつ枝は、夕霧楼とは長年のお得意の西陣の織元竹末甚造に水揚げをたのんだ。夕子の境遇に同情したおかつのはからいなのだ。数年前妻をなくし、独り暮しをつづける甚造は夕子の旦那としてはかっこうの男だった。それから素直にうなづいて甚造に従う夕子の姿が、夕霧楼にみられるようになった。甚造も美しい夕子の身体をほめ、ひきとりたいとおかつに話した。そんな時、この夕霧楼に一見学生風の陰気な男が、夕子を訪ねて来る様になった。見とがめたかつ枝の忠告を、常になくはねつける夕子の固い態度に、かつ枝は意外に思った。青年は櫟田正順という鳳閣寺の小僧だった。織物の展示会の日、甚造が会場に借りた燈全寺で青年を見てわかったのだ。寺の小僧に遊女を買う金がある筈がない。夕子を問いつめたかつ枝は意外なことを聞かされた。夕子と正順は幼な馴染みで、吃音のため誰からも相手にされず、狐独な正順を、夕子がかばっていたというのだ。泊っても、二人は故郷の美しい風景を語ったり童謡を口づさんでいるという。そして遊びの金は全部夕子が自前でもっていたというのだ。社会から疎外されうとまれる正順も、夕子にとってはかけがえのないやさしい人であった。夕子の身体を心配して高価な薬をもって来る正順、そんな二人も、甚造の企みから正順は鳳閣寺で折かんを受ける身となり、夕子も肺病で身を横たえる運命にあった。そんな夕子の耳に鳳閣寺放火の声が!! 狐独な正順の心が社会に放った復讐の一念だった。留置場で正順が自殺したと報じる新聞を手に、夕子は美しい百日紅の花のある故郷をなつかしく思った。蒼く澄んだ日本海を下に見る、故郷の墓地、今は全てを失った薄幸の夕子のうえに、その死体をつつむようにして真紅な百日紅が散りかかっていた。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2020/12/27

2020/12/27

75点

テレビ/有料放送/東映チャンネル 


もう一つの「金閣寺」

金閣寺放火事件をモチーフにした別の話。女郎の純情と愛を描く。
ヒロイン夕子(佐久間良子)は家族のため遊郭へ身を売る。もう一つは幼なじみの正順(河原崎長一郎)が京都の寺へ修行に出ていることから正順に会えるかもしれないという期待もあった。正順はどもりでみんなから馬鹿にされていたが夕子には心を開く仲だった。
遊郭の物語と言うより、女学校の仲間の物語のようで、ぎすぎすしたところがない。もちろん女将(木暮実千代)は旦那の世話もするし、欲得ずくの所もあるが、女将は優しく、朋輩(丹阿弥谷津子、岩崎加根子ら)も優しい人たちばかりだった。
転機は旦那に夕子の所へ正順が通ってくるところを見られ、寺に告げ口されたことである。このため正順は寺から出られなくなり、夕子もまた結核で入院することになったことである。
女将が親切心から正順に入院のことを話したため、彼は絶望して寺に放火する。夕子もまた故郷へ帰り自殺する。
佐久間良子の抑えた演技が良い。また、木暮実千代の女将もこれまた絶品。
余談だが、着物の展示会の会場は大徳寺らしい。大仙院の有名な枯山水などにも帯が飾ってあったが、今なら文化庁が許可しないだろうなあ。

2020/10/08

2020/10/12

75点

選択しない 


望郷の念

ネタバレ

 映画やテレビへと映像化された作品も数多い水上勉原作による悲恋映画。ヒロインを佐久間良子が演じている。彼女は本作での演技が評価されたこともあってかこのあとも「越後つついし親知らず」「湖の琴」と水上作品に主演している。
 丹後(与謝)半島の木樵(宮口精二)の娘という垢抜けない夕子が女将(木暮実千代)の目に適って京都の遊郭へと連れてこられるのだけど、最初こそ色黒でおどおどした様子だったのが徐々に遊女らしく洗練されていくその変化を監督は巧みに演出、演じた佐久間もそれに敏感に反応しているといった様子だ。
 この冒頭の半島の様子が素晴らしいロケーションであって、それがのちのち遊郭で働く夕子の回想として立ち現れることになる。
 赤線廃止前という時代設定(売春防止法の施行は昭和32年4月)であり遊女は昔ながらに男をとってなんぼという時代だ。映画では背景にチャタレイ裁判、金閣寺(映画では鳳閣寺)炎上(ともに昭和25年)を伝える新聞記事が挟み込まれるシーンもある。
 夕子の初の水揚げに上客を充てがう女将。夕子を充てがわれる男がタァさんと呼ばれる甚造。西陣織の織元という設定がいかにも京都らしく、演じた千秋実が何とも女に目のない旦那はんを好演している。夕子の身体のよさを女将に自慢げに話している。
 ということで映画では濡れ場を見ることはできない。その代わりセリフでその様子が語られる。今では物足りないと思われるかもしれないが、何も肌を晒すばかりが女優ではないとも最近思うようになり、むしろこうした控えめな演出にむしろ色を感じるようになった。年を取っただけかもしれないが。
 女将の方針に逆らいタァさん以外にも客を取る夕子。おどおどした少女がいっぱしの遊女にまでなっていることを感じさせる。その客の中に彼女の運命を変えることになる幼馴染、正順(河原崎長一郎)がいるというわけ。
 夕子のストーリーの中に金閣寺炎上のエピソードを組み合わせることで現実との接点を設け、よりドラマティックな筋書きにしている。
 もっとも田坂具隆監督の視点はあくまでヒロインの夕子にあり、それは再三差し挟まれる故郷の百日紅の赤い花のショットに象徴されている。
 若い身空を遊郭という苦海に沈めた女。正順という男の存在は故郷との唯一の繋がりであったのだと思う。それが絶たれた彼女には何も残らない。せめて最後はと、故郷の赤い花の下で命を絶つ。百日紅の花に彼女の悲しい運命を象徴させていた。

2020/06/01

2020/06/02

70点

購入/DVD 


初めて見たときはとても感動しました

松竹版を見て見直しましたが然程差異は無いですね。監督緑、演技力には大きな違いが有りますが50歩100歩です。

2019/10/21

2019/10/21

80点

購入 


金閣寺放火全焼事件。

田坂具隆 監督による、文芸・悲恋・純愛ドラマ。
昭和25年京都の廓、夕霧楼に、肺病の母を救うため、夕子(佐久間良子)が身売りして来た・・・。

(昼メロの傑作といった感じ。主人公の純愛を柱に据えて、廓の女将、ご執心の旦那、それら、思惑を描いていく。)
(舞台が廓のわりに暗い話は出てこない。登場人物もどちらかというと良い人達で、その辺りに違和感がなくもない。映画を見る人のために美しくきれいに創作したのでしょう。)
(もう一つの違和感は、身売り前の佐久間良子が綺麗すぎる・・・身なりも小奇麗。)
(見どころは、主人公が、初めての外出を境に性格がガラリと一変してしまうところ。
幼馴染との恋が再燃し、アドレナリンが上がった様です・・・佐久間良子が熱演す。)

2000年代

2019/04/23

70点

レンタル 


明暗の対照

ネタバレ

物語の終盤、突如として実際の事件が絡んでくる展開に意表を突かれる。ただ、そのことが凡百のメロドラマ以上の奥行きをこの物語にもたらしているのもまた事実。また、夕子と正順の揺れ動く心情の投影でもあろう、晴朗な故郷と暗い夕霧楼の明暗の対照際立つシークエンス展開効いていて、マッタリと停滞しがちな物語に申し分のない的確なリズムを刻んでいた。

初々しい中にもシットリとした大人の色香を漂わす佐久間良子とともに、薄情な好色親爺を見事に演じきった千秋実の抜群の存在感が光るオーソドックスな文芸映画だった。ちなみに、同じ事件を扱った市川崑の「炎上」との比較も一興だと思う。

2018/10/11

2019/01/22

100点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


佐久間良子の存在感

 これももう3回観てしまった。最初シネマヴェーラ渋谷で1回、その後ラピュタ阿佐ヶ谷で2回。自分が心から良いと思える作品は何度観ても良いのだ。
 何より佐久間良子が本当に美しい。この頃は佐久間が最も輝いていた時期ではなかったか。彼女の演技は絶品で、少なくとも私にとっては、本作の佐久間良子の右に出るような演技ができる女優は恐らく日本にはいないと思う。
 佐久間良子の幼馴染で、「どもり」であるがゆえに誰からも相手にされず、一人ぼっちになってしまった青年僧・河原崎長一郎の悲哀も胸に沁みる。佐久間の友達で短歌をつくるのが好きな遊女は岩崎加根子。目がパッチリしてて可愛い(笑)。実は彼女が物語の後半で重要な役割を果たしていく。
 劇中、扇子の柄が度々変わる。季節の移り変わりを表現しているのだ。こういう小道具の活かし方、上手い。舞台となる京都・五番町遊郭の町並みはセットで再現されている。見事なセットだ。佐久間の地元は与謝群伊根町でロケを行い、見事にその風景をとらえている。観ているだけでうっとりしてしまう。サルスベリの花が色鮮やかだ。
 その他、性描写はあえて全体を見せない、もしくは思いきって省く手法がとられており、かなり抑制が効いたものになっている。原爆の被害に遭った過去を持ち、突然の落雷でフラッシュバックを起こしてしまう遊女も印象的。田坂監督の人柄がよく出ていると思う。千秋実が織物の展示会に行く場面では、サイレント映画みたいな演出が試みられていて、何か微笑ましい。佐藤勝の音楽も素晴らしかった。