五番町夕霧楼(1963)

ごばんちょうゆうぎりろう|A House of Shame|----

五番町夕霧楼(1963)

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レビューの数

27

平均評点

77.9(82人)

観たひと

108

観たいひと

12

基本情報▼ もっと見る▲ 閉じる

ジャンル 文芸
製作国 日本
製作年 1963
公開年月日 1963/11/1
上映時間 137分
製作会社 東映東京
配給 東映
レイティング
カラー カラー/シネスコ
アスペクト比 シネマ・スコープ(1:2.35)
上映フォーマット
メディアタイプ
音声

スタッフ ▼ もっと見る▲ 閉じる

監督田坂具隆 
脚色鈴木尚之 
田坂具隆 
原作水上勉 
企画岡田茂 
亀田耕司 
矢部恒 
製作大川博 
撮影飯村雅彦 
美術森幹男 
音楽佐藤勝 
録音内田陽造 
照明川崎保之丞 
編集長沢嘉樹 
スチール加藤光男 

キャスト ▼ もっと見る▲ 閉じる

出演佐久間良子 片桐夕子
河原崎長一郎 櫟田正順
進藤英太郎 酒前伊作
木暮実千代 かつ枝
丹阿弥谷津子 久子
岩崎加根子 敬子
木村俊恵 照千代
霧島八千代 雛菊
清水通子 紅葉
谷本小夜子 団子
安城百合子 きよ子
標滋賀子 松代
赤木春恵 お新
岸輝子 おみね
宮口精二 片桐三左衛門
風見章子 
北原しげみ 菊市
山本緑 三田看護婦
東野英治郎 国木はん
小林寛 勇はん
河合絃司 フーさん
千田是也 鳳閣寺和尚
織田政雄 鳳閣寺寺男
相馬剛三 燈全寺役僧1
織田政雄 燈全寺寺男
千秋実 竹末甚造

解説 ▼ もっと見る▲ 閉じる

水上勉の同名小説より「武士道残酷物語」の鈴木尚之、「ちいさこべ」の田坂具隆が共同で脚色、「ちいさこべ」の田坂具隆が監督した文芸もの。撮影は「無法松の一生(1963)」の飯村正彦。

あらすじ ▼ もっと見る▲ 閉じる

京都五番町タ霧楼の女将かつ枝は、夫伊作の死を聞いて駆けつけた与謝半島樽泊で、はじめて夕子に会った。夕子の家は木樵の父三左衛門と肺病の母、それに妹二人という貧乏暮らしであった。色白で目もとの涼しい夕子を、かつ枝は一目見て、いける子だと思った。長年の水商売の直感だ。夕霧楼につれてこられた夕子は、同僚のうけもよく、かわいがられた。そんな夕子にかつ枝は、夕霧楼とは長年のお得意の西陣の織元竹末甚造に水揚げをたのんだ。夕子の境遇に同情したおかつのはからいなのだ。数年前妻をなくし、独り暮しをつづける甚造は夕子の旦那としてはかっこうの男だった。それから素直にうなづいて甚造に従う夕子の姿が、夕霧楼にみられるようになった。甚造も美しい夕子の身体をほめ、ひきとりたいとおかつに話した。そんな時、この夕霧楼に一見学生風の陰気な男が、夕子を訪ねて来る様になった。見とがめたかつ枝の忠告を、常になくはねつける夕子の固い態度に、かつ枝は意外に思った。青年は櫟田正順という鳳閣寺の小僧だった。織物の展示会の日、甚造が会場に借りた燈全寺で青年を見てわかったのだ。寺の小僧に遊女を買う金がある筈がない。夕子を問いつめたかつ枝は意外なことを聞かされた。夕子と正順は幼な馴染みで、吃音のため誰からも相手にされず、狐独な正順を、夕子がかばっていたというのだ。泊っても、二人は故郷の美しい風景を語ったり童謡を口づさんでいるという。そして遊びの金は全部夕子が自前でもっていたというのだ。社会から疎外されうとまれる正順も、夕子にとってはかけがえのないやさしい人であった。夕子の身体を心配して高価な薬をもって来る正順、そんな二人も、甚造の企みから正順は鳳閣寺で折かんを受ける身となり、夕子も肺病で身を横たえる運命にあった。そんな夕子の耳に鳳閣寺放火の声が!! 狐独な正順の心が社会に放った復讐の一念だった。留置場で正順が自殺したと報じる新聞を手に、夕子は美しい百日紅の花のある故郷をなつかしく思った。蒼く澄んだ日本海を下に見る、故郷の墓地、今は全てを失った薄幸の夕子のうえに、その死体をつつむようにして真紅な百日紅が散りかかっていた。

キネマ旬報の記事 ▼ もっと見る▲ 閉じる

2024/11/23

2024/11/25

77点

映画館/東京都/国立映画アーカイブ 


田坂の視線は底辺の女たちに常に優しい

市川崑『金閣寺』(原作・三島由紀夫)の金閣寺炎上の視点を変えた物語。主役は金閣寺の修行僧ではなく、幼馴染で京都の遊郭に売られた遊女。遊女でありながら幼馴染を客としてとる異様な行動に、女主人が訝しく思うというところからドラマが生まれる。
影の主役はその女主人の木暮実千代。遊郭の主人のわりに悪人ではない。不安定な主人公を守ろうと彼女なりに動くこともある。それが最悪の結果(金閣寺炎上)に繋がることも知らずに。しかしそれを悪く描くことはない。田坂監督の視線は底辺で働く女たち(主人公の夕子(佐久間良子)に対しても女主人に対しても)常に優しい。
社会に翻弄される遊女という物語なのかと思っていたが、修行僧と遊女になった主人公の純愛の物語であった。肩透かしをくらった気分ではあったが、遊郭を舞台にしながら純粋な愛を表現した。

2024/11/19

2024/11/19

-点

映画館/東京都/国立映画アーカイブ 

『五番町夕霧樓』(1963年、東映)。特飲店と呼ばれていた頃だろうか。娼妓の取り分は6割。赤い百日紅と長襦袢。佐藤勝の美しく悲し気なテーマ曲。夕子(佐久間良子)の部屋は竹の床柱、素敵。放火されたのは鳳閣寺。老衰の進藤英太郎、お見事。棚の扇面の絵柄で季節が分かる。ハガキは議事堂2円。

2023/11/11

2023/11/19

100点

映画館/東京都/神保町シアター 


劇場鑑賞5回目

 ヒロインの故郷、そこに残した家族への想いをインサートしながら淡々と物語が進行するが、やがて同郷のよしみであったどもりの学生僧の存在がそれを揺れ動かす。ミステリアスな雰囲気を醸しながらも端正かつ上品なタッチで男女の悲恋を描いた傑作。ポスターには「成人指定」とあるが、遊郭が舞台だからそうなっているのだろう、エロの要素は全くない。後年のピンク映画だのポルノ映画なんかとは格が違う。途中から療養生活に入る主人公・佐久間良子の想いを代弁する岩崎加根子のフォローもナイスです。

2023/03/24

2023/03/24

-点

映画館/東京都/国立映画アーカイブ 

『五番町夕霧楼』(1963年、東映)。片桐夕子役は佐久間良子。櫟田正順役は河原崎長一郎。故郷は京都府の日本海側、陸路より海路の方が便がいい。扇面の絵柄で季節を示す。夕子の部屋の竹の床柱はJ字、珍しい。五番町の街はセットのようだが、奥には市電(作り物)が走っているのが見える。百日紅。

2022/11/23

2022/12/11

60点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


佐久間良子の美しさと儚さ

松坂慶子版('80)は観ていたが、佐久間良子版は初めて。なので、金閣寺炎上にいたる話はわかっているので、佐久間良子を観る。特集チラシに書かれていた「佐久間良子の美しさと儚さ、絶品」に納得。幼馴染、そして初めての相手の櫟田(くぬぎだ)正順は、河原崎長一郎。ちなみに、松坂版では奥田瑛二。【伝説の美女、魅惑の独演 昭和の銀幕に輝くヒロイン[第103弾]佐久間良子】

2022/11/23

2022/11/23

100点

映画館/東京都/ラピュタ阿佐ヶ谷 


劇場鑑賞4回目―京都での話を東映東京が撮る

 その後の路線変更を考えると、とてもじゃないけど東映の作品とは思えないくらいに上品な作風。ある意味、奇跡としか言いようがない出来栄え。京都が舞台の話でありながら、東映東京が撮っているというのもまた興味深い。
 田坂具隆監督は東映にて前年に「ちいさこべ」、更にその前年には「はだかっ子」を撮っているが、両者と比べものにならないくらいその作劇や演出はグレード・アップした。監督は同じ日活出身の内田吐夢監督とよく対比されるが、各々の違いがこの頃から鮮明に表れたのではないだろうか。内田監督は男性的でスケールの大きい骨太な作風、田坂監督はもっとこぢんまりとしてはいるが、詩情溢れ、なおかつ女性の撮り方が巧い。雷で原爆の記憶がフラッシュ・バックする女性を登場させる辺りがいかにも監督らしいが、映画オリジナルの登場人物なのだろうか?無愛想で口の堅いおばあちゃんにも、やはり監督の人柄がさり気なく出ている気がする。